ふるさと納税というと、自治体に寄付したお金がそのまま地域振興や行政サービスに使われるイメージがあります。
しかし実際には、寄付を集めるために返礼品の調達費や送料、仲介サイトへの手数料など、さまざまな経費が発生します。
2025年度には、全国の自治体のふるさと納税にかかった経費率は47.9%となりました。
つまり、単純化すれば1万円の寄付を集めても、約4790円が経費として使われ、地域に残るのは約5210円という計算になります。
この経費をどこまで減らし、寄付金を地域のために使えるかが、これからのふるさと納税の大きなテーマになっています。
ふるさと納税の経費率とは何か
ふるさと納税の経費率とは、自治体が受け取った寄付額に対して、寄付を集めたり返礼品を提供したりするために使った経費がどの程度を占めているかを示す割合です。
たとえば、ある自治体が年間10億円の寄付を集め、そのために4億円の経費を使ったとします。
この場合の経費率は40%です。
経費には返礼品そのものの代金だけではなく、返礼品を寄付者へ届けるための送料、ふるさと納税仲介サイトに支払う手数料、寄付を管理するための費用なども含まれます。
そのため、返礼品の調達価格だけを抑えれば経費率が下がるわけではありません。
ふるさと納税を一つの事業として考え、寄付を受け付けてから返礼品を届けるまでのコスト全体を管理する必要があります。
なぜ寄付の半分近くが経費になるのか
ふるさと納税では、自治体同士が寄付を獲得する競争を続けてきました。
人気の返礼品を用意し、多くの仲介サイトに掲載し、全国の寄付者に返礼品を発送すれば、寄付額を増やしやすくなります。
一方で、それだけ経費も増えます。
2025年度の全国平均の経費率は47.9%でした。
仮に100億円の寄付が集まったとすると、約47億9000万円が経費となる計算です。
地域で実際に使える財源は約52億1000万円になります。
ふるさと納税の寄付額だけを見ると自治体の収入が大きく増えているように見えても、経費を差し引いた後にいくら残るかを見ると違った姿が見えてきます。
これから重要になるのは寄付額の大きさだけではなく、寄付によって最終的に地域へ残る金額です。
返礼品調達費以外にも経費がかかる
ふるさと納税の経費で大きな割合を占めるものの一つが返礼品調達費です。
返礼品については、2019年度から寄付額に対する調達費の割合を30%以下とする規制が導入されています。
しかし、自治体に発生する費用は返礼品だけではありません。
返礼品を全国へ送るためには送料がかかります。
仲介サイトを利用すればサイト運営会社への手数料も発生します。
さらに、寄付者からの問い合わせ対応、返礼品の発注、事業者との調整などにも費用がかかります。
こうした費用を積み上げると、全国平均の経費率が50%近くになるわけです。
特に今後注目されるのが仲介サイトへの手数料です。
記事によると、その負担は全国平均で11.5%となっています。
寄付額が100億円なら、単純計算で11億5000万円に相当します。
ここを圧縮できれば、返礼品そのものを大幅に削らなくても地域に残るお金を増やせる可能性があります。
経費率の上限は40%まで引き下げられる
ふるさと納税では、これまで経費率50%という基準が設けられてきました。
ところが今後、この上限がさらに厳しくなります。
総務省は2026年10月から経費率の上限を47.5%とし、その後も段階的に2.5%ずつ引き下げ、2029年には40%とする方針です。
最終的には1万円の寄付を集めるために使える経費が4000円までとなり、少なくとも6000円を地域に残すことが求められることになります。
しかも単なる努力目標ではありません。
上限を超えた自治体は、ふるさと納税制度の対象から除外される可能性があります。
自治体にとって経費率の引き下げは、避けて通れない経営課題になっていきます。
すでに40%以下の自治体もある
2025年度の段階で経費率40%以下を実現していた自治体は全国で177ありました。
全国の1割弱です。
つまり大多数の自治体にとって40%という水準は簡単なものではありませんが、すでに実現している自治体も存在します。
その代表例が広島県神石高原町です。
同町の経費率は13.7%で、約5億8000万円の寄付を集めました。
全国平均47.9%と比べると極めて低い水準です。
大きな理由となっているのが、返礼品を目的としない寄付です。
返礼品を送らなければ経費は大きく減る
神石高原町では、使い道を限定したクラウドファンディング型の寄付が全体の6割強を占めました。
