源泉徴収票の提出が不要に? みなし提出特例と電子提出義務の注意点

税理士
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令和8年度税制改正では、給与所得の源泉徴収票に関する事務手続きの簡素化が盛り込まれました。

令和9年1月1日以後に提出する給与所得の源泉徴収票については、給与支払報告書を市区町村へ提出した場合、税務署へ源泉徴収票を提出したものとみなされる「みなし提出特例」が創設されます。

これにより、多くの企業では税務署への源泉徴収票提出が不要になります。しかし、電子的提出義務の判定方法や法定調書合計表の取扱いには注意が必要です。

今回は、実務担当者が誤解しやすいポイントを整理します。

みなし提出特例とは何か

これまで給与支払者は、一定の条件に該当する従業員について、

・市区町村へ給与支払報告書を提出する
・税務署へ源泉徴収票を提出する

という二重の提出を行っていました。

令和9年1月1日以後に提出する給与所得の源泉徴収票については、給与支払報告書を市区町村へ提出した場合、税務署へ提出したものとみなされます。

その結果、給与所得の源泉徴収票については税務署への提出が不要になります。

行政手続の重複を解消し、事業者の負担軽減を図ることが制度改正の目的です。

電子提出義務の判定はどうなるのか

今回の改正で誤解しやすいのが、電子提出義務の判定です。

法定調書は、基準年に提出すべき法定調書が30枚以上である場合、e-Taxによる電子提出が義務付けられています。

給与支払報告書についても同様に、一定枚数以上の場合はeLTAXによる電子提出が必要です。

ここで問題になるのが、

「税務署へ源泉徴収票を提出しなくなるなら、提出枚数はゼロになるのではないか」

という考え方です。

しかし、国税庁はそのような取扱いを認めていません。

電子提出義務の判定に使用する枚数は、

「基準年に税務署へ提出すべきであった源泉徴収票の枚数」

で判定します。

実際に提出した枚数ではありません。

そのため、みなし提出特例により税務署への提出が不要になった場合でも、電子提出義務の判定対象となる枚数は存在します。

判定枚数は改正前の提出範囲で数える

さらに注意したいのが、判定対象となる源泉徴収票の範囲です。

令和9年以後は源泉徴収票の提出範囲が大幅に拡大されます。

従来は、年末調整済みの一般従業員については年間給与が500万円超の場合に限り提出対象でした。

しかし改正後は、一定の退職者を除き、原則としてすべての給与について源泉徴収票の提出対象となります。

一見すると、電子提出義務の判定枚数も増加しそうに見えます。

ところが国税庁は、電子提出義務の判定については改正後の提出範囲ではなく、改正前の提出範囲を用いるとしています。

つまり、

「基準年において改正前ルールで提出すべきだった源泉徴収票の枚数」

で判定することになります。

実務担当者は、現在の提出対象者数と電子提出義務判定用の枚数を混同しないよう注意が必要です。

法定調書合計表は提出不要になるのか

給与所得の源泉徴収票についてみなし提出特例を利用する場合、税務署へ源泉徴収票を提出しないため、原則として「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」の提出も不要になります。

これは事務負担軽減の効果として大きなポイントです。

ただし、すべての場合で不要になるわけではありません。

法定調書合計表は、

・退職所得の源泉徴収票
・報酬、料金等の支払調書
・不動産使用料等の支払調書

など複数の法定調書に共通する様式です。

そのため、給与所得の源泉徴収票以外の法定調書を税務署へ提出する場合には、引き続き法定調書合計表の提出が必要になります。

この場合、実際に税務署へ提出する法定調書のみを記載し、給与所得の源泉徴収票に関する記載は不要です。

経理担当者が確認しておきたい実務ポイント

今回の改正に対応するため、年末調整や法定調書作成業務に携わる担当者は次の点を確認しておく必要があります。

・自社が電子提出義務の対象となるか
・基準年の判定枚数を正しく把握しているか
・給与支払報告書の提出体制が整備されているか
・eLTAXによる電子提出環境が整っているか
・他の法定調書提出の有無を確認しているか

特に中堅企業では、人事給与システムやアウトソーシング先との連携確認も重要になります。

結論

源泉徴収票のみなし提出特例は、税務署と市区町村への重複提出を解消し、事務負担を軽減する大きな改正です。

一方で、電子提出義務の判定は「実際に提出した枚数」ではなく、「基準年に提出すべきであった源泉徴収票の枚数」で行われます。また、その判定には改正前の提出範囲を使用するという特殊な取扱いが設けられています。

制度改正によって手続きが簡素化される一方で、判定ルールはむしろ複雑になっています。

年末調整や法定調書作成業務を担当する企業では、早い段階から制度内容を確認し、提出方法やシステム対応を整理しておくことが重要です。

参考

・税のしるべ 2026年5月25日号「源泉徴収票のみなし提出特例での給与支払報告書の電子的提出義務の判定は『提出すべき源泉徴収票』で枚数は改正前の提出範囲」

・国税庁「給与所得の源泉徴収票等のみなし提出特例に関するQ&A」

・地方税共同機構「給与支払報告書の電子的提出に関する資料」

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