日本の中小企業金融では、信用保証協会の保証が付いた融資、いわゆる「保証付き融資」が広く利用されています。中小企業が金融機関から資金を借りる際、この保証付き融資が提案されることも少なくありません。
この背景には、日本の金融制度や信用保証制度の仕組みが関係しています。金融機関が保証付き融資を活用することには、金融機関側にとっての合理的な理由があります。
本稿では、日本の中小企業金融の構造という視点から、金融機関が保証付き融資を活用する理由について整理します。
保証付き融資の基本的な仕組み
保証付き融資とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が保証を提供する仕組みです。
企業が返済できなくなった場合には、信用保証協会が金融機関に対して代位弁済を行います。その後、信用保証協会は企業に対して求償権を行使し、返済を求めることになります。
この仕組みにより、金融機関は貸し倒れリスクの一部を信用保証協会と分担することができます。その結果、中小企業への融資が行いやすくなると考えられています。
保証付き融資は、中小企業の資金調達を支える重要な制度として日本の金融システムの中に組み込まれています。
金融機関にとってのリスク管理
金融機関が保証付き融資を活用する理由の一つは、リスク管理の観点です。
中小企業向け融資では、企業の経営状況や将来の事業環境など、不確実性が大きい場合があります。このため、金融機関は貸し倒れリスクを慎重に管理する必要があります。
信用保証協会の保証が付いている場合、万一企業が返済できなくなった場合でも、一定割合について代位弁済を受けることができます。この仕組みにより、金融機関のリスク負担は軽減されます。
このため、金融機関にとって保証付き融資はリスク管理の観点から利用しやすい融資形態となっています。
金融機関の経営と保証制度
金融機関の経営という観点から見ても、保証付き融資には一定のメリットがあります。
銀行は預金者から預かった資金を貸し出すことで利益を得る仕組みであり、貸し倒れリスクの管理は重要な経営課題です。
保証付き融資では、信用保証協会が一定の保証を提供するため、金融機関は比較的安定した形で融資を行うことができます。また、保証付き融資は制度として確立されているため、審査や手続きの面でも一定の枠組みが整備されています。
このような制度的な安定性も、金融機関が保証付き融資を活用する理由の一つといえます。
保証付き融資とプロパー融資
中小企業向け融資には、大きく分けて「保証付き融資」と「プロパー融資」があります。
プロパー融資とは、信用保証協会の保証を付けず、金融機関が自らの判断で行う融資です。金融機関は貸し倒れリスクをすべて自ら負担することになります。
一方、保証付き融資では信用保証協会が保証を提供するため、金融機関のリスクは一定程度軽減されます。
このため、企業の財務状況や事業内容によっては、金融機関が保証付き融資を提案することがあります。特に、創業間もない企業や財務基盤が十分でない企業の場合には、保証付き融資が利用されるケースが多く見られます。
制度依存への指摘
保証付き融資は中小企業の資金調達を支える制度として重要な役割を果たしてきました。しかし一方で、制度への依存が強くなることへの指摘もあります。
例えば、金融機関が保証付き融資に依存することで、企業の事業内容や将来性を十分に評価する取り組みが弱くなる可能性があるという指摘です。
また、企業側にとっても、保証制度を前提とした資金調達が続くことで、金融機関との関係が制度中心になりやすいという側面があります。
このような課題を踏まえ、近年では金融機関による事業性評価や伴走支援型金融の取り組みが重視されるようになっています。
変化する中小企業金融
近年の金融政策では、金融機関が企業の事業内容や成長可能性を評価する「事業性評価」が重視されています。
この考え方では、担保や保証だけに依存するのではなく、企業のビジネスモデルや将来の収益力を踏まえて融資判断を行うことが重要とされています。
そのため、保証付き融資とプロパー融資を適切に組み合わせながら、企業の成長を支援する金融のあり方が模索されています。
モニタリング強化型特別保証制度のように、企業の経営状況を継続的に把握する仕組みを組み込んだ制度も、このような流れの中で導入されています。
結論
保証付き融資は、日本の中小企業金融を支える重要な制度として広く利用されています。信用保証協会の保証により、金融機関は貸し倒れリスクを軽減しながら中小企業に融資を行うことができます。
金融機関が保証付き融資を活用する背景には、リスク管理や制度的な枠組みといった理由があります。
一方で、近年の金融政策では、保証制度だけに依存するのではなく、企業の事業内容や将来性を重視した金融のあり方が求められています。
今後の中小企業金融では、保証制度と事業性評価を組み合わせた金融のあり方が重要なテーマになっていくと考えられます。
参考
税のしるべ
信用保証制度に関する関連記事
中小企業庁
信用保証制度の概要
信用保証協会法(1953年)