犬の殺処分ゼロや、災害時に医師やレスキュー隊員が現地で活動するプロジェクトなど、具体的な使い道を示して寄付を募っています。
こうした寄付では、返礼品を必要としない寄付者が多いといいます。
これは経費率を考えるうえで非常に重要です。
通常のふるさと納税では、
寄付を集める
返礼品を調達する
返礼品を発送する
という流れになります。
ところが返礼品不要の寄付なら、返礼品調達費や送料を大幅に減らすことができます。
寄付者が商品ではなくプロジェクトそのものを支援するからです。
ふるさと納税が通販型の仕組みから寄付本来の仕組みに近づけば、結果として経費率も下がりやすくなります。
仲介サイトへの依存を減らす方法もある
経費率を下げるもう一つの方法が、民間の仲介サイトへの依存を減らすことです。
東京都世田谷区は独自の寄付サイトを設けています。
民間の仲介サイトは多くの利用者を抱えているため、自治体にとって寄付を集めやすいというメリットがあります。
その一方で、掲載や寄付受付などに手数料がかかります。
自治体が自ら寄付を受け付けることができれば、その一部を削減できます。
群馬県沼田市も独自の寄付受付サイトを立ち上げ、仲介サイトにかかる手数料負担を5から6%程度減らすことを目指しています。
ただし独自サイトを作れば自動的に寄付が集まるわけではありません。
寄付者にサイトを知ってもらうための情報発信や検索対策も必要になります。
ここでは単純なコスト削減だけではなく、自治体自身が寄付者と直接つながる力が問われます。
送料をなくす返礼品も増えていく
返礼品の配送費を減らす方法もあります。
代表的なのが宿泊券、食事券、電子クーポンなどです。
東京都港区では、返礼品を食事券や宿泊券など区内で利用する体験型商品に限定しています。
物品を全国へ配送する場合には送料がかかりますが、電子クーポンなら配送そのものが必要ありません。
さらに寄付者が実際に地域を訪れれば、飲食や宿泊、観光などの消費が発生します。
つまり、
寄付を受ける
返礼品を提供する
地域を訪れてもらう
地域で消費してもらう
という流れを作ることができます。
群馬県みなかみ町でも、町内の飲食店や宿泊施設、アウトドア施設などで使える感謝券が人気となっています。
返礼品の経費削減と地域消費の拡大を同時に狙える仕組みです。
これからは寄付額より地域に残る金額が重要になる
これまでのふるさと納税では、どの自治体が何億円の寄付を集めたのかが注目されがちでした。
しかし同じ10億円を集めても、経費率によって地域に残る金額は大きく違います。
経費率50%なら地域に残るのは約5億円です。
経費率40%なら約6億円です。
経費率20%なら約8億円です。
寄付額が同じでも自治体が使える財源には大きな差が生まれます。
その意味では、ふるさと納税の競争は寄付額を競う段階から、いかに効率よく寄付を集め、地域に財源を残すかを競う段階へ移りつつあります。
返礼品競争から共感を集める競争へ
経費率40%への引き下げによって、自治体が単純に返礼品の金額を削ればよいとは限りません。
魅力的な返礼品が減れば寄付そのものが減少する可能性があるからです。
そこで重要になるのが、返礼品以外の理由で寄付してもらう仕組みです。
地域の課題を解決するプロジェクトを提示する。
自治体や地域団体の活動を発信する。
寄付者と地域との継続的な関係を作る。
実際に地域を訪れてもらう。
こうした取り組みが強くなれば、高額な返礼品や広告費に頼らず寄付を集められる可能性があります。
ふるさと納税は、豪華な返礼品を競う制度から、地域への共感や応援を集める制度へ転換できるかという局面を迎えていると考えられます。
結論
ふるさと納税の経費率とは、寄付額のうち返礼品調達費、送料、仲介サイト手数料、人件費などに使われた割合です。
2025年度の全国平均は47.9%で、寄付金の半分近くが経費となっています。
総務省は経費率の上限を段階的に引き下げ、2029年には40%とする方針です。
自治体には返礼品を削るだけではなく、独自サイトによる仲介手数料の削減、電子クーポンによる配送費の削減、クラウドファンディング型による返礼品不要の寄付拡大などが求められます。
これからのふるさと納税で重要なのは、いくら寄付を集めたかだけではありません。
集めた寄付のうち、いくらを地域に残すことができたのかです。
経費率40%という新しい基準は、ふるさと納税を返礼品競争から地域を応援する本来の寄付制度へ近づける転換点になる可能性があります。
参考
日本経済新聞 2026年8月22日朝刊 ふるさと納税、経費を圧縮 40%以下は177自治体
日本経済新聞 2026年8月22日朝刊 ふるさと納税の経費圧縮 世田谷区、独自サイト開設