番外編:シニアの健康マネジメント 「70歳まで働く」ための身体づくりと生活習慣― 年齢に合わせた“無理のない健康戦略”とは ―

FP
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70歳まで働くことが一般的になりつつある中で、最も重要な基盤となるのが「健康」です。職場環境や企業の配慮が整っていても、本人の体がついてこなければ働き続けることはできません。
加齢による変化は誰にでも起こります。しかし、適切な健康マネジメントを行えば、“働ける時間”と“働ける状態”は確実に延ばすことができます。

この記事では、シニア世代が無理なく取り組める健康管理のポイントを、医学的知見と働く現場の実態を踏まえてわかりやすく整理します。

1.「若い頃と同じ体ではない」を前提にする

健康マネジメントの基本は、自分の身体の変化を冷静に受け止めることです。

加齢に伴う変化の典型は次のとおりです。

  • 筋力の低下(特に下半身)
  • 反応速度の低下
  • 聴力・視力の低下
  • 骨密度の低下
  • 自律神経の乱れ(暑さ・寒さに弱くなる)
  • 夜間頻尿や残尿感
  • 疲労回復に時間がかかる

これらは誰にでも起こる自然な変化で、まず“無理をしない”姿勢こそが、健康維持の基本となります。


2.1日10分でできる「シニアの体力づくり」

筋力は何歳からでも鍛えることができます。特に働く上で大切なのは「下半身の筋力」です。

●(1)つま先立ち10回×2セット

ふくらはぎの筋力がつき、歩行が安定します。

●(2)椅子からのゆっくり立ち上がり10回

太もも・臀部が鍛えられ、転倒予防に効果的。

●(3)片足立ち30秒×左右

バランス感覚が向上し、転倒リスクが減ります。
※危険を避けるため、壁や机に手を添えながら行うと安全です。

●(4)軽いウォーキング

1日15〜20分の軽めの散歩は、認知機能や気分の安定にも役立ちます。


3.排尿トラブルは「生活習慣」で改善できる

シニア世代で最も働きやすさを左右するのが、頻尿や残尿感などの排尿トラブルです。

●(1)水分を極端に控えない

脱水は膀胱を刺激し、逆にトイレの回数を増やします。

●(2)カフェインは控えめに

コーヒー、紅茶、緑茶は利尿作用が強めです。

●(3)骨盤底筋トレーニング

5秒締める → 5秒ゆるめる ×10回。
男女ともに効果が期待できます。

●(4)夕方以降の水分は調整

完全に控えるのではなく、量を少し減らす程度で十分です。


4.睡眠の質は“働き続ける力”を決める

シニアの睡眠は浅くなりがちですが、工夫で改善します。

●(1)寝る90分前にはスマホ・タブレットを操作しない

ブルーライトは脳を覚醒させます。

●(2)就寝前の入浴

少し熱めの湯に短時間入ると、深部体温が下がりやすくなり眠りに入りやすくなります。

●(3)昼寝は20分以内

長時間の昼寝は夜間の睡眠に悪影響。

●(4)寝室環境を整える

  • 室温18〜22℃
  • 加湿
  • 遮光カーテン
    睡眠の質は翌日の集中力に直結します。

5.食事は「量より質」

シニア期の食事は大きく3点を意識するだけで十分です。

●(1)たんぱく質を意識

肉・魚・卵・大豆製品を1食に必ず1つ。

●(2)食物繊維を増やす

野菜・海藻・きのこ類は腸内環境を整えます。

●(3)塩分を控える

高血圧は心筋梗塞や脳梗塞の最大リスクです。


6.「聞こえにくさ・見えにくさ」は必ず対策する

聴力・視力の低下は働きやすさを大きく左右します。

●(1)聴力

  • 早めの耳鼻科受診
  • 補聴器の検討
  • 音声文字化アプリの活用

●(2)視力

  • 適切なメガネの調整
  • 明るい照明環境
  • 小さい文字を避ける資料づくり

視覚・聴覚の補助は、事故防止にも直結します。


7.持病を“コントロールする技術”を身につける

シニアに多い持病は、適切な管理で悪化を防げます。

●高血圧

塩分管理・適度な有酸素運動。

●糖尿病

ゆるやかな血糖コントロール、食べ過ぎ防止。

●心臓・血管疾患

禁煙・体重管理・ストレスコントロール。

●腰痛・関節痛

無理な姿勢を避け、軽い筋トレとストレッチを継続。

“完治”よりも悪化させない管理がポイントです。


8.精神的な健康 ― 孤立を防ぎ、役割を持つ

精神面の安定は健康維持に欠かせません。

●(1)働くことは「最大の予防策」

働くシニアは、認知症やうつ病のリスクが低いという研究が増えています。

●(2)つながりを持つ

  • 同僚
  • 地域コミュニティ
  • 家族
  • 趣味の仲間

社会とのつながりはストレスを軽減し、健康寿命を延ばします。

●(3)「相談できる人」を1人確保する

医療・家族・友人、誰でもかまいません。
心配事を一人で抱え込まない仕組みづくりが重要です。


結論

シニアの健康マネジメントは、「がんばる健康法」ではなく、
**無理をせず、年齢に合わせて体と生活を整える“継続可能な健康戦略”**です。

  • 軽い運動を続ける
  • 睡眠の質を高める
  • 食事を整える
  • 排尿・視力・聴力をケアする
  • メンタルを保つ

これらの積み重ねが、「70歳まで働ける身体」をつくります。

健康を守ることは、働くための手段であると同時に、
これからの人生を豊かにする最大の投資でもあります。


出典

  • 日本経済新聞「〈ライフスタイル シニア〉働く『アラ古希』悩みは…」
  • 厚生労働省「健康長寿・労働安全衛生関連資料」
  • 日本排尿機能学会・日本老年医学会資料
  • 内閣府「健康寿命施策」等

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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