消費税の実務では、「輸入したら必ず消費税がかかる」と考えている方が少なくありません。
確かに、多くの輸入取引では輸入消費税が課税されます。
しかし実は、国内取引に非課税取引があるように、輸入取引にも非課税となる貨物があります。
税務調査で頻繁に問題になる論点ではありませんが、制度の仕組みを理解する上では非常に重要です。
また、なぜその貨物だけが非課税になるのかを理解すると、消費税制度そのものへの理解も深まります。
今回は輸入取引における非課税制度について解説します。
輸入取引でも非課税制度がある
輸入取引では、保税地域から引き取る外国貨物に対して消費税が課税されます。
しかし、法律では一定の貨物について消費税を課さないこととしています。
つまり、外国貨物であってもすべてが課税対象になるわけではありません。
国内取引で非課税とされる性格のものについては、輸入段階でも同様に非課税としているのです。
これも税制上の公平性を確保するための仕組みといえます。
非課税となる主な貨物
輸入取引で非課税となる主な貨物には次のようなものがあります。
・有価証券
・郵便切手類
・印紙
・証紙
・商品券などの物品切手
・身体障害者用物品
・教科用図書
これらは国内取引でも原則として非課税とされているものです。
そのため、輸入段階で課税してしまうと国内取引との整合性が取れなくなります。
輸入時も同様に非課税として扱われているのです。
なぜ有価証券は非課税なのか
株式や社債などの有価証券は、通常の商品の売買とは性格が異なります。
有価証券は財産権そのものを表すものです。
そのため消費という概念になじみにくく、消費税の対象から除外されています。
輸入取引でも同じ考え方です。
海外から有価証券を取得した場合であっても、原則として輸入消費税は課税されません。
これは国内取引との整合性を図るためです。
教科用図書が非課税となる理由
教科用図書も輸入非課税の対象です。
教育の公共性に配慮した制度といえます。
教育機会の確保は社会全体の利益につながります。
そのため学校教育で使用される教科用図書については、国内取引だけでなく輸入取引でも消費税を課さない仕組みが設けられています。
税制が単なる財源確保だけでなく、社会政策の役割も担っていることが分かる例です。
身体障害者用物品も非課税
身体障害者用物品についても輸入消費税は非課税です。
車椅子や義肢など、日常生活に必要な物品が対象になります。
これらは生活支援という公共的な性格を持っています。
税負担によって利用が妨げられることを防ぐため、輸入時も非課税とされているのです。
社会的弱者への配慮という観点が反映された制度といえます。
金貨は必ず非課税ではない
ここで注意したいのが金貨です。
「通貨なのだから非課税だろう」と考えがちですが、必ずしもそうではありません。
例えば外国の記念金貨を販売目的で輸入する場合です。
この場合は支払手段ではなく商品として取り扱われます。
そのため輸入時に消費税が課税されます。
つまり名称だけでは判断できません。
その貨物の実質的な性格や利用目的によって課税関係が決まるのです。
販売目的か使用目的かで結論が変わる
税務実務では形式だけで判断できないケースが少なくありません。
同じ貨物であっても、
・販売用なのか
・利用目的なのか
・投資目的なのか
によって課税関係が変わる場合があります。
金貨の事例はその典型例です。
税法は名称ではなく実態を重視することがよく分かります。
輸入取引でも同じ考え方が貫かれているのです。
非課税だからといって無関係ではない
「非課税なら関係ない」と考えるのは危険です。
非課税か課税かの判定を誤れば、輸入消費税の申告に誤りが生じます。
また、後の仕入税額控除や販売時の課税関係にも影響する可能性があります。
税務調査では輸入取引の内容や貨物の性格が確認されることがあります。
そのため非課税貨物の範囲を理解しておくことは重要です。
結論
輸入取引であっても、すべての外国貨物に消費税が課税されるわけではありません。
有価証券、郵便切手類、印紙、身体障害者用物品、教科用図書などは輸入段階でも非課税となります。
これは国内取引との整合性や社会政策上の配慮によるものです。
ただし、金貨のように利用目的によって課税関係が変わるものもあります。
輸入取引では「外国から来た貨物だから課税される」と単純に考えるのではなく、その貨物の性格や目的を確認することが重要です。
次回は、「輸入消費税はどのように計算されるのか CIF価格の基本」をテーマに解説します。
参考
税法実務講座(消費税)「国際取引に係る消費税の取扱い④ 輸入取引」
近畿税理士会