タワーマンションは長年、「資産価値の高い不動産」として人気を集めてきました。特に都市部では、高齢世代が購入したタワマンを、将来的に子ども世代へ相続するケースも増えています。
しかし近年、タワマンを巡る環境は大きく変わり始めています。
- 修繕積立金の上昇
- 管理費高騰
- 大規模修繕問題
- 建替え困難
- 人口減少
- 中古価格変動
など、「持ち続けるコスト」が急速に意識され始めています。
その結果、相続の現場では、
「欲しい資産」
ではなく、
「扱いが難しい資産」
へ変わり始める可能性があります。
今回は、タワマン相続で今後起こり得る問題と、家族関係・資産承継への影響を整理します。
タワマンは「分けにくい資産」である
相続で最も揉めやすい資産の一つが不動産です。
その理由は、
- 現金のように均等分割できない
- 評価と実勢価格がズレる
- 売却に時間がかかる
- 感情が入りやすい
ためです。
特にタワマンは価格が高額である一方、1戸単位の資産であるため分割が困難です。
例えば、
- 長男は住みたい
- 次男は売却したい
- 長女は現金化希望
など、利害が一致しないことがあります。
さらに近年は、
「本当に持ち続けるべきなのか」
という問題まで加わっています。
「高級資産」が「高負担資産」に変わる可能性
タワマンは外見上、高級資産に見えます。
しかし将来的には、
- 修繕積立金増額
- 管理費上昇
- 固定資産税
- 空室リスク
- 売却困難化
などが重荷になる可能性があります。
特に築年数が進むと、
「保有しているだけで毎月数万円以上かかる」
ケースも珍しくありません。
つまり相続人から見ると、
「資産を受け継ぐ」
というより、
「維持費負担を引き継ぐ」
感覚になる場合もあります。
ここで家族間の温度差が生まれます。
「誰が住むのか」で対立が起きやすい
タワマン相続では、「利用目的」の違いが揉め事につながります。
例えば、
- 親と同居していた子は住み続けたい
- 遠方居住の相続人は売却希望
- 投資目的で賃貸化したい相続人もいる
などです。
特に都心タワマンは価格が高いため、売却すれば大きな現金になります。
そのため、
「住みたい人」
と
「換金したい人」
の対立が起きやすいのです。
さらに最近は、
- 海外居住相続人
- 非居住者
- 再婚家族
- 複雑な相続関係
も増えています。
結果として、遺産分割協議が長期化するケースも考えられます。
「修繕積立金インフレ」が相続判断を変える
今後特に重要になるのが、修繕積立金問題です。
築浅時代は比較的低額だった積立金も、築30年以降は急増する可能性があります。
特にタワマンでは、
- 超高層外壁修繕
- エレベーター更新
- 配管更新
- 防災設備更新
などが重なります。
つまり相続時には、
「今の価格」
だけでなく、
「将来負担」
まで考える必要があります。
これは従来の不動産相続とは大きく異なる点です。
「売りたい時に売れない」問題
タワマン相続では流動性問題も重要になります。
人口減少が進む中で、将来も現在の価格水準で売れる保証はありません。
特に築古タワマンでは、
- 修繕不安
- 積立不足
- 管理組合機能低下
などが価格に影響する可能性があります。
つまり将来的には、
「高額なのに売れない」
という状態も起こり得ます。
これは地方の空き家問題とは別種類ですが、都市型不動産の新たなリスクと言えます。
相続税評価と実態価格のズレ
タワマンを巡っては、近年相続税評価の見直しも進みました。
背景には、
- 高層階ほど市場価格が高い
- しかし固定資産税評価額との差が大きい
という問題がありました。
いわゆる「タワマン節税」が社会問題化したためです。
現在は評価補正が導入されていますが、それでも実勢価格とのズレは完全には解消されていません。
今後は、
- 市場価格
- 管理状態
- 修繕リスク
- 流動性
なども含め、「実質価値」がより重視される可能性があります。
「住まい」なのか「金融商品」なのか
タワマン相続問題の本質は、
「住宅とは何か」
という問題でもあります。
親世代にとっては、
- 成功の象徴
- 老後の安心
- 資産形成
だったかもしれません。
しかし子世代にとっては、
- 維持費が高い
- 管理が面倒
- 都心に住まない
- ミニマル志向
という価値観変化もあります。
つまり、
「親が欲しかった資産」
と
「子が欲しい資産」
が一致しなくなっているのです。
「相続しない」という選択肢も増えるのか
今後は、
- 相続放棄
- 売却前提相続
- 家族信託
- 法人保有
- 生前処分
など、多様な選択肢が増える可能性があります。
特に高齢化社会では、
「子どもに負担を残したくない」
という意識も強まっています。
その結果、
「持ち続けることが正解」
という従来の不動産観も変わっていくかもしれません。
結論
タワマン相続問題は、単なる不動産承継ではありません。
そこには、
- 高齢化
- 都市集中
- インフレ
- 維持費上昇
- 家族観変化
- 資産価値変動
など、日本社会の変化が凝縮されています。
これまで不動産は、
「残す資産」
として考えられてきました。
しかし今後は、
「維持できるか」
「次世代が本当に望むか」
まで考える時代になる可能性があります。
タワマン相続は、これからの日本における「資産承継の難しさ」を象徴するテーマになっていくのかもしれません。
参考
- 日本経済新聞 2026年5月18日朝刊「タワマン30年の崖(上)タワマン修繕、備えに不安」
- 国土交通省「マンション管理適正化法関連資料」
- 国税庁「マンションに係る財産評価基本通達の改正関連資料」
- 公益財団法人マンション管理センター関連資料