企業が納める税金というと、多くの人は法人税を思い浮かべるでしょう。しかし、企業が負担する税金は法人税だけではありません。
都道府県や市町村へ納める法人住民税や法人事業税などの「地方法人課税」も、企業経営に大きく関わる税金です。
令和8年度税制改正では、この地方法人課税のあり方について、大きな見直しが検討されることになりました。
その背景には、東京都への税収集中という長年の課題があります。
今回は、地方法人課税が今後どのように変わろうとしているのかを解説します。
地方法人課税とは何か
企業は国へ法人税を納めるだけではありません。
地方自治体にも、
- 法人住民税
- 法人事業税
- 固定資産税
など、さまざまな税金を納めています。
これらは地方自治体にとって重要な財源であり、教育や福祉、道路整備、防災などの行政サービスを支える役割を果たしています。
つまり、地方法人課税は地域社会を維持するために欠かせない税制なのです。
税収が東京へ集中している理由
近年、大企業の本社機能は東京へ集中する傾向が続いています。
企業活動の中心が東京に置かれれば、法人関係税も東京都へ集まりやすくなります。
さらに東京都では地価の上昇も続いており、固定資産税などの税収も増加しています。
結果として、東京都と地方自治体との財政力の差は年々広がっています。
地方自治体では人口減少も進み、税収の確保が難しくなる一方で、高齢化に伴う行政需要は増加しています。
今回の税制改正で示された方向性
令和8年度税制改正では、この偏在を是正するため、地方法人課税の仕組みを見直す方向性が示されました。
具体的には、
- 法人事業税資本割の取扱い
- 特別法人事業税・譲与税の対象範囲
- 所得割・収入割の配分方法
などについて検討し、令和9年度税制改正で結論を得る方針が示されています。
つまり、すぐに制度が変わるわけではありませんが、今後の法人課税制度の大きな方向性が示されたといえます。
企業への影響はあるのか
制度が見直されれば、企業によっては税負担の構造が変わる可能性があります。
ただし、今回の議論の目的は企業全体の増税ではありません。
重要なのは、税収の地域間格差をできるだけ小さくし、全国で安定した行政サービスを維持することです。
そのため、多くの企業にとっては税率そのものよりも、税収の配分方法の見直しが中心になると考えられます。
企業としては制度の方向性を理解し、今後の税制改正に備えておくことが大切です。
地方創生との関係
地方法人課税の見直しは、地方創生とも深く関係しています。
地方では、
- 若者の流出
- 人手不足
- 地域経済の縮小
など、多くの課題を抱えています。
地方自治体が十分な行政サービスを提供できなければ、さらに人口流出が進む可能性があります。
そのため、税制によって一定の財源を確保し、地方の活力を維持することは、日本全体の持続的な発展にもつながります。
税理士が理解しておきたい視点
地方法人課税は、決算や申告だけの問題ではありません。
企業の本社所在地や事業所の配置、設備投資など、経営戦略とも密接に関係しています。
税理士は、
- 地方法人課税の仕組み
- 地域間の税収格差
- 地方創生との関係
- 今後の制度改正の方向性
まで理解しておくことで、経営者により幅広い助言ができるようになります。
税制は数字だけを見るものではなく、その背景にある政策目的まで理解することが重要です。
結論
令和8年度税制改正では、東京都への税収集中を是正し、地方自治体が安定した行政サービスを提供できるよう、地方法人課税の見直しが打ち出されました。
今後は令和9年度税制改正に向けて具体的な制度設計が進められる予定です。
企業にとっては税負担だけでなく、日本全体の地域経済をどのように支えていくのかという視点も重要になります。地方法人課税の改革は、地方創生と持続可能な社会を実現するための重要な一歩といえるでしょう。
参考
令和8年度税制改正の実務ポイント 第4 消費税・自動車税・防衛税・地方税・納税環境整備(税理士・公認会計士 長谷川敏也 講義資料)