スチュワードシップ・コードとは何か 投資家に求められる責任ある行動

経営

企業統治に関する議論でよく登場する言葉に「コーポレートガバナンス・コード」があります。

一方で、その対になる存在として「スチュワードシップ・コード」があります。

コーポレートガバナンス・コードが企業側の行動原則だとすれば、スチュワードシップ・コードは投資家側の行動原則です。

企業だけが変わればよいわけではありません。

企業に資金を提供する投資家もまた、企業価値向上に責任を持つべきだという考え方から生まれた制度です。

今回は、スチュワードシップ・コードの概要と、その役割について考えてみます。

スチュワードシップとは何か

スチュワードシップ(Stewardship)とは、本来「受託者責任」や「管理者責任」と訳される言葉です。

投資家、とりわけ年金基金や運用会社は、自分のお金ではなく顧客や加入者から預かった資金を運用しています。

つまり、運用会社は顧客から預かった資産の管理人です。

そのため、単に株を売買して利益を追求するだけではなく、投資先企業の持続的成長を後押しし、長期的なリターンを実現する責任があります。

この考え方を明確にしたものがスチュワードシップ・コードです。

なぜ導入されたのか

日本では長年、機関投資家が企業経営に積極的に関与しない傾向がありました。

株式を保有していても、

「経営は会社に任せる」

という考え方が一般的だったのです。

その結果、経営効率が低い企業や、多額の現預金を抱えたまま成長投資を行わない企業が存在しても、十分な改善圧力が働きませんでした。

また、株主総会の議案についても、機械的に賛成票を投じるケースが少なくありませんでした。

こうした状況を改善し、日本企業の企業価値向上を促すため、2014年に金融庁がスチュワードシップ・コードを策定しました。

投資家は企業と対話する責任がある

スチュワードシップ・コードの最大の特徴は、「エンゲージメント」を重視していることです。

エンゲージメントとは、投資家と企業との建設的な対話を意味します。

投資家は企業の経営陣と継続的に対話し、

・企業戦略

・資本政策

・経営課題

・ガバナンス体制

などについて意見交換を行います。

目的は経営への介入ではありません。

企業価値向上に向けて、経営陣と投資家が共通認識を持つことです。

単なる株主ではなく、「責任ある所有者」として行動することが求められているのです。

議決権行使にも説明責任が求められる

投資家の重要な権利の一つが議決権です。

株主総会では、

・取締役の選任

・役員報酬

・組織再編

・定款変更

などが決議されます。

スチュワードシップ・コードでは、機関投資家に対して議決権を適切に行使することを求めています。

近年では、

「なぜ反対したのか」

「なぜ賛成したのか」

を公表する機関投資家も増えています。

投資家自身にも説明責任が求められる時代になったのです。

コーポレートガバナンス・コードとの関係

スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードは車の両輪といわれます。

企業側には、

・透明性を高める

・社外取締役を活用する

・資本効率を改善する

といった取り組みが求められます。

一方で投資家側には、

・企業と対話する

・議決権を適切に行使する

・企業価値向上を支援する

ことが求められます。

企業だけが努力しても十分ではありません。

投資家も責任を果たすことで、健全な資本市場が形成されるのです。

アクティビストとの違い

スチュワードシップ・コードの話題になると、アクティビストとの違いがよく議論されます。

アクティビストは一般に「物言う株主」と呼ばれます。

経営改革や資本政策の変更を強く求めることがあります。

一方、スチュワードシップ・コードが想定しているのは、より長期的な企業価値向上です。

もちろん両者が重なる部分もあります。

しかし本来は、短期的な株価上昇だけではなく、企業の持続的成長を重視する考え方に立っています。

日本企業に与えた影響

スチュワードシップ・コード導入後、日本企業と投資家との関係は大きく変化しました。

経営陣が投資家と対話する機会は増加し、IR活動も活発になりました。

また、

・ROEの向上

・PBR改善

・政策保有株式の縮減

・株主還元の強化

などの動きも広がっています。

東京証券取引所がPBR1倍割れ企業に改善を求めた背景にも、こうした流れがあります。

企業価値向上への圧力は以前よりも強くなっているのです。

中小企業経営者にも参考になる考え方

スチュワードシップ・コードは上場企業と機関投資家を対象としています。

しかし、その本質は中小企業にも参考になります。

経営者は自社だけの視点で経営判断を行いがちです。

そのため、外部の視点を取り入れることが重要になります。

顧問税理士や金融機関、取引先、社外役員などとの対話を通じて、自社の課題や改善点を客観的に把握することができます。

企業価値向上のためには、経営者自身が耳の痛い意見にも耳を傾ける姿勢が必要なのです。

結論

スチュワードシップ・コードは、機関投資家に対して責任ある投資行動を求める行動原則です。

その目的は、投資家が企業との建設的な対話を通じて、企業価値の向上と持続的な成長を支援することにあります。

コーポレートガバナンス・コードが企業側のルールであるならば、スチュワードシップ・コードは投資家側のルールです。

両者が機能することで、健全な企業統治と資本市場が実現されます。

近年のPBR改革や株主との対話重視の流れを理解するためにも、スチュワードシップ・コードは欠かせない重要な制度といえるでしょう。

参考

・金融庁「責任ある機関投資家の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》」

・金融庁「スチュワードシップ・コード再改訂版」

・東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」

・日本経済新聞 各種企業統治・機関投資家関連記事

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