20世紀は石油の時代でした。
石油を持つ国は豊かになり、石油を確保するために各国は競争を繰り広げました。自動車、航空機、化学製品など、現代文明の発展は石油なしには語れません。
そして21世紀。
世界で最も価値の高い企業を見ると、石油会社ではなくIT企業が並んでいます。
その背景にあるのが「データ」です。
近年、「データは21世紀の石油である」という言葉を耳にする機会が増えました。本当にデータは石油と同じような存在なのでしょうか。
今回は、AI時代におけるデータの価値について考えてみます。
石油が20世紀を支えた理由
石油そのものには大きな価値がありません。
価値が生まれるのは、石油を精製し、ガソリンや軽油、プラスチックなどに加工したときです。
つまり、
採掘
↓
精製
↓
輸送
↓
利用
という流れによって価値が生まれます。
20世紀の巨大企業は、この流れを支配した企業でした。
石油は産業社会を動かす最も重要な資源だったのです。
データはなぜ価値を持つのか
データも似ています。
単なる数字や記録そのものには大きな価値はありません。
しかし、
- 顧客情報
- 購買履歴
- 検索履歴
- 位置情報
- 行動履歴
などを分析すると、新しい価値が生まれます。
企業はデータを活用して、
- 商品開発
- マーケティング
- 需要予測
- 業務効率化
を行っています。
AIも大量のデータを学習することで性能を向上させています。
データは現代経済を動かす燃料になりつつあるのです。
石油とデータの共通点
石油とデータには興味深い共通点があります。
まず、どちらもそのままでは価値を生みません。
加工や分析が必要です。
また、
石油には製油所が必要であるように、
データにはデータセンターやAIが必要です。
さらに、
石油を輸送するパイプラインが必要だったように、
データには通信回線やクラウドが必要です。
整理すると、
石油時代
- 油田
- 製油所
- パイプライン
- 自動車
データ時代
- データ収集
- AI分析
- 通信ネットワーク
- デジタルサービス
という対応関係が見えてきます。
石油とデータの大きな違い
一方で決定的な違いもあります。
石油は使えばなくなります。
しかしデータは使っても減りません。
むしろ利用するほど価値が高まることがあります。
例えばAIは学習データが増えるほど性能が向上します。
また、一つのデータを複数の人が同時に利用できます。
これは石油にはない特徴です。
そのためデータは「枯渇しない資源」とも呼ばれています。
AIがデータ価値をさらに高める
近年、データの価値が急上昇している最大の理由はAIです。
AIは大量のデータを学習することで賢くなります。
高性能なAIを作るには、
- 大量のデータ
- 高性能半導体
- データセンター
- 電力
が必要です。
前回までの記事で取り上げた、
土地
↓
電力
↓
データセンター
という流れは、最終的にデータへとつながっています。
AI時代の競争力は、どれだけ質の高いデータを持っているかによって決まる部分が大きくなっています。
なぜ巨大IT企業が強いのか
現在の巨大IT企業は膨大なデータを保有しています。
例えば、
- 検索データ
- SNSデータ
- EC利用履歴
- 動画視聴履歴
- 地図情報
などです。
これらは長年かけて蓄積された資産です。
AI時代になると、その価値はさらに高まります。
なぜならAIの学習材料になるからです。
巨大IT企業が強い理由は、単に技術力だけではなく、データという資源を保有していることにもあります。
人生100年時代とデータ資産
人生100年時代においても、データとの関わりはますます深くなります。
私たちは日常生活の中で、
- スマートフォン
- キャッシュレス決済
- SNS
- ネット通販
- 健康管理アプリ
を利用しています。
知らないうちに膨大なデータを生み出しているのです。
これからは、
「お金を持っている人」
だけではなく、
「価値あるデータを持っている企業」
が経済を動かす時代になるかもしれません。
個人にとっても、自分のデータがどのように利用されているのかを理解することが重要になります。
結論
20世紀の石油が産業社会を支えたように、21世紀のデータはデジタル社会を支える重要な資源になっています。
もちろん石油とデータは完全に同じではありません。しかし、経済を動かす基盤であるという点では非常によく似ています。
AIの発展によって、データの価値はさらに高まっています。
私たちが日々生み出す情報は、AI時代の新しい資源として活用されているのです。
21世紀の経済を理解するためには、石油の流れを理解した20世紀の人々と同じように、データの流れを理解することが重要になるのではないでしょうか。
参考
総務省「情報通信白書」
経済産業省「デジタル経済に関する各種資料」
電子情報技術産業協会(JEITA)「データセンターサービス市場予測」
日本経済新聞 AI・データセンター・デジタル経済関連各記事