投資の目的は何でしょうか。
多くの人は、
お金を増やすため
老後資金を準備するため
将来の不安に備えるため
と答えるかもしれません。
もちろんそれらは間違いではありません。
しかし人生100年時代を迎えた今、投資を続ける本当の理由は少し変わりつつあります。
それは「お金を増やすこと」ではなく、「資産寿命を延ばすこと」です。
平均寿命が延びる中で、多くの人が直面する課題は資産不足ではなく、資産が人生より先に尽きてしまうことです。
今回は人生100年時代における投資の役割を、資産寿命という視点から考えてみたいと思います。
人生は長くなったが資産は増えていない
日本人の平均寿命は大きく伸びました。
男性も女性も90歳前後まで生きることが珍しくない時代になっています。
さらに医療の進歩によって、100歳を超えて生活する人も増えています。
一方で、退職年齢の延び方は寿命ほど急ではありません。
60歳で退職した場合、
90歳まで生きれば30年
100歳まで生きれば40年
の生活費が必要になります。
かつての老後は10年から15年程度でした。
しかし現在は30年以上続く可能性があります。
人生は長くなりましたが、それに比例して金融資産が増えたわけではありません。
ここに人生100年時代の難しさがあります。
預金だけでは資産寿命が短くなる
かつては預金中心でも問題ありませんでした。
銀行金利が高く、物価上昇も比較的安定していたからです。
しかし現在は状況が異なります。
預金金利は上昇傾向にあるとはいえ、長期的には物価上昇率を大きく上回る水準ではありません。
仮に年間2%のインフレが続けば、現在の100万円の価値は約35年後には半分程度になります。
つまり預金だけではお金の額面は維持できても、購買力は維持できないのです。
資産寿命を考える場合、残高だけでなく価値を守ることも重要になります。
投資は資産を増やすためだけではない
投資というと、
大きな利益を狙う
資産を何倍にも増やす
というイメージを持つ人もいます。
しかし人生後半戦の投資は少し意味が違います。
目的は資産寿命の延長です。
例えば3,000万円の資産があるとします。
これをすべて預金で保有する場合と、一部を株式や投資信託で運用する場合では、30年後の結果が大きく変わる可能性があります。
投資とは資産を守るための手段でもあります。
人生100年時代においては、
増やす投資
よりも
減らさない投資
の重要性が高まっているのです。
取り崩しながら運用する時代
現役時代の投資は積み立てが中心でした。
しかし退職後は違います。
資産を取り崩しながら運用する時代になります。
ここで多くの人が誤解するのは、
「取り崩しを始めたら投資は終わり」
と思ってしまうことです。
実際にはそうではありません。
退職後も運用を継続することで、資産寿命を延ばせる可能性があります。
米国の研究では、資産をすべて現金化するよりも、一定割合を投資に残した方が長期間の生活資金を維持しやすいことが示されています。
老後は運用の終着点ではなく、新しい運用ステージの始まりとも言えるのです。
最大のリスクは長生きリスク
若い頃の投資では市場リスクが注目されます。
株価下落
暴落
景気後退
などです。
しかし人生後半戦では別のリスクが大きくなります。
長生きリスクです。
長生き自体は喜ばしいことです。
しかし資産面では、
想定以上に長く生活費が必要になる
という課題を生みます。
85歳までの計画が95歳まで必要になる。
90歳までの計画が100歳まで必要になる。
こうした可能性を考えると、資産を働かせ続ける必要があります。
人生100年時代の投資は、長生きリスクへの備えでもあるのです。
投資は安心を買う行為でもある
投資というと利益を追求する行為に見えます。
しかし人生後半戦では少し意味が変わります。
資産寿命を延ばすことは、
老後資金への不安を減らす
医療費への備えを持つ
介護費用に対応する
ことにつながります。
つまり投資は安心を買う行為でもあります。
もちろん価格変動はあります。
短期的には損失もあります。
それでも長期的な視点で見れば、資産を働かせることが安心につながる可能性があります。
人生100年時代の投資観
かつて投資は一部の人のものでした。
しかし現在はNISAやiDeCoの普及によって、多くの人が投資と関わる時代になりました。
その背景には、
長寿化
低金利
インフレ
という大きな社会変化があります。
投資をするかしないかではなく、
どのように投資と付き合うか
が問われる時代になったのです。
人生100年時代において、投資は資産形成の手段であると同時に、人生設計の一部でもあります。
結論
人生100年時代に投資を続ける本当の理由は、お金持ちになるためだけではありません。
本質は資産寿命を延ばすことにあります。
長寿化によって老後は数十年続く時代になりました。預金だけでは資産の価値を維持することが難しくなり、長生きリスクへの備えも必要になります。
そのため人生後半戦の投資は、「どれだけ増やすか」ではなく、「どれだけ長く資産を持たせるか」という発想へ変わっていきます。
人生の寿命と資産の寿命をできるだけ近づけること。
それこそが人生100年時代における投資の本当の役割なのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 各種資産形成関連記事
金融庁「資産形成に関する各種資料」
厚生労働省「簡易生命表」
ロバート・マートン『生涯投資戦略』
ウィリアム・ベンゲン「退職後資産の取り崩し研究」