近年の相続税・贈与税改正を見ると、一つの大きな方向性が見えてきます。
それは、
「相続税と贈与税を一体で考える」
という考え方です。
2024年から相続開始前贈与の加算期間は3年から7年へ延長されました。相続時精算課税制度も大幅に使いやすくなりました。
こうした改正の背景には、将来的な「生涯課税」という考え方があるともいわれています。
今回は、相続税と贈与税の将来について考えてみます。
なぜ贈与税が存在するのか
そもそも贈与税は何のためにあるのでしょうか。
その目的は相続税の補完です。
もし贈与税がなければ、
毎年少しずつ財産を移転する
死亡前に全財産を渡してしまう
といった方法で相続税を回避できてしまいます。
そのため贈与税は、相続税逃れを防ぐための制度として導入されました。
言い換えれば、相続税と贈与税はもともと一つの制度として考えられているのです。
現在の制度は複雑になりすぎた
現在の日本には、
暦年課税
相続時精算課税
教育資金贈与
結婚・子育て資金贈与
住宅取得資金贈与
など様々な制度があります。
制度ごとに要件や期限が異なり、非常に複雑です。
利用者から見ると、
どの制度が有利なのか
何を選べばよいのか
分かりにくい状況になっています。
税制は本来シンプルであるべきですが、現実はその逆になっているともいえるでしょう。
生涯課税とは何か
将来議論される可能性があるのが生涯課税です。
生涯課税とは、
人生を通じて受け取った財産
を基準に課税する考え方です。
現在は、
生前贈与なら贈与税
死亡後なら相続税
という区別があります。
しかし生涯課税では、
いつ受け取ったか
ではなく、
最終的にいくら受け取ったか
を重視します。
税制の考え方そのものが変わることになります。
なぜ生涯課税が注目されるのか
背景にあるのは超高齢社会です。
現在の日本では、
90代の親
70代の子
50代の孫
という家族構成が珍しくありません。
相続による資産移転があまりにも遅くなっています。
経済全体で見ると、
若い世代に資産が回りにくい
という問題があります。
政府としては、
教育
住宅取得
子育て
起業
といった人生の早い段階で資産移転を促したいと考えています。
そのため、
生前に渡しても
相続で渡しても
税負担は大きく変わらない
という仕組みを目指す可能性があります。
海外ではどのような制度なのか
国によって制度は異なります。
相続税がない国もあります。
一方で、生涯に受け取った贈与や相続財産を合算して管理する考え方を採用している国もあります。
日本でも近年の改正を見ると、
相続前7年加算
相続時精算課税の拡充
など、生涯課税に近づく方向へ進んでいるようにも見えます。
もちろん直ちに制度が統合されるわけではありませんが、将来的な方向性としては十分考えられるでしょう。
相続対策はどう変わるのか
もし生涯課税が導入されれば、相続対策の考え方も変わります。
現在は、
毎年110万円贈与
相続開始前の贈与時期
課税方式の選択
などが重要です。
しかし生涯課税では、
誰に渡すか
いつ渡すか
何のために渡すか
がより重要になります。
税金を減らすことよりも、資産移転のタイミングそのものが重要になるでしょう。
人生100年時代の資産承継
人生100年時代では、相続そのものの意味も変わります。
かつては、
親が亡くなってから財産を受け継ぐ
という考え方でした。
しかし今後は、
親が元気なうちに活用する
子や孫が必要な時期に支援する
という考え方が重視されるかもしれません。
生涯課税は、こうした時代の変化に対応する制度とも考えられます。
結論
相続税と贈与税は本来、別々の税金ではありません。
どちらも資産承継に課税する制度であり、近年の税制改正を見る限り、一体化へ向かう流れは続いています。
2040年に生涯課税制度が導入されているかどうかは分かりません。
しかし、
「いつ渡したか」
より
「最終的にいくら受け取ったか」
を重視する考え方は今後さらに強まる可能性があります。
人生100年時代の相続対策は、節税中心の発想から、資産を必要な人へ必要な時期に届ける発想へ変わっていくのかもしれません。
参考
財務省
「相続税・贈与税の一体化に関する資料」
国税庁
「相続時精算課税制度のあらまし」
国税庁
「令和6年度税制改正による相続税・贈与税の見直し」
日本経済新聞 2026年6月1日朝刊
「暦年贈与は終わったのか 7年加算時代編」
日本経済新聞 2026年6月1日朝刊
「財産は子より孫に渡した方がよいのか 三世代承継編」