環境に優しい自動車を普及させるため、日本では長年にわたり「エコカー減税」が実施されてきました。
燃費性能の高い車や電動車を購入すると、自動車重量税などが軽減されるため、新車購入を後押しする制度として多くの人に利用されてきました。
しかし、自動車技術が急速に進歩する中で、この制度も見直しの時期を迎えています。
令和8年度税制改正では、エコカー減税を延長するとともに、減税対象となる基準が引き上げられることになりました。
今回は、この改正の背景と今後の方向性について解説します。
エコカー減税とはどのような制度か
エコカー減税は、環境性能に優れた自動車の普及を促進するために導入された制度です。
燃費性能が高い自動車ほど、自動車重量税の負担が軽くなる仕組みになっています。
制度が始まった当初は、高性能なハイブリッド車などが対象となり、多くの消費者が購入の後押しを受けました。
その後、技術の進歩に合わせて対象車種も拡大し、現在ではEVやPHEVなども重要な対象となっています。
今回の改正で何が変わるのか
令和8年度税制改正では、エコカー減税は2年間延長されることになりました。
一方で、減税を受けるための燃費基準は引き上げられます。
つまり、これまで減税対象だった車でも、今後は対象外になる可能性があります。
逆に、より高い環境性能を持つ自動車が優遇されることになります。
制度を単純に延長するのではなく、技術の進歩に合わせて基準を見直すことが今回の改正の特徴です。
なぜ基準を引き上げるのか
自動車の燃費性能は年々向上しています。
以前であれば「高性能」と評価された車でも、現在では標準的な性能になっているケースが少なくありません。
もし基準を変えなければ、多くの車が減税対象となり、本来の政策目的が薄れてしまいます。
そこで政府は、2035年までに乗用車の新車販売を電動車100%とする目標も踏まえ、より環境性能の高い車を優遇する制度へ見直すことにしました。
税制によって技術革新を後押ししようという考え方です。
購入する側はどう考えればよいのか
これから新車を購入する人は、「減税があるから」という理由だけで車を選ぶ時代ではなくなりつつあります。
重要なのは、
- 購入価格
- 減税額
- 燃料費
- 維持費
- 将来の税負担
- リセールバリュー
などを総合的に考えることです。
減税制度は将来変更される可能性がありますが、自動車は長期間使用する資産です。
短期的な優遇措置だけで判断するのではなく、長期的な視点で比較することが大切です。
税制は技術革新とともに変化する
エコカー減税は、環境政策と産業政策を結び付ける代表的な制度です。
新しい技術が普及すれば、その技術はやがて「特別なもの」ではなくなります。
すると、税制も次の技術を後押しする方向へ変化します。
この繰り返しによって、自動車産業全体の技術革新が促進されてきました。
税制は単なる税金の制度ではなく、社会の未来をつくる政策の一つでもあるのです。
税理士にも求められる視点
企業では営業車や社用車の更新時期に合わせて、新車購入の相談を受けることがあります。
その際には、
- エコカー減税の適用条件
- 法人の減価償却
- 補助金制度
- 維持コスト
まで含めて説明できることが望まれます。
単に税金が安くなるかどうかではなく、企業全体の投資判断としてアドバイスできることが、これからの税理士には求められるでしょう。
結論
令和8年度税制改正では、エコカー減税は2年間延長される一方で、減税対象となる燃費基準は引き上げられることになりました。
これは制度を縮小するためではなく、自動車技術の進歩に合わせて、より環境性能の高い車を普及させるための見直しです。
今後も自動車技術は進化を続けます。それに伴って税制も変化していくでしょう。自動車を購入する際には、一時的な減税だけでなく、長期的な維持費や将来の制度変更も視野に入れた判断が重要になります。
参考
令和8年度税制改正の実務ポイント 第4 消費税・自動車税・防衛税・地方税・納税環境整備(税理士・公認会計士 長谷川敏也 講義資料)