税務調査はなぜ法律で細かく定められているのか 国税通則法入門編

税理士
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税務調査という言葉を聞くと、多くの経営者や個人事業主は「税務署が会社へ来る」「帳簿を調べられる」という場面を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、税務調査は税務職員の裁量だけで自由に行われるものではありません。税務調査には国税通則法という法律があり、調査の進め方や納税者の権利、税務職員の権限などが細かく定められています。

実は現在の税務調査制度は、平成23年度税制改正を契機として大きく見直されました。税務調査手続の明確化、事前通知制度、更正の請求期間の延長、処分理由の記載など、納税者保護を意識した制度へと進化しています。税理士だけでなく経営者も国税通則法の基本を理解することで、税務調査への不安は大きく減らすことができます。

国税通則法は税務行政の基本法

国税通則法は、所得税法や法人税法、消費税法など個別税法の共通ルールを定めた法律です。

税額計算を定める法律ではなく、

・申告のルール

・税務調査のルール

・更正や決定のルール

・加算税や延滞税

・不服申立て

など、税務行政全体の基本ルールを定めています。

会社経営で例えるなら、法人税法や消費税法が「競技ルール」であるのに対し、国税通則法は「試合全体の運営ルール」に当たる存在です。

税理士が実務で最も頻繁に確認する法律の一つであり、税務調査でも必ず登場します。

平成23年改正で税務調査は大きく変わった

現在の税務調査制度の土台となったのが平成23年度税制改正です。

この改正では、

・税務調査手続の法制化

・原則として事前通知制度の導入

・調査終了時の手続の整備

・更正の請求期間を1年から5年へ延長

・課税処分への理由附記

などが制度化されました。

それまで税務調査は運用によって行われる部分も多くありましたが、法律に明文化されたことで、税務署・納税者双方が共通のルールの下で調査を行うことになりました。

つまり、税務調査は「税務署が好きなように行う調査」ではなく、「法律で厳格に定められた行政手続」へと発展したのです。

税務調査は納税者を守るための制度でもある

税務調査というと税務署だけが有利な制度と思われがちですが、実際には納税者を守る役割もあります。

例えば、

事前通知が原則となったことで、突然の調査が大幅に減りました。

調査終了時には、その後どのような手続になるのか説明を受けることができます。

さらに、更正処分には理由が記載されるため、納税者は何が問題だったのかを理解した上で、不服申立てを検討できます。

このように国税通則法は、課税の公平だけでなく、納税者の権利保護も重視する法律へと変化しています。

税理士は法律を知ることで顧客を守れる

税務調査の現場では、「何となく昔からこうだった」という経験則だけでは対応できない場面が増えています。

税理士が国税通則法を正しく理解していれば、

・調査開始前

・調査中

・調査終了後

それぞれの段階で納税者に適切な助言ができます。

また、税務署との認識違いを法律に基づいて整理できるため、不必要なトラブルを防ぐことにもつながります。

経験だけでなく、法律を根拠に説明できることが、これからの税理士にはますます求められるでしょう。

経営者も基本ルールを知る時代へ

税務調査を税理士任せにする時代は終わりつつあります。

近年は電子帳簿保存法やインボイス制度など、経営者自身が制度を理解していなければ判断できない場面が増えています。

国税通則法も同様です。

税務調査でどのような権限があり、自社にはどのような権利があるのかを知っているだけでも、必要以上に不安になることはありません。

法律を知ることは、税務署と対立するためではなく、正しい手続の中で適切な対応を行うためなのです。

結論

国税通則法は、税務調査をはじめとする税務行政全体の基本ルールを定めた法律です。平成23年度税制改正によって税務調査手続は大きく見直され、税務署の権限だけでなく納税者の権利保護も制度として明文化されました。

税理士にとっては実務の根幹となる法律であり、経営者にとっても税務調査を正しく理解するための重要な知識です。これから本シリーズでは、質問検査権、事前通知、反面調査、不服申立てなど、国税通則法の各制度について実務の視点から分かりやすく解説していきます。

参考

近畿税理士会「税法実務講座 税理士目線の国税通則法 No.3」講義資料

平成23年度税制改正大綱(納税環境整備関係)

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