暗号資産は金融所得課税一体化に接続するのか――制度再編の論点整理

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ビットコインをはじめとする暗号資産は、価格変動の大きさばかりが注目されがちです。しかし、制度面での本質的な論点は「税制上どの資産類型に位置づけるのか」という問題にあります。

現在、日本では暗号資産の売却益は原則として雑所得に区分され、総合課税の対象とされています。一方、上場株式等の譲渡益や配当は申告分離課税であり、税率は約20%に統一されています。この扱いの差は、金融所得課税一体化の議論と正面から接続します。

本稿では、暗号資産を金融所得課税の枠組みに取り込むべきかという視点から、制度的な整理を試みます。


現行制度の整理――雑所得という位置づけ

暗号資産の売却益は、現行制度では原則として雑所得とされます。累進税率が適用されるため、所得水準が高い層では税率が50%超に達する場合もあります。

一方、株式や投資信託などの金融商品は申告分離課税で一律税率が適用され、損益通算や繰越控除の制度も整備されています。

この違いは単なる税率差ではなく、「政策的な位置づけの違い」を意味します。株式市場は成長資金供給の基盤として優遇的に設計されてきましたが、暗号資産はその枠外に置かれてきました。

しかし、暗号資産市場はETFの登場などを通じて制度圏に取り込まれつつあります。投資家層も個人中心から機関投資家へと広がりました。制度的扱いが実態と乖離し始めている可能性があります。


金融所得課税一体化とは何か

金融所得課税一体化とは、株式・債券・デリバティブなど、金融資産から生じる所得を横断的に通算し、同一税率で課税する考え方です。

背景には、金融商品の高度化や複雑化があります。資産ごとに異なる税制を適用すると、租税回避や裁定行動が生じやすくなります。

暗号資産を金融所得の枠内に位置づければ、株式等との損益通算が可能となり、税率も統一される可能性があります。これは投資家にとって予見可能性を高める効果を持ちます。

しかし同時に、制度的なハードルも存在します。暗号資産は価格変動が極めて大きく、国際的な規制整合性も未確立です。税制上の位置づけを変更するには、資産性や市場の成熟度に関する政策判断が必要となります。


一体化のメリットと課題

暗号資産を金融所得課税の枠に組み込む場合、主なメリットは次の通りです。

第一に、損益通算の拡大です。価格変動が大きい資産ほど、通算制度の有無は投資行動に大きな影響を与えます。

第二に、課税の中立性の向上です。同じリスク資産であるにもかかわらず、税制上の扱いが大きく異なることは、資本配分に歪みを生じさせます。

一方で課題もあります。

暗号資産は決済機能やステーキング報酬など、従来の金融商品にはない所得類型を含みます。どこまでを「金融所得」と整理するのか、制度設計は容易ではありません。

また、過度な優遇は投機的取引を助長するとの懸念も根強くあります。金融所得課税一体化は単なる税率引下げ議論ではなく、金融市場の設計思想そのものと関わります。


NISA政策との整合性

金融所得課税一体化が進む場合、次に問われるのは非課税制度との整合性です。

現行のNISAは、成長資金の供給を目的とする上場株式等を対象としています。暗号資産をその対象とするかどうかは、政策思想の問題です。

もし暗号資産を金融所得として制度内に位置づけるのであれば、長期投資対象としての評価も論理的には排除できません。しかし、価格変動性や投資保護の観点からは慎重論が強いと考えられます。

この点は、金融所得課税一体化の議論がどこまで拡張されるのかを測る試金石となります。


国際動向との比較

米国や欧州では、暗号資産の課税を資本利得課税として整理する国もあります。日本の総合課税方式は、投資家にとって相対的に負担が重いと指摘されることがあります。

国際的な資本移動が容易な市場環境下では、税制差は市場流動性に影響を与え得ます。金融所得課税一体化の議論は、国内税制の整合性だけでなく、国際競争力の観点とも接続します。


結論

暗号資産は、もはや制度の外縁にある存在ではありません。ETFの登場や機関投資家の参入により、金融市場の一部として組み込まれています。

金融所得課税一体化の議論が本格化するならば、暗号資産をどのように位置づけるのかは避けて通れない論点となります。

それは単なる税率問題ではなく、「何を金融資産とみなすのか」という制度哲学の問題です。

暗号資産を特別視し続けるのか、それとも一般金融資産として整理するのか。税制設計は、市場の将来像を映し出す鏡でもあります。


参考

日本経済新聞 朝刊 2026年2月27日
「ポジション〉米投資家、ビットコイン離れ」

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