Z世代は本当に年金をもらえないのか ― 「年金崩壊論」と現実のギャップ(将来給付編)

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将来、自分たちは年金を受け取れないのではないか――。

若い世代の間では、このような不安が根強く存在しています。SNSなどでは「年金制度は破綻する」「保険料だけ払わされる」といった意見も少なくありません。

しかし、厚生労働省の財政検証によれば、Z世代の将来の年金受給額は、就職氷河期世代などの先行世代と比較すると必ずしも悲観的な状況ではありません。むしろ低年金となる人の割合は減少する見込みです。

もちろん制度そのものに課題がないわけではありません。しかし、将来の年金を考える際には、イメージや感情だけではなく、制度の仕組みや社会構造の変化を踏まえて考えることが重要です。

今回は、Z世代の年金事情と、今後の課題について考えてみます。

年金は本当に受け取れなくなるのか

若年層の不安として最も多いのが、「将来年金制度がなくなるのではないか」というものです。

しかし、公的年金制度は現役世代の保険料と税金、そして積立金を組み合わせて運営されています。

少子高齢化によって制度運営が厳しくなっていることは事実ですが、国の財政検証では将来にわたって給付が継続されることを前提に試算が行われています。

実際には「もらえなくなる」のではなく、「給付水準がどうなるか」が本来の論点です。

制度の持続可能性と給付水準は別問題であり、この点が誤解されやすいところです。

Z世代の低年金者は減少する見込み

厚生労働省の2024年財政検証によれば、2004年度生まれの世代では、公的年金の受給額が月10万円未満となる人の割合は24.4%と推計されています。

これに対し、

  • 1964年度生まれ:約42.6%
  • 1974年度生まれ:約39.1%
  • 1984年度生まれ:約36.8%
  • 1994年度生まれ:約30.0%

となっており、若い世代ほど低年金者の割合が減少する見通しです。

一般には少子高齢化が進むほど年金は悪化すると考えられがちですが、実際の試算では異なる結果が示されています。

なぜこのような現象が起きるのでしょうか。

共働き社会が年金を底上げする

最大の要因は共働き世帯の増加です。

かつては専業主婦世帯が一般的でした。

専業主婦は第3号被保険者として基礎年金を受け取れますが、厚生年金への加入期間が短いため、将来受給額は比較的小さくなります。

一方で近年は女性の就業率が大きく上昇しています。

厚生年金に加入して働く期間が長くなるほど、老後の年金額も増加します。

実際に、1964年度生まれでは第3号被保険者期間が中心の女性が約34%だったのに対し、2004年度生まれでは約13%まで減少する見込みです。

社会構造の変化そのものが年金額を押し上げているのです。

「働く高齢者」の増加も大きな変化

もう一つの重要な要因が高齢者就労です。

かつては60歳前後で引退することが一般的でした。

しかし現在では65歳以降も働く人が増加しています。

厚生年金は原則70歳まで加入できます。

働き続けることで保険料を納める期間が延び、その分だけ受給額も増えます。

財政検証によると、厚生年金加入期間は

  • 1964年度生まれ:平均26.3年
  • 2004年度生まれ:平均33.2年

となる見込みです。

約7年も加入期間が延びる計算になります。

人生100年時代といわれるなか、年金制度も「長く働く社会」を前提に設計されつつあります。

氷河期世代との違い

興味深いのは、就職氷河期世代の方が低年金リスクが高いことです。

氷河期世代はバブル崩壊後の厳しい雇用環境の影響を強く受けました。

非正規雇用が増え、

  • 厚生年金に加入できない
  • 加入期間が短い
  • 生涯賃金が低い

という問題が生じました。

年金は保険料納付実績に応じて決まるため、若い頃の雇用環境が老後の所得にまで影響します。

年金問題は単なる高齢化問題ではなく、雇用政策や労働市場の問題でもあることがわかります。

残る課題は男女格差

一方で課題も残っています。

2004年度生まれでも、

  • 男性の厚生年金加入期間:36.6年
  • 女性の厚生年金加入期間:29.7年

と約7年の差があります。

出産や育児による離職、転勤に伴う退職などが背景にあります。

共働きが進んだとはいえ、家事・育児負担は依然として女性側に偏る傾向があります。

その結果、老後の年金格差にもつながっています。

今後の年金改革では、保険料や給付水準だけでなく、働き方そのものをどう変えるかが重要なテーマになります。

第3号被保険者制度は見直されるのか

近年、議論が続いているのが第3号被保険者制度です。

配偶者に扶養されている人は保険料を負担せず基礎年金を受け取れます。

制度創設当時は専業主婦世帯が多数派でした。

しかし現在では共働き世帯が主流です。

そのため、

  • 働き控えを助長している
  • 制度の公平性に課題がある

という指摘があります。

自民党や日本維新の会も見直しを検討していますが、負担増への反発も予想されるため、改革は容易ではありません。

年金制度改革の中でも最も難しいテーマの一つといえるでしょう。

年金不安の本質

若い世代の年金不安は決して根拠のないものではありません。

ただし、その不安の多くは「制度がなくなる」という誤解に基づいています。

本当の問題は、

  • どれだけ長く働けるか
  • どれだけ厚生年金に加入できるか
  • どのような働き方を選ぶか

という点にあります。

将来の年金額は、人生設計や働き方の選択と密接に結びついています。

年金制度だけを議論しても十分ではありません。

雇用政策、少子化対策、女性活躍、高齢者雇用などを含めた社会全体の仕組みとして考える必要があります。

結論

Z世代の年金は「もらえなくなる」のではなく、「先行世代より受給額が改善する可能性が高い」というのが財政検証から読み取れる姿です。

共働きの増加や高齢者就労の拡大によって、低年金者の割合は着実に減少する見込みです。

一方で、男女格差や第3号被保険者制度などの課題は残っています。

年金問題を考える際には、「制度が破綻するかどうか」ではなく、「どのような働き方が将来の所得を支えるのか」という視点がますます重要になっていくでしょう。

参考

・日本経済新聞 2026年5月29日朝刊「Z世代の低年金者少なく 月10万円未満『4人に1人』」

・厚生労働省「令和6年財政検証結果」

・厚生労働省「公的年金シミュレーーター」

・慶應義塾大学 権丈善一教授 年金制度関連コメント

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