企業不祥事が発覚するきっかけはさまざまですが、近年、多くの事例で重要な役割を果たしているのが「内部通報」です。
企業の不正は組織の内部で行われることが多く、外部から発見することは容易ではありません。そのため、不正を最も早く認識できる可能性があるのは企業の内部にいる従業員です。
このため企業では、不正や法令違反を発見した従業員が安心して報告できる仕組みとして、内部通報制度が整備されています。
しかし、制度が存在するだけで十分とは言えません。実際に機能しているかどうかが重要になります。
本稿では、内部通報制度の役割と課題について整理します。
内部通報制度とは何か
内部通報制度とは、企業の従業員などが不正行為や法令違反を発見した場合に、それを組織内または外部の窓口に通報できる仕組みです。
一般的には
- 社内の通報窓口
- 弁護士など外部の通報窓口
などが設けられています。
この制度の目的は、不正を早期に発見し、組織として対応することです。
企業不祥事の多くは内部で長期間にわたって続く傾向がありますが、内部通報があれば早い段階で問題を把握できる可能性があります。
その意味で、内部通報制度は企業のガバナンスを支える重要な仕組みといえます。
内部通報の重要性
内部通報が重要視される理由は、企業不祥事の発見経路にあります。
多くの調査では、不正の発覚のきっかけとして最も多いのが内部通報であるとされています。
これは次の理由によるものです。
第一に、不正は組織内部で行われることが多いことです。
外部監査や規制当局の調査は重要ですが、すべての不正を発見できるわけではありません。現場で働く従業員の方が、不正の兆候に気付きやすい場合があります。
第二に、不正が組織内で隠される傾向があることです。
企業の中では、不正が発覚すると組織の評価や経営に影響を与える可能性があります。そのため、不正が表面化しにくい場合があります。
このような状況では、内部通報が重要な情報源となります。
内部通報制度が機能しない理由
制度が整備されていても、内部通報が十分に機能しない場合があります。
その背景にはいくつかの要因があります。
第一に、通報者への不利益の懸念です。
従業員が不正を通報した場合、人事評価や職場環境に影響が及ぶのではないかという不安が生じることがあります。このような懸念があると、通報が行われにくくなります。
第二に、組織文化の問題です。
企業の中で
- 上司に異論を言いにくい
- 問題を指摘すると組織の和を乱すと考えられる
といった文化がある場合、通報が抑制される可能性があります。
第三に、通報制度への信頼の問題です。
通報しても適切な対応が行われないと認識されている場合、従業員は制度を利用しなくなります。
公益通報者保護制度
日本では、内部通報を促進するための制度として「公益通報者保護法」が制定されています。
この法律は、企業の不正行為などを通報した人を保護することを目的としています。
具体的には
- 通報を理由とした解雇の禁止
- 不利益な取扱いの禁止
などが規定されています。
また、近年の法改正により、一定規模以上の企業には内部通報制度の整備が義務付けられています。
このような制度整備は、内部通報を行いやすい環境を整えることを目的としています。
内部通報制度を機能させるために
内部通報制度を実際に機能させるためには、制度の整備だけでは不十分です。
重要なのは、従業員が安心して通報できる環境を整えることです。
そのためには
- 通報者の匿名性の確保
- 通報者保護の徹底
- 通報内容への迅速な対応
などが必要になります。
さらに、企業の経営陣が内部通報制度を重視する姿勢を示すことも重要です。
経営陣がコンプライアンスを重視し、不正の指摘を歓迎する姿勢を示すことで、従業員が安心して通報できる環境が生まれます。
内部通報と企業ガバナンス
内部通報制度は、企業ガバナンスの重要な要素の一つです。
企業の不祥事は、外部からの監視だけで防ぐことはできません。組織内部の情報が適切に共有される仕組みが必要になります。
内部通報制度は、そのための重要な仕組みです。
従業員が不正の兆候を報告できる環境が整っていれば、不祥事を早期に発見し、問題が拡大する前に対応することが可能になります。
結論
内部通報制度は、企業不祥事を早期に発見するための重要な仕組みです。
企業の不正は内部で行われることが多く、外部から発見することは容易ではありません。そのため、従業員による内部通報が重要な役割を果たします。
しかし、制度が存在するだけでは十分ではありません。
通報者が不利益を受けるのではないかという不安や、組織文化の問題などがある場合、制度は十分に機能しません。
内部通報制度を有効に機能させるためには、制度の整備に加えて、企業文化やガバナンスの改善が必要になります。
企業不祥事を防ぐためには、組織内部の情報が適切に共有される仕組みを構築することが重要なのです。
参考
消費者庁
公益通報者保護法(公表資料)
日本経済新聞
企業不祥事関連記事(各年報道)
