人材不足が深刻化する中、中小企業にとって「賃上げ」は避けて通れない経営課題となっています。しかし、売上や利益が十分に伸びていない状況では、賃金を引き上げることに大きな不安を感じる経営者も少なくありません。
こうした状況を踏まえ、国は賃上げを後押しするために賃上げ促進税制を設けています。また、制度をさらに活用しやすくするための見直しも継続的に議論されています。
今回は、賃上げ促進税制を単なる節税制度ではなく、会社の成長につなげる経営戦略として考えてみます。
賃上げ促進税制の目的を理解する
賃上げ促進税制は、一定の条件を満たして従業員の給与を引き上げた企業に対し、法人税などの税負担を軽減する仕組みです。
目的は、企業の税負担を軽くすることだけではありません。
賃上げを通じて、
・人材を確保する
・従業員の定着率を高める
・消費を活性化する
・経済全体を成長させる
という好循環を生み出すことが期待されています。
つまり、この制度は人への投資を支援する政策といえます。
税制だけで賃上げは続けられない
税額控除が受けられることは企業にとって大きなメリットですが、それだけで継続的な賃上げが実現できるわけではありません。
毎年の給与は将来にわたって支払い続ける固定費となります。
そのため、
・利益率を高める
・付加価値を向上させる
・業務効率を改善する
・価格転嫁を進める
など、賃上げを支える経営基盤を同時に強化することが不可欠です。
制度は賃上げの「きっかけ」にはなりますが、「原資」を生み出すのは企業自身の経営努力です。
人への投資は企業価値を高める
賃上げはコストと考えられがちですが、見方を変えれば将来への投資でもあります。
優秀な人材が定着し、従業員の意欲が高まれば、
・生産性の向上
・サービス品質の向上
・顧客満足度の向上
・新しい提案や改善活動の活性化
といった成果につながる可能性があります。
人材不足が続く時代だからこそ、給与だけでなく、働きやすい環境づくりや人材育成も含めた「人への投資」が、企業価値を高める重要な経営戦略になります。
税制改正の動向も確認しておきたい
現在も賃上げ促進税制については、より利用しやすい制度へ見直すべきという議論が続いています。
特に中小企業については、税額控除の適用範囲や控除限度額などが今後変更される可能性もあります。
制度内容は毎年見直されることがあるため、
・税制改正大綱
・税制改正法
・関連する情報
を定期的に確認し、自社で活用できる制度を把握しておくことが重要です。
知らなかったことで利用できる支援を逃してしまうのは、経営上の大きな損失になる場合があります。
賃上げを経営改革の契機にする
賃上げ促進税制を最大限に生かす企業は、税額控除だけを目的としていません。
賃上げを契機として、
・DXによる業務改善
・設備投資による生産性向上
・評価制度の見直し
・教育研修の充実
などを同時に進めています。
つまり、「賃上げをする会社」ではなく、「賃上げが続けられる会社」を目指しているのです。
制度を利用すること自体が目的ではなく、それをきっかけに企業体質を強くすることが、本当の意味での制度活用といえるでしょう。
結論
賃上げ促進税制は、税負担を軽減する制度であると同時に、人への投資を後押しする経営支援策でもあります。しかし、税制だけに頼って賃上げを続けることはできません。
利益を生み出す仕組みを強化し、生産性を高め、人材が定着する企業づくりを進めることで、賃上げは持続可能な経営戦略へと変わります。制度を上手に活用しながら、従業員と企業がともに成長できる環境を整えることが、これからの中小企業経営にはますます重要になるでしょう。
参考
税のしるべ
「日税連が9年度税制改正の建議書、重要項目に取引相場のない株式の評価の見直しなど」
2026年7月6日