富裕層は「高収入の人」なのか ―― “いつの間にか富裕層”の共通点を考える

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近年、「会社員でも1億円以上の金融資産を持つ人が増えている」という話を耳にする機会が増えました。

かつて「富裕層」といえば、地主・企業オーナー・開業医などが中心というイメージが強かったかもしれません。しかし現在は、共働き会社員が長期投資を続けた結果、気づけば1億円に到達していたというケースが増えています。

野村総合研究所の推計では、2023年時点で純金融資産1億円以上の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯となり、推計開始以来で最多となりました。

特に注目されているのが、「いつの間にか富裕層」と呼ばれる層です。

この記事では、新聞記事で紹介された複数の事例を参考にしながら、「富裕層入り」の共通点について整理してみたいと思います。

富裕層に共通するのは「投資の才能」ではない

記事の中で紹介されていた人々に共通するのは、「投資の天才」というよりも、むしろ非常に地味な行動です。

・固定費を見直す
・家計を把握する
・収入を増やす努力を続ける
・余剰資金を長期投資に回す
・暴落時に売らない

これらは一見すると当たり前の話に見えます。

しかし、実際にはこの「当たり前」を10年、15年、20年と継続することは簡単ではありません。

多くの人は、収入が増えると生活水準も上がります。ところが、記事で紹介された人たちは、収入が増えても生活費を大きく増やさず、その差額を投資に回していました。

つまり重要なのは、「いくら稼ぐか」だけではなく、「増えた収入を何に使うか」という点なのです。

「支出管理」が資産形成の出発点

記事の中で特に印象的だったのは、「投資の前に家計管理がある」という点です。

例えば、

・保険料の見直し
・通信費の削減
・ポイント活用
・ふるさと納税の利用
・生活費の固定化

などが挙げられていました。

投資の話になると、多くの人は「どの銘柄を買うか」に意識が向きます。しかし、実際には投資元本をどれだけ継続的に投入できるかの方が、長期では圧倒的に重要です。

たとえば年5%で運用できたとしても、投資元本が月3万円なのか、30万円なのかで、将来の資産額は大きく変わります。

つまり、

「投資の成果=運用利回り」

だけではなく、

「投資の成果=入金力 × 継続年数 × 利回り」

という側面が極めて大きいのです。

その意味では、家計管理は「節約術」ではなく、「投資戦略の一部」ともいえます。

富裕層ほど「派手ではない」

一般的に、「資産1億円超」と聞くと、高級車や高級マンションを連想しがちです。

しかし記事では、

・UR賃貸に長年住む
・ブランド品を買わない
・高額消費を避ける

といった事例が紹介されていました。

これは非常に象徴的です。

資産形成期においては、「見栄消費」を抑えられるかどうかが大きな分岐点になります。

高級車は維持費も大きく、住宅もローン負担や固定資産税が長期にわたり家計を圧迫します。

もちろん、人生を楽しむ支出は重要です。

ただし、「資産形成を優先する時期」と「消費を拡大する時期」を分けて考えている人が多いようにも見えます。

つまり、富裕層ほど「使わない力」を持っているともいえるのです。

「長期投資」が最大の武器になる理由

記事で紹介されていた富裕層に共通していたのが、「長期で持ち続けた」という点でした。

リーマン・ショックのような暴落時でも売却せず、積み立てを継続していたケースが目立ちます。

長期投資では、

・暴落時に売らない
・積立を止めない
・相場を予想しすぎない

ことが重要とされます。

実際、資産形成に失敗するケースの多くは、「暴落で怖くなって売る」「上昇局面で飛び乗る」という行動パターンにあります。

一方で、長期間積み立てを続けた人は、複利効果を最大限活用できます。

特に近年は、

・新NISA
・iDeCo
・企業型DC

など、長期投資を後押しする制度も拡充されています。

記事でも、「いつの間にか富裕層」の多くがこうした制度を活用していると指摘されていました。

「収入を増やす努力」を避けていない

もう一つ重要なのが、「支出削減だけではない」という点です。

記事では、

・昇格試験に全力投球した
・管理職を目指した
・共働きを継続した

などの事例が紹介されていました。

つまり、「節約だけで億り人になった」というよりも、

「収入増加+支出管理+長期投資」

を組み合わせていたのです。

特に共働き世帯の効果は大きく、世帯年収が安定しやすいことに加え、投資余力を確保しやすくなります。

また、近年は都市部を中心に高所得共働き世帯が増えており、野村総研も「50歳前後で富裕層入りする可能性がある層が増加している」と分析しています。

富裕層化は「制度活用能力」の差でもある

現代の資産形成では、制度理解も重要になっています。

例えば、

・NISA
・iDeCo
・ふるさと納税
・ポイント経済圏
・企業型DC
・税制優遇

などをどう使うかで、長期的な差が生まれます。

これは逆に言えば、「制度を知っている人ほど有利」という側面でもあります。

近年、「税制はゲーム化しているのか」「制度を知らない人は損をする社会で良いのか」といった議論が増えている背景には、このような現実もあるのでしょう。

結論

「富裕層入り」というと、特別な才能や高収入を想像しがちです。

しかし実際には、

・収入を増やす努力
・生活水準を急激に上げない
・家計を管理する
・長期投資を続ける
・制度を活用する

という、極めて基本的な行動の積み重ねが共通していました。

そして興味深いのは、多くの人が「資産1億円」を目的にしていたわけではない点です。

家族との将来設計や安心感を重視した結果として、長期的に資産が積み上がっていったケースが多く見られます。

資産形成は、一攫千金ではなく「生活習慣」に近いのかもしれません。

参考

・日本経済新聞 2026年5月23日朝刊
「<ステップアップ>『富裕層入り』の共通項は 資産運用の前に支出絞る」

・日本経済新聞 2026年5月23日朝刊
「2005年以降で最多」

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