所得税基礎講座 必要経費を考える(第8回)取得前費用は必要経費になるのか ― 不動産取得との関係

税理士
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不動産所得の必要経費を考える際、実務上しばしば問題となるのが「取得前費用」の取扱いです。賃貸物件を取得する場合には、物件の調査や契約手続などのためにさまざまな費用が発生します。しかし、これらの費用がすべて必要経費として認められるわけではありません。

所得税では、不動産所得は不動産の貸付けによって生じる所得とされています。そのため、必要経費として認められる支出も、その貸付けによる所得と直接関係するものに限られると考えられています。

今回は、不動産の取得前に発生する費用が必要経費になるのかどうか、その考え方を整理します。


取得前費用とは何か

取得前費用とは、不動産を取得する前の段階で発生する支出をいいます。賃貸物件を購入する場合には、購入を決定するまでの過程でさまざまな調査や手続が行われます。

例えば、次のような費用が発生することがあります。

・物件の現地調査のための交通費
・専門家への相談料
・契約交渉のための出張費
・資料収集のための費用

これらの費用は不動産取得のために支出されたものですが、不動産の貸付けによる所得との関係が問題となります。


必要経費との関係

不動産所得の必要経費は、不動産の貸付けによる収入を得るために直接必要な費用とされています。したがって、不動産を取得する前の段階で発生した費用は、原則として貸付けによる所得と直接関係する支出とはいえないと考えられます。

例えば、物件の購入を検討するために現地を調査した場合、その交通費は不動産取得のための費用であり、不動産の貸付けによる所得を得るための費用とは直ちにはいえません。

このため、取得前費用は必要経費として認められない場合があります。


裁決事例の考え方

取得前費用の取扱いについては、裁決においても判断が示されています。賃貸物件の取得を検討するために現地調査を行い、その際の旅費交通費を必要経費として申告した事例では、その費用が業務の遂行上直接必要であった部分が証拠上明らかでないとして必要経費への算入が認められませんでした。

この事例からも、不動産所得では支出と貸付けとの直接的な関連性が重視されることが分かります。


取得価額に算入される費用

不動産を取得する場合には、購入代金だけでなくさまざまな費用が発生します。これらの費用のうち、不動産の取得と直接関係する費用は取得価額に算入されることになります。

例えば、次のような費用が該当します。

・仲介手数料
・登記費用
・不動産取得税
・契約書の印紙税

これらの費用は不動産取得のために直接必要な支出であるため、その年の必要経費として処理するのではなく、不動産の取得価額に含めて処理することになります。


実務上の注意点

不動産投資では、物件の調査や情報収集のためにさまざまな支出が発生します。しかし、その支出が必ずしも必要経費として認められるわけではありません。

特に、不動産取得の検討段階で発生する費用は、貸付けによる所得との関連性が弱いと判断される可能性があります。そのため、これらの費用を必要経費として計上する場合には、その支出が実際に貸付け業務に関連しているかどうかを慎重に検討する必要があります。


結論

不動産の取得前に発生する費用は、その内容によって必要経費になる場合とならない場合があります。一般に、不動産の貸付けによる所得と直接関係しない取得前費用は必要経費として認められないと考えられます。

一方で、不動産取得に直接関連する費用は取得価額に算入され、資産の取得費として処理されます。この区分を理解することは、不動産所得の所得計算を適正に行ううえで重要です。

次回は、必要経費を計上する際に重要となる帳簿や証拠資料の考え方について整理します。


参考

税のしるべ 2026年3月2日
所得税基礎講座 必要経費を考える(第21回)
所得税法
所得税法施行令
所得税基本通達

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