人生100年時代を迎え、多くの人が長い老後を過ごすようになりました。
その中で増えているのが、
「老後資金は足りるだろうか」
という不安です。
一方で、
「子どもや孫に財産を残したい」
という思いを持つ人も少なくありません。
その結果、多くの人が資産を使うべきか、それとも残すべきかという悩みを抱えています。
実際、日本では高齢者が多くの金融資産を保有している一方で、使い切れないまま相続される財産も少なくありません。
では、相続財産は使い切るべきなのでしょうか。それとも残すべきなのでしょうか。
今回は人生100年時代の資産活用について考えてみます。
日本人はなぜ財産を残そうとするのか
日本では昔から、
「子どもに迷惑をかけたくない」
「財産を残してあげたい」
という価値観が強く存在しています。
戦後の厳しい時代を経験した世代ほど、その傾向が強いともいわれます。
また、
・病気になるかもしれない
・介護が必要になるかもしれない
・長生きしすぎるかもしれない
という将来への不安もあります。
そのため、使える資産があっても積極的に使わず、できるだけ残そうとする人が多いのです。
使わなかった財産は本当に有効活用されたのか
財産を残すこと自体は悪いことではありません。
しかし、
・旅行を我慢した
・趣味を諦めた
・住宅の修繕を先送りした
・家族との時間を犠牲にした
という結果になったとしたらどうでしょうか。
財産は本来、人生を豊かにするための手段です。
十分な資産があるにもかかわらず、自分自身の人生で活用できなかったのであれば、その資産は本当に役立ったといえるでしょうか。
人生の最後に多額の財産を残したとしても、それが本人の幸福につながったとは限りません。
資産は使うために存在する
資産の本来の目的は保有することではなく活用することです。
例えば、
・健康維持のための支出
・学びへの投資
・趣味や旅行
・住環境の改善
などは、人生の質を高める支出です。
また、
・子どもの住宅取得支援
・孫の教育費支援
・家族への援助
なども資産活用の一つです。
資産は銀行口座に置かれているだけでは価値を生みません。
活用されることで初めて意味を持つのです。
それでも使い切れない理由
では、なぜ多くの人は資産を使い切れないのでしょうか。
最大の理由は将来がわからないからです。
例えば、
・何歳まで生きるかわからない
・介護費用がどれくらいかかるかわからない
・医療費がどこまで増えるかわからない
という不確実性があります。
もし寿命がわかっていれば、計画的に資産を使い切ることも可能でしょう。
しかし実際には寿命は予測できません。
そのため、多くの人が安全側に考え、結果として資産を多く残すことになります。
残す財産と使う財産を分けて考える
人生100年時代には、
「全部使う」
「全部残す」
という極端な考え方ではなく、
「使う財産」と「残す財産」を分けて考えることが重要です。
例えば、
・老後生活資金
・介護予備資金
・医療予備資金
は残す財産です。
一方で、
・余裕資金
・使う予定のない預金
・将来の生活に影響しない資産
は活用を検討できるかもしれません。
この区別ができると、必要以上にお金を抱え込むことを防げます。
欧米と日本の考え方の違い
欧米では、
「人生の最後に小切手を残すのではなく、思い出を残す」
という考え方が語られることがあります。
もちろん全員がそうではありませんが、資産を自分の人生のために使うことを肯定的に捉える文化があります。
一方、日本では相続財産を残すことが美徳とされる傾向があります。
どちらが正しいという話ではありません。
ただし、人生100年時代においては、
「残すこと」
だけではなく、
「活かすこと」
も同じくらい重要になってきているのではないでしょうか。
相続は結果として残るもの
相続対策というと、
「いくら残せるか」
が話題になりがちです。
しかし本来、
相続財産とは使い切れなかった財産でもあります。
人生を豊かに過ごし、必要な支援を行い、それでも残った財産が相続される。
そのような考え方もあるのではないでしょうか。
相続は人生の目的ではありません。
人生の結果として生じるものです。
結論
相続財産を使い切るべきか、それとも残すべきかという問いに正解はありません。
長寿リスクや介護リスクへの備えは必要ですし、家族へ財産を承継したいという思いも大切です。
しかし、財産を残すことだけが目的になってしまうと、本来豊かに過ごせたはずの人生の機会を失う可能性があります。
人生100年時代に求められるのは、「残すか使うか」という二者択一ではなく、「どのように活かすか」という発想です。
相続財産は残すためのものではなく、人生と家族の未来を豊かにするための資産として考える時代になっているのかもしれません。
参考
・内閣府「令和7年版高齢社会白書」
・金融庁「高齢社会における資産形成・管理」
・総務省統計局「家計調査年報」
・厚生労働省「令和7年簡易生命表」
・国税庁「相続税及び贈与税のあらまし」