60歳定年は終わるのか――還暦管理職が増える時代の働き方

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かつて日本企業では、60歳になると定年退職し、その後は再雇用社員として補助的な役割を担うことが一般的でした。しかし近年、その常識が大きく変わりつつあります。

人手不足の深刻化や高齢化の進展を背景に、60歳を超えても管理職として活躍する人が増えています。定年後も部長や課長として組織を率い、重要な意思決定に関わるケースも珍しくなくなりました。

一方で、シニア管理職の増加は若手登用とのバランスという新たな課題も生み出しています。

今回は、「還暦管理職」が増える背景と企業経営への影響について考えてみたいと思います。

還暦管理職とは何か

還暦管理職とは、60歳以降も管理職として勤務を続ける社員を指します。

従来の日本企業では、60歳定年を迎えると役職を外れ、給与も大きく下がるケースが一般的でした。しかし近年は定年延長や役職定年制度の廃止によって、年齢に関係なく能力や実績によって役職を継続する企業が増えています。

企業側の考え方も変化しています。

かつては年齢が役職の重要な判断基準でしたが、現在は「そのポジションに必要な能力を持っているか」が重視されるようになっています。

その結果、60代の部長や課長が当たり前に存在する職場が少しずつ増えています。

なぜ企業はシニア管理職を必要としているのか

最大の理由は人手不足です。

日本の生産年齢人口は減少を続けています。若手人材の採用競争は激化し、多くの企業が管理職候補の不足に直面しています。

管理職は単なるプレーヤーではありません。

部下の育成、組織運営、経営方針の浸透、取引先との関係維持など、多くの役割を担っています。

長年の経験を持つシニア社員は、

・業務知識が豊富
・社内外の人脈を持つ
・過去の成功や失敗を知っている
・組織文化を理解している

という強みがあります。

企業から見れば、こうした人材を60歳で一律に戦力外とすることは大きな損失です。

特に専門性が高い分野では、その価値はさらに高まります。

サイバーセキュリティや研究開発、法務、財務などの領域では、経験そのものが競争力になる場合もあります。

70歳現役社会が現実になりつつある

2021年の高年齢者雇用安定法改正により、企業には70歳までの就業機会確保が努力義務として求められています。

さらに多くの企業で、

・定年延長
・継続雇用制度
・役職定年廃止

などの制度改革が進んでいます。

かつては「60歳で一区切り」という考え方が主流でした。

しかし人生100年時代と呼ばれる現在では、60歳はまだ働く意欲も能力も十分に残る年代です。

健康寿命の延伸を考えると、60歳以降も第一線で活躍することは特別なことではなくなりつつあります。

シニア活用が失敗する理由

一方で、シニア活用がうまくいかない企業も少なくありません。

その原因の一つが「半・現役化」です。

定年後に仕事の責任だけを減らし、給与も大幅に下げる一方で、能力や経験は十分に活用しないというケースです。

本人からすれば、

「期待されていない」
「必要とされていない」

と感じやすくなります。

結果としてモチベーションが低下し、本来持っている能力を発揮できなくなります。

経験豊富な人材を活用するのであれば、年齢ではなく役割と成果で評価する仕組みが重要になります。

若手登用とのバランスが課題

還暦管理職が増えることで、別の問題も生じます。

それが若手社員の昇進機会です。

管理職ポストには限りがあります。

シニア管理職が長期間ポストを占め続ければ、若手が昇進する機会が減少します。

昇進の見通しが立たなければ、

「頑張っても評価されない」
「成長の機会がない」

と感じる若手が増える可能性があります。

実際に先進企業では、

・管理職任期制の導入
・若手管理職比率のKPI化
・シニア管理職の評価基準厳格化

などの工夫を進めています。

シニア活用と若手育成は、どちらか一方を選ぶ問題ではありません。

両立させる仕組みづくりが求められています。

税理士業界にも訪れる変化

この流れは税理士業界にも当てはまります。

税理士は資格職であり、年齢による定年はありません。

実際には70代、80代でも現役として活躍する税理士が数多く存在します。

一方で、税制改正への対応やAIの活用など、新しい知識や技術を取り入れる姿勢も必要になります。

長年の経験だけではなく、

・学び続ける力
・変化への適応力
・後進育成への意欲

がますます重要になります。

これからの時代は、「何歳まで働くか」ではなく、「何歳になっても価値を提供できるか」が問われる時代になるのかもしれません。

結論

還暦管理職の増加は、日本社会の高齢化と人手不足が生み出した新しい働き方です。

企業にとっては経験豊富な人材を活用できるメリットがあります。一方で、若手の成長機会を確保しなければ組織の活力は失われます。

重要なのは年齢ではなく、能力と意欲です。

60歳を超えても活躍できる人には挑戦の機会を与える。一方で若手にも成長と昇進の機会を用意する。

その両立ができる企業こそが、人口減少時代を勝ち抜く組織になっていくのではないでしょうか。

参考

・日本経済新聞 2026年6月1日朝刊「還暦管理職が人材難救う」

・日本経済新聞 2026年6月1日朝刊「新陳代謝促す工夫も」

・パーソル総合研究所「企業の60代社員の活用施策に関する調査」

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