固定資産税の中でも、特に大きな影響を持つ制度が「住宅用地特例」です。
住宅が建っている土地については、固定資産税が大幅に軽減されます。
特に小規模住宅用地では、
という大きな軽減措置があります。
この制度によって、日本の住宅保有コストは大きく抑えられています。
一方で、この特例は、
- 空き家放置
- 更地化回避
- 老朽住宅残存
など、日本の不動産問題とも深く結び付いています。
本稿では、住宅用地特例の仕組みと、「なぜ住宅だけが優遇されるのか」という制度の本質について考えます。
住宅用地特例とは何か
住宅用地特例とは、住宅が建っている土地について固定資産税を軽減する制度です。
対象となるのは、
- 一戸建住宅
- マンション
- アパート
などの敷地です。
特例は大きく2つに分かれます。
小規模住宅用地
住宅1戸あたり200㎡までの部分です。
固定資産税の課税標準額が、
となります。
さらに都市計画税も、
まで軽減されます。
これは極めて大きな優遇措置です。
一般住宅用地
200㎡を超える部分については、
となります。
小規模住宅用地ほどではありませんが、それでも大幅な軽減です。
なぜ住宅だけ優遇されるのか
住宅用地特例の背景には、「住宅政策」があります。
戦後の日本では、
- 住宅不足
- 都市人口集中
- 持家促進
が重要政策でした。
そのため政府は、
- 住宅ローン減税
- 持家政策
- 住宅用地特例
などを通じて住宅取得を支援してきました。
つまり住宅用地特例は、単なる税軽減ではなく、
「住宅を持ちやすくする政策」
として設計されているのです。
「住むこと」を優遇する税制
固定資産税は本来、「資産保有課税」です。
しかし住宅用地特例によって、
- 投機目的土地
- 事業用土地
よりも、
- 居住用土地
が大幅に優遇されています。
つまり日本の固定資産税制度は、
「住むこと」
を政策的に保護しているとも言えます。
これは日本の戦後社会における、
- 持家中心社会
- 中間層形成
- 住宅資産形成
という思想とも結び付いています。
なぜ更地にすると税金が上がるのか
よく知られているのが、
「家を壊すと固定資産税が高くなる」
という問題です。
これは住宅用地特例がなくなるためです。
例えば、
- 老朽空き家
- 誰も住んでいない家
でも、住宅が残っている限りは特例が適用される場合があります。
しかし解体して更地にすると、特例が消滅します。
その結果、固定資産税が数倍になるケースもあります。
空き家放置問題との関係
この制度は、日本の空き家問題とも深く関係しています。
本来であれば、
- 危険空き家
- 老朽住宅
- 利用されていない住宅
は撤去した方が望ましい場合があります。
しかし更地化すると税負担が増えるため、
「壊さず放置する」
という行動が合理的になってしまうことがあります。
つまり住宅用地特例は、
- 居住支援政策
である一方、
- 空き家温存政策
として作用してしまう側面もあるのです。
空家法と特定空家
近年、この問題への対応として「空家等対策特別措置法」が整備されました。
管理不全空家や特定空家に指定されると、住宅用地特例が解除される場合があります。
つまり、
「危険な空き家には優遇を適用しない」
方向へ制度が変化しています。
これは、
- 防災
- 景観
- 衛生
- 地域安全
などを重視する流れです。
固定資産税は、都市政策とも一体化し始めているのです。
都市部と地方で異なる意味
住宅用地特例は、都市部と地方で意味合いも異なります。
都市部では、
- 地価高騰
- 住宅負担増
- 長期居住支援
の意味が強くなります。
一方地方では、
- 空き家放置
- 人口流出
- 土地余剰
の問題が深刻です。
つまり同じ制度でも、
- 都市では「住宅維持支援」
- 地方では「空き家固定化」
として作用する場合があります。
マンションと住宅用地特例
マンションでは、住宅用地特例がさらに強く作用することがあります。
高層マンションでは、多数の住戸で土地を分割して持つため、
「土地持分が小さい」
という特徴があります。
その結果、
- 高額マンション
- 都心タワマン
でも、土地部分の固定資産税負担が相対的に抑えられることがあります。
これが近年の「タワマン課税問題」にもつながっています。
人口減少時代の住宅政策
住宅用地特例は、高度成長期には合理的な制度でした。
しかし人口減少社会では、
- 空き家増加
- 土地需要減少
- インフラ維持負担増
など、新しい問題が発生しています。
その結果、
「住宅保有優遇を今後も維持するべきか」
という議論も強まっています。
今後は、
- 空き家対策
- コンパクトシティ政策
- 土地利用誘導
などと連動しながら制度が見直される可能性があります。
住宅用地特例は「社会政策」
住宅用地特例は単なる税軽減ではありません。
そこには、
- 持家促進
- 居住安定
- 中間層形成
- 都市政策
- 地方財政
など、さまざまな政策思想があります。
一方で、その優遇が、
- 空き家放置
- 老朽住宅残存
- 土地流動化阻害
などを引き起こしている面もあります。
税制は、人々の行動を大きく変える制度でもあるのです。
結論
住宅用地特例は、日本の固定資産税制度の中でも極めて重要な制度です。
住宅保有を支援することで、
- 持家社会
- 居住安定
- 中間層形成
を支えてきました。
一方で、
- 空き家問題
- 更地回避
- 老朽住宅放置
など、人口減少時代特有の副作用も拡大しています。
今後の固定資産税制度では、
「住宅を守る税制」
から、
「土地利用を最適化する税制」
への転換が議論される可能性もあるでしょう。
次回は、「家屋評価はなぜ納得しにくいのか ― 再建築価格方式の仕組み」を整理します。
参考
- 総務省「固定資産税の概要」
- 地方税法
- 総務省自治税務局 固定資産税関係資料
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」
- 内閣府 税制調査会資料「住宅政策と固定資産税」
- 一般財団法人資産評価システム研究センター資料