借換え時に見落としがちな住宅ローン控除の税務論点

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住宅ローンの借換えは、金利負担の軽減や返済条件の見直しを目的として広く活用されています。近年はネット銀行の台頭や調書方式への移行もあり、借換えのハードルは下がりました。

しかし、住宅ローン控除の適用中に借換えを行う場合、税務上の取扱いを誤ると控除額が減少したり、最悪の場合は適用が受けられなくなる可能性もあります。本稿では、実務で見落としやすい論点を整理します。


借換えでも控除は原則継続できるが条件がある

住宅ローン控除は、一定の要件を満たす「住宅取得等資金の借入金」に対して適用されます。

借換えの場合も、次の要件を満たせば原則として控除は継続可能です。

1.当初の住宅取得資金の借入金を返済するための借入れであること
2.返済期間が10年以上であること
3.借換え後も居住要件等を満たしていること

重要なのは、「単なる資金の組み替え」であることが明確であるかどうかです。


借換え額が増えている場合の落とし穴

実務で多いのが、借換え時に諸費用や他の借入金をまとめて一本化するケースです。

例えば、

・リフォーム資金を上乗せ
・自動車ローンをまとめる
・諸費用分を含めて借入額を増やす

この場合、住宅ローン控除の対象となるのは、当初住宅取得資金部分に対応する借入残高のみです。

増額部分は控除対象外となるため、金融機関の残高証明書の金額をそのまま控除計算に用いることはできません。

借換え契約書や資金使途の内訳を確認し、対象部分を区分する必要があります。


借換えにより返済期間が短縮された場合

借換えにより返済期間を短縮するケースもあります。

しかし、返済期間が10年未満になると住宅ローン控除の要件を満たさなくなる可能性があります。

例えば、

・残存期間8年のローンに借換え
・短期集中返済型へ変更

この場合は原則として控除の適用は受けられません。

金利だけでなく、借換え後の契約期間が10年以上かどうかの確認が必須です。


調書方式対応金融機関への借換えと手続の変化

近年は証明書方式から調書方式へ移行が進んでいます。

借換え先が調書方式に対応している場合、

・住宅ローン控除適用申請書の提出
・控除証明書の交付方法の選択

が必要になります。

ただし、申請書を提出した年は自動連携されず、年末調整では残高証明書や返済計画表に基づいて計算する必要があります。

方式移行年は「自動化されない1年」が存在する点に注意が必要です。


借換えに伴う初年度申告の要否

当初の適用初年度は確定申告が必要ですが、借換えをした場合に再度確定申告が必要かどうかは状況により異なります。

通常の借換えであれば、継続適用のため改めて初年度申告をやり直す必要はありません。

ただし、

・借入先が変更された
・控除計算の基礎が変わる

場合は、添付書類の提出や税務署への確認が求められることがあります。

特に、借換えにより借入残高の区分が必要な場合は、確定申告で調整した方が安全なケースもあります。


ペアローン・連帯債務の再設計

共働き世帯で多いペアローンの場合、借換え時に債務割合を変更すると控除額にも影響します。

例えば、

・持分割合を変更
・どちらか単独名義へ変更

すると、控除限度額が変動する可能性があります。

借換えは単なる金利交渉ではなく、「控除設計の再構築」でもあるという視点が重要です。


将来売却を見据えた設計との関係

借換えにより返済期間を延ばすことは、将来売却時の住宅ローン残高にも影響します。

住宅ローン控除と3,000万円特別控除などの譲渡税制は別制度ですが、ライフプラン上は一体で設計すべき論点です。

金利だけで判断するのではなく、
・控除残存期間
・将来の住替え予定
を踏まえて判断する必要があります。


結論

住宅ローンの借換えは、金融商品選択の問題に見えますが、実際には税務設計の問題でもあります。

見落としやすいポイントは次の5点です。

1.増額部分は控除対象外
2.返済期間10年以上の要件確認
3.方式移行年は自動連携されない
4.債務割合変更は控除額に影響
5.将来の住替えとの整合性

借換えは「金利が下がるから得」という単純な話ではありません。

税制との整合を確認した上で設計することが、最終的な家計最適化につながります。


参考

・税のしるべ 2026年2月23日号「住宅ローン控除に係るマイナポ連携のFAQを更新」
・国税庁「住宅借入金等特別控除の適用要件」令和7年版
・国税庁「年末調整のしかた」令和7年分版

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