相続というと、多くの人はまず「相続税」をイメージします。
しかし実際の相続実務では、
- 税金より
- 家族関係の方が難しい
ケースも少なくありません。
実際、
- 「うちは財産が少ないから揉めない」
- 「兄弟仲は良いから大丈夫」
と思っていても、相続発生後に関係が大きく変わることがあります。
そのため現在は、
「相続」
ではなく、
「争族」
という言葉も広く使われています。
特に超高齢社会では、
- 介護
- 同居
- 生前援助
- 空き家
- 認知症
などが絡み、感情対立が複雑化しやすくなっています。
今回は、相続税実務だけでは説明できない、“家族トラブルとしての相続”について、実務目線で整理していきます。
なぜ相続は揉めるのか
相続が難しい理由は、
「お金」
だけではないからです。
相続には、
- 家族関係
- 感情
- 介護
- 思い出
- 不公平感
などが強く絡みます。
つまり相続は、
「財産分配」
であると同時に、
「家族関係の総決算」
にもなりやすいのです。
“公平”と“平等”は違う
実務で非常に重要なのが、この問題です。
例えば、
- 長男が長年介護
- 次男は遠方
- 長女は生活援助
など、家族内の役割は違うことがあります。
しかし法律上は、
「法定相続分」
があります。
すると、
- 「介護した人」
- 「何もしなかった人」
が同じ割合になることもあります。
ここで、
- 平等
- 公平
の感覚がズレることがあります。
介護負担は感情対立になりやすい
現在の相続で特に大きいのが「介護」です。
例えば、
- 同居介護
- 通院付き添い
- 認知症対応
- 介護離職
などを、特定家族だけが担うケースがあります。
すると相続時に、
- 「自分だけ苦労した」
- 「なぜ同じ相続なのか」
という感情が出やすくなります。
つまり、
介護負担
と
遺産分割
は、非常に強く結びつきやすいのです。
同居問題はさらに複雑
同居相続人も、実務で重要な論点です。
例えば、
- 実家に住み続けたい
- 生活基盤がそこにある
一方で、
- 他相続人は現金化希望
ということがあります。
特に不動産は分けにくいため、
- 売却
- 共有
- 代償分割
などで揉めることがあります。
さらに、
「親と一緒に暮らしてきた」
という感情も加わります。
生前援助は“見えない不公平”になりやすい
実務では、
- 教育費援助
- 住宅資金援助
- 開業資金
- 結婚支援
なども問題になります。
例えば、
- 長男だけ住宅購入支援
- 長女だけ学費援助
などです。
親としては、
「必要だから助けた」
つもりでも、他の相続人から見ると、
「不公平」
に見えることがあります。
“親の想い”と子どもの感覚は一致しない
親は、
- 「感謝してくれるはず」
- 「分かってくれるはず」
と思っていることがあります。
しかし実際には、
- 子ども間認識
- 家族距離感
- 生活状況
は違います。
つまり、
“親の善意”
が、
“相続対立”
につながることもあるのです。
遺言があっても揉めることはある
「遺言を書けば安心」
と思われることがあります。
確かに遺言は重要です。
しかし実務では、
- 内容への不満
- 遺留分
- 感情対立
- 説明不足
などで揉めることがあります。
つまり、
「法律上有効」
と、
「家族が納得」
は別問題です。
“実家”は感情が入りやすい
実家問題は非常に複雑です。
例えば、
- 売却したい人
- 残したい人
で意見が分かれます。
さらに、
- 仏壇
- 墓
- 思い出
- 地域関係
なども絡みます。
つまり実家は、
「単なる不動産」
ではなく、
「家族の象徴」
になりやすいのです。
超高齢社会で“争族”は増える可能性
現在は、
- 認知症増加
- 再婚家庭増加
- 未婚化
- 子なし夫婦増加
など、家族構造が変化しています。
さらに、
- 単身高齢者
- 遠距離家族
- 介護負担集中
なども増えています。
そのため今後は、
相続問題
=
家族問題
の側面が、さらに強くなる可能性があります。
“お金の問題”より“感情の問題”
実務では、
「財産額」
より、
「感情」
が大きな対立要因になることがあります。
例えば、
- 親からの愛情差
- 介護評価
- 家族内立場
- 長年の不満
などです。
つまり相続は、
「最後のお金の話」
であると同時に、
「長年の家族関係」
が表面化する場面でもあります。
“争族対策”は税金対策だけでは足りない
現在、多くの相続対策は、
- 節税
- 生前贈与
- 不動産対策
に注目しがちです。
しかし実際には、
- 家族共有
- 意思確認
- 財産整理
- 遺言
- 介護負担配慮
なども重要です。
つまり、
「税金だけ減れば成功」
ではありません。
今後は“家族設計”が重要になる可能性
超高齢社会では、
- 長寿化
- 家族多様化
- 単身化
が進んでいます。
そのため今後の相続では、
- 財産承継
- 介護
- 居住
- 見守り
- 家族距離
まで含めた、
“家族設計”
が重要になる可能性があります。
結論
相続は、
「税金」
だけでは終わりません。
実際には、
- 介護
- 同居
- 生前援助
- 実家
- 感情対立
など、多くの家族問題が絡みます。
また、
- 平等
- 公平
の感覚も、人によって異なります。
そのため、
「法律上正しい」
ことと、
「家族が納得する」
ことは一致しない場合があります。
だからこそ相続では、
- 節税
- 財産分割
だけでなく、
- 家族間共有
- 感情配慮
- 意思整理
- 将来設計
まで含めて考えることが重要になります。
次回は、「“空き家相続”はなぜ増えるのか(不動産承継編)」をテーマに、地方不動産・管理負担・売れない家・相続放棄・空き家税制など、超高齢社会で急増する“空き家相続問題”を整理していきます。
参考
国税庁「相続税の申告のしかた(令和7年分用)」令和7年4月
法務省「遺産分割に関する資料」令和7年
総務省「住宅・土地統計調査」令和7年