「億り人」は再現可能なのか(資産形成編)

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新NISAの拡充や株高を背景に、「億り人」という言葉を耳にする機会が増えました。

かつては一部の起業家や投資の成功者を指すイメージが強かったかもしれません。しかし近年は、会社員や共働き世帯が長期投資を続けた結果、金融資産1億円に到達するケースが珍しくなくなっています。

実際、野村総合研究所の推計では、2023年時点で純金融資産1億円以上の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯に達し、過去最多となりました。

では、「億り人」は特別な才能を持つ人だけの世界なのでしょうか。

それとも、一定の条件を満たせば再現可能な現象なのでしょうか。

この記事では、近年の資産形成環境の変化を踏まえながら、「億り人」の実像について考えてみたいと思います。

「億り人」の正体は“高利回り”だけではない

「億り人」と聞くと、多くの人は、

・急騰株で大儲けした
・暗号資産で成功した
・短期間で資産を増やした

といったイメージを持つかもしれません。

もちろん、そのようなケースも存在します。

しかし、実際に増えているのは、いわゆる「いつの間にか富裕層」です。

特徴的なのは、

・共働き
・長期積立
・インデックス投資
・生活コスト管理
・制度活用

という比較的地味な行動を長年続けている点です。

つまり、現在増えている「億り人」の多くは、「一発逆転型」ではなく、「長期積上げ型」なのです。

資産形成を決めるのは「利回り」より「入金力」

資産形成の議論では、「何%で運用できるか」に注目が集まりがちです。

しかし、長期では「いくら投資できるか」の影響も極めて大きくなります。

たとえば、

・毎月3万円積み立てる人
・毎月30万円積み立てる人

では、同じ利回りでも将来資産は大きく変わります。

つまり、

資産形成=入金力 × 継続年数 × 利回り

という構造になっています。

このため、「億り人」になった人々の多くは、投資技術よりも、

・共働き継続
・昇進
・転職
・副業
・支出抑制

などによって「投資元本を増やす力」を高めていました。

近年、「高所得共働き世帯」が都市部で増えていることも、この流れと無関係ではないでしょう。

「生活水準を上げすぎない」が最大の分岐点

資産形成において、非常に重要なのが「生活水準の固定」です。

一般的には、収入が増えると、

・住宅をグレードアップする
・車を買い替える
・外食や旅行が増える
・ブランド消費が増える

という傾向があります。

しかし、「億り人」層では、収入が増えても支出を急拡大させない人が目立ちます。

これは単なる節約ではありません。

むしろ、

「増えた収入を資産に変える」

という行動です。

たとえば年収が200万円増えても、その大部分を投資に回せれば、10年後・20年後の資産差は極めて大きくなります。

逆に、高収入でも生活コストが膨らみ続ければ、資産は思ったほど増えません。

つまり、「億り人」を分けるのは、収入額だけではなく、「可処分所得を資産に転換できるか」という点なのです。

「長期投資」が再現性を高めた

かつて資産形成は、

・個別株選び
・売買タイミング
・相場観

に依存する部分が大きいものでした。

しかし現在は、

・全世界株インデックス
・米国株インデックス
・低コストETF

などが普及し、「市場全体に長期投資する」という手法が一般化しています。

さらに、

・NISA
・iDeCo
・企業型DC

など、税制優遇制度も整備されました。

これは非常に大きな変化です。

つまり現在は、「投資の才能」よりも、

・長期間続けられるか
・暴落時に売らないか
・積立を止めないか

の方が重要になっているのです。

実際、近年の「億り人」の多くは、リーマン・ショックやコロナショックでも投資を継続していました。

「再現可能」だが「誰でも簡単」ではない

では、「億り人」は再現可能なのでしょうか。

結論から言えば、

「一定条件を満たせば再現可能性はある」

と考えられます。

ただし、それは決して簡単な道ではありません。

必要になるのは、

・長期間の継続
・安定収入
・支出管理
・精神的耐久力
・暴落耐性

だからです。

特に難しいのは、「暴落時に売らないこと」です。

株式市場は必ず下落局面があります。

しかし、多くの人は暴落時に不安になり、

・積立停止
・狼狽売り
・現金化

をしてしまいます。

長期投資では、この「途中離脱」を避けられるかが極めて重要になります。

つまり、「億り人」は再現不能な奇跡ではない一方で、「継続できる人が少ない」という現実もあるのです。

日本社会は「資産格差社会」に向かうのか

近年の資産形成環境を見ると、「投資する人」と「投資しない人」の差は拡大しやすくなっています。

特に、

・NISA活用
・共働き
・都市部高所得層
・金融リテラシー

を持つ層ほど、資産形成速度が速くなっています。

一方で、

・物価高
・社会保険料増加
・実質賃金低迷

によって、投資余力を持てない層も少なくありません。

つまり、「億り人」の増加は、日本社会全体の豊かさを意味するとは限らないのです。

むしろ、

「資本市場に参加できた人」

「参加できなかった人」

の差が拡大している側面もあります。

結論

「億り人」は、かつてより再現可能性が高まっています。

背景には、

・インデックス投資の普及
・税制優遇制度
・共働き世帯の増加
・長期株高

があります。

ただし、重要なのは「高利回り」ではありません。

実際には、

・収入を増やす
・支出を管理する
・投資を継続する
・生活水準を急拡大させない

という、極めて基本的な行動の積み重ねが中心になっています。

そして現在の「億り人」は、「派手な成功者」というよりも、「長期間コツコツ続けた人」に近づいているのかもしれません。

参考

・日本経済新聞 2026年5月23日朝刊
「<ステップアップ>『富裕層入り』の共通項は 資産運用の前に支出絞る」

・日本経済新聞 2026年5月23日朝刊
「2005年以降で最多」

・野村総合研究所
「NRI富裕層ピラミッド」関連資料

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