年末調整はなぜ企業が行うのか ― 日本の源泉徴収制度の特徴

税理士
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日本では、給与所得者の多くが確定申告を行っていません。
その理由は「年末調整」という制度があるためです。

会社は年末になると、従業員から各種申告書を提出してもらい、所得税額を計算し直して過不足を精算します。これによって、給与所得者の所得税の多くは会社で精算が完結します。

しかし、よく考えると少し不思議な制度です。
本来、税金の計算や申告は納税者自身が行うものです。それにもかかわらず、日本では企業がその役割を担っています。

なぜこのような制度になっているのでしょうか。本稿では、年末調整の背景にある制度設計を考えてみます。


年末調整の仕組み

給与所得者の所得税は、毎月の給与から源泉徴収されています。

しかし、この段階では年間の所得が確定していないため、税額は概算で計算されています。

そこで、年末に1年間の給与額が確定した段階で、所得税額を計算し直します。

その結果

税金を多く徴収していた場合
→ 還付

税金が不足している場合
→ 追加徴収

という形で精算を行います。

この手続が年末調整です。


確定申告との違い

本来、所得税は確定申告によって納税する仕組みです。

納税者が所得を計算し、税額を計算し、税務署へ申告して納税します。

しかし給与所得者の場合、この手続きをすべての人が行うと膨大な事務負担が生じます。

日本には数千万人の給与所得者がいます。
もし全員が確定申告を行うと、税務署の事務処理は大きな負担になります。

そこで、日本では企業が税額計算の一部を担う仕組みが採用されました。


企業による税務行政

年末調整は、企業が税務行政の一部を担っている制度とも言えます。

企業は

給与計算
源泉徴収
年末調整

という業務を通じて、従業員の所得税を計算し、納付しています。

これにより、税務署は数千万人の給与所得者の申告を直接処理する必要がなくなります。

つまり年末調整は、税務行政の効率化を目的とした制度でもあるのです。


世界の制度との比較

給与所得の源泉徴収は、多くの国で採用されています。

しかし、日本のように企業が年末調整を行う制度は必ずしも一般的ではありません。

例えばアメリカでは、給与から源泉徴収が行われますが、基本的にはすべての納税者が確定申告を行います。

一方、日本では年末調整によって税額が精算されるため、確定申告を行う必要がない人が多くなっています。

この点は、日本の税制の特徴の一つと言えるでしょう。


年末調整制度のメリット

年末調整にはいくつかのメリットがあります。

まず、給与所得者の負担が軽減されます。
確定申告を行う必要がないため、税務手続を意識する機会は少なくなります。

また、税務署の事務負担も軽減されます。
数千万件の申告処理を行う必要がなくなるからです。

さらに、税収の確保という点でも有効です。
企業が源泉徴収を行うため、税金の徴収漏れが少なくなります。


年末調整制度の課題

一方で、この制度には課題もあります。

年末調整では処理できない控除も多く存在します。
例えば医療費控除や寄附金控除などは、確定申告が必要になります。

また、複数の所得がある人の場合も確定申告が必要です。

そのため、給与所得者の中でも一定数は確定申告を行っています。


結論

年末調整は、日本の源泉徴収制度の重要な仕組みです。

企業が従業員の所得税を計算し精算することで、給与所得者の多くは確定申告を行う必要がなくなります。

この制度は、税務行政の効率化と税収確保を目的として設計されたものです。

企業が税務行政の一部を担うという点で、日本の税制の特徴をよく表している制度と言えるでしょう。


参考

税のしるべ 2026年3月2日
永田金司「源泉所得税の不思議 第9回」
国税庁 年末調整制度に関する資料

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