インド発ユニコーン再加速の背景――AI時代に問われる成長と収益の両立

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インドでスタートアップ企業の存在感が再び高まっています。企業価値が10億ドル以上の未上場企業、いわゆるユニコーンの誕生数が2026年に入り増勢に転じ、年間で4年ぶりに10社を超えるとの見方も出ています。

2021年に過去最高を記録した後、世界的な金融引き締めの影響を受けて停滞局面を経験しました。しかし足元では人工知能(AI)を中心とするデジタル分野を軸に、新たな成長フェーズに入りつつあります。

本稿では、インドのユニコーン再加速の背景を整理するとともに、その持続可能性と今後の課題について考察します。

世界第3位のユニコーン大国という現在地

インドはすでに世界有数のスタートアップ大国です。ユニコーン企業数は米国、中国に次ぐ世界第3位に位置しています。企業数では米国、中国との差はあるものの、日本と比較すると大きな開きがあります。

2020年前後から急増し、特に2021年は歴史的な資金流入を背景に新規ユニコーンが大量に誕生しました。しかしその後、米欧を中心とする金融引き締めや景気減速の影響により、資金調達環境が急速に悪化します。2023年には新規ユニコーン数が大幅に減少し、2024年、2025年も力強さを欠く状況が続きました。

この局面は、単なる一時的な停滞ではなく、スタートアップの評価基準が成長重視から収益性・持続可能性重視へと移行する転換点でもありました。

AIを軸にした新たな成長エンジン

2026年に入り、決済インフラや法人向けAIサービスを手がける企業がユニコーン入りするなど、再び明るい兆しが見えています。特に目立つのはAI関連分野の台頭です。

従来、インドのユニコーンは電子商取引やフィンテックが中心でした。デジタル決済や即時配達サービスなど、消費者向けの急成長モデルが多く見られました。

しかし現在は、AIを活用して既存産業を高度化する動きが広がっています。物流、製造、消費財、人材サービスといった伝統的産業にデジタル技術を組み込み、生産性や付加価値を高めるモデルが注目されています。

これは単なるITサービスの拡大ではなく、産業構造そのものの高度化を意味します。AIの社会実装が進む中で、インドがコンピューティングやデータ活用の拠点として存在感を高めようとする戦略がうかがえます。

連続起業家と人的資本の厚み

インドの強みとして見逃せないのが、人的資本の層の厚さです。IT人材の豊富さは以前から指摘されてきましたが、近年は連続起業家の存在感が高まっています。

過去にユニコーン企業の創業や経営に関わった人材が、新たに起業し、前職で培った資金調達力や経営ノウハウ、ネットワークを活用して次の成長企業を育てる循環が生まれています。

さらに、若年層の起業志向の高さも特徴です。大企業への就職を第一選択とせず、早期に起業へ挑戦する人材が一定数存在しています。失敗を過度に恐れない文化的背景も、リスクを取る経営判断を後押ししていると考えられます。

スタートアップ・エコシステムの成熟は、単に企業数の増加だけでなく、こうした人材の再循環構造によって支えられています。

政府支援と国内資金プールの拡充

インド政府はスタートアップ育成を国家戦略の一つとして掲げ、税制優遇、資金調達支援、産学連携の促進などを進めてきました。政策面での後押しが、エコシステムの基盤整備に寄与しています。

また、国内資金プールの拡大も重要な変化です。かつては海外マネーへの依存度が高いとされていましたが、国内投資家の存在感が徐々に増し、資金調達の選択肢が広がっています。

もっとも、投資家の姿勢は以前よりも慎重です。2021年前後のように大量の資金が流れ込む状況とは異なり、ビジネスモデルの実効性や採算性が厳しく問われるようになっています。

この変化は、短期的には資金調達のハードルを高めますが、長期的には企業の質を高める方向に働く可能性があります。

量から質への転換期

今後の焦点は、ユニコーンの数ではなく質です。

急成長を優先し赤字を拡大させるモデルは、資本市場の環境変化によって見直しを迫られました。現在は、早期段階から成長と利益の両立を図る経営が求められています。

単に評価額を競うのではなく、持続可能なビジネスモデルを構築できるかどうかが、本質的な企業価値を左右します。

AIを活用した既存産業の高度化、人材の循環、政府支援、国内資金の充実といった要素が重なり合い、インドのスタートアップは新たな局面に入っています。ただし、景気変動に左右されない強固な収益基盤の構築が不可欠です。

結論

インドのユニコーン増加は、一時的なブームの再来というよりも、エコシステムの成熟を背景とした再加速と見ることができます。

AIを軸とした産業高度化、連続起業家の台頭、人的資本の厚み、政策支援と国内資金の拡充。これらが組み合わさることで、インドは米中を追う存在として存在感を高めています。

一方で、投資家の目はかつてよりも厳しく、成長と収益の両立が強く求められています。量的拡大から質的成長への転換期にある今こそ、インドのスタートアップの真価が問われる局面といえるでしょう。

世界経済の構造変化の中で、インドがどのように持続的なイノベーション国家へ進化していくのか。今後の展開を注視する必要があります。

参考

日本経済新聞 朝刊 2026年2月25日「ユニコーン誕生 インド再び勢い」
CB Insights 公表データ(ユニコーン企業数関連統計)
Inc42 調査レポート(インド新規ユニコーン動向)

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