所得税には、家族を扶養している納税者の税負担を軽減する制度として「扶養控除」が設けられています。
しかし扶養控除には年齢要件があり、16歳未満の子どもについては原則として扶養控除の対象外とされています。
この年齢要件をめぐり、特に「早生まれの子ども」が不利な扱いになるのではないかという問題が提起されました。
ここでは、早生まれの子に扶養控除を適用しないことが憲法違反に当たるかが争われた裁判を整理します。
扶養控除と年齢要件
所得税法では、扶養控除の対象となる扶養親族について、次のような年齢要件が定められています。
- 原則として16歳以上の扶養親族
これは、子どもに対する支援を児童手当などの社会保障制度に移行する政策の一環として導入されたものです。
しかし、扶養控除の年齢判定はその年の12月31日時点の年齢で判断されます。
このため、同じ学年の子どもであっても、生まれた時期によって扶養控除の適用に差が生じる可能性があります。
裁判の争点
本件では、納税者が次のような主張を行いました。
- 同じ学年の子どもであっても、早生まれの場合は扶養控除を受けられない可能性がある
- この差は合理性を欠き、憲法14条の平等原則に反する
つまり、年齢基準による区分が合理的かどうかが争点となりました。
東京地裁の判断
東京地裁は、この主張を認めませんでした。
裁判所は次のように判断しています。
まず、税制では一定の基準によって区分を設ける必要があるという点です。
年齢などの客観的基準を用いることは、制度運用の明確性や簡便性の観点から合理的とされています。
また、扶養控除制度は単独で存在するものではなく、児童手当など他の制度と組み合わせて設計されていると指摘されました。
そのため、扶養控除の年齢要件によって一定の差が生じるとしても、それだけで憲法違反とはいえないと判断されました。
さらに、立法政策の選択として一定の線引きを設けることは許容される範囲であるとされました。
以上の理由から、扶養控除の年齢要件は憲法に違反しないと結論づけられました。
結論
本件は、税制における「線引き」が憲法上どこまで許されるのかを示す裁判例です。
税制では、制度の簡便性や明確性を確保するために、年齢や所得などによる区分が設けられることが少なくありません。
その結果、個別のケースでは不公平に見える状況が生じることもあります。
しかし裁判所は、合理的な政策目的と制度運用の必要性がある限り、そのような区分は憲法上許容されると判断しました。
税制と憲法の関係を考えるうえで、立法裁量の範囲を示した事例として参考になる判例といえるでしょう。
参考
東京税理士界
2026年3月1日号
SERIES TAINS 解体新書
基礎的人的控除をめぐる憲法違反の争い
田代雅之
