外国人による土地取得は本当に増えているのか――統計と実態を読み解く

政策

近年、日本では外国人による土地取得が安全保障や不動産市場の観点から議論されることが増えています。自衛隊基地周辺の土地取得や都市部のマンション購入などが報道されることで、外国資本による土地取得が急増しているのではないかという印象を持つ人も少なくありません。

しかし、外国人による土地取得の実態については、必ずしも十分な統計が整備されているとは言えません。制度上、日本では土地取得の際に国籍を把握する仕組みが限定的であり、正確な全体像を把握することが難しいためです。

本稿では、日本における外国人の土地取得について、利用可能な統計や調査をもとに、その実態を整理します。


日本の土地制度と外国人取得の自由

まず前提として、日本では外国人による土地取得は原則として自由です。多くの国では外国人による土地購入に制限が設けられていますが、日本には包括的な規制は存在していません。

これは、日本の土地制度が国籍による差別を設けないことを基本としているためです。外国人であっても、日本人と同じ条件で土地を取得することができます。

このような制度は国際的にも比較的自由度が高い部類に入ります。そのため、日本の土地市場は海外投資家にとって参入しやすい市場であると指摘されることもあります。


外国人土地取得の統計はなぜ少ないのか

外国人による土地取得の実態を把握するうえで大きな問題となるのが、統計の不足です。

土地取引の登記制度では、所有者の住所や氏名は登録されますが、必ずしも国籍が明確に記録されるわけではありません。外国人が日本法人を通じて土地を取得する場合もあり、実質的な所有者を把握することが難しいケースもあります。

そのため、外国人による土地取得の全国的な規模を示す包括的な統計は存在していません。

政府や自治体は個別の調査を行っていますが、それらは限定的な地域や対象にとどまることが多く、日本全体の状況を正確に示すものではないとされています。


北海道や沖縄での土地取得問題

外国人による土地取得が注目されるきっかけとなったのは、北海道や沖縄などでの土地取得事例です。

北海道では、森林や水源地周辺の土地が外国資本に取得された事例が報じられました。水資源や国境に近い地域の土地取得が、安全保障や資源管理の観点から問題視されることになりました。

また、沖縄では米軍基地周辺の土地取得が議論になったことがあります。基地周辺の土地が外国資本に取得されることで、安全保障上のリスクが生じるのではないかという懸念が指摘されました。

こうした事例はメディアで広く報じられたため、外国人による土地取得が急増しているという印象が広がる一因となりました。


都市部のマンション投資

外国人による不動産取得が特に目立つのは都市部のマンション市場です。

東京や大阪などの大都市では、海外投資家によるマンション購入が一定程度存在するとされています。円安や日本の不動産価格の相対的な安定性が、海外投資家にとって魅力的な投資対象となっているためです。

また、日本の不動産市場は法制度が安定しており、所有権が強く保護されていることも海外投資家にとっての魅力とされています。

ただし、外国人投資が住宅価格の上昇の主因であるかどうかについては、必ずしも一致した見解があるわけではありません。住宅価格の上昇は、金融緩和、建設コストの上昇、都市人口の集中など複数の要因によって説明される場合が多いとされています。


データ不足が政策議論を難しくしている

外国人の土地取得をめぐる政策議論が難しい理由の一つは、データの不足です。

外国人による土地取得を規制すべきだという意見がある一方で、実際にどの程度の土地が外国資本に取得されているのかについては、明確な統計が存在しません。

そのため、問題の規模を正確に評価することが難しく、政策議論が印象や個別事例に依存しやすいという状況があります。

政府の有識者会議でも、土地取得の規制を検討するためには、まず実態把握を進める必要があるという指摘が出ています。


結論

外国人による土地取得は、日本の安全保障や不動産市場をめぐる重要な政策課題として議論されています。

しかし、日本では土地取得に関する統計が十分に整備されておらず、外国資本による土地取得の全体像は必ずしも明確ではありません。北海道や沖縄などでの個別事例や都市部のマンション投資が注目される一方で、全国的な規模や影響についてはデータ不足が続いています。

このため、土地取得規制の議論を進めるうえでは、まず実態を客観的に把握することが重要になります。安全保障や住宅政策を検討する際にも、正確なデータに基づく政策判断が求められると言えるでしょう。


参考

日本経済新聞「土地取得規制の可否を議論 外国人政策 有識者会議が初会合」2026年3月5日
国土交通省「外国資本による森林取得に関する調査」
内閣府「重要土地等調査法関連資料」

タイトルとURLをコピーしました