顧問税理士が毎月の試算表で見るべき5つの危険信号とは何か 実務編

税理士
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企業経営では、決算書よりも毎月の試算表の方が重要だと言われます。

決算書は一年に一度の健康診断ですが、試算表は毎月の健康診断です。病気が進行してから治療するよりも、初期症状を見つけて対応した方が企業へのダメージは小さくなります。

近年は物価上昇、人件費増加、金利上昇など、中小企業を取り巻く経営環境は急速に変化しています。経済産業省も企業が倒産する前に事業再生へ取り組める新制度を整備し、早期対応を促す方向へ舵を切りました。

だからこそ、顧問税理士には試算表から経営危機の兆候を読み取り、経営者へ早めに伝える役割が求められます。

今回は、毎月の試算表で必ず確認したい五つの危険信号について考えてみます。

売上は増えているのに利益が減っている

最初に確認したいのは利益率です。

売上だけを見て安心している経営者は少なくありません。しかし、原材料費や人件費が売上以上に増えていれば、利益は減少していきます。

売上が前年比で増えていても、売上総利益率や営業利益率が毎月低下している場合は注意が必要です。

値上げが十分にできていないのか、採算の悪い仕事が増えているのか、あるいは固定費が膨らんでいるのかを分析する必要があります。

税理士は利益率の変化を説明するだけでなく、その原因まで経営者と一緒に考えることが重要です。

売掛金が売上より速いペースで増えている

二つ目は売掛金です。

売上が増えると売掛金も増えますが、その増加率が売上以上であれば回収が遅れている可能性があります。

回収サイトが長くなると、利益が出ていても資金繰りは苦しくなります。

黒字倒産の多くは、利益不足ではなく資金不足が原因です。

試算表では売掛金残高だけを見るのではなく、月商に対してどの程度あるのか、前年と比較してどう変化しているのかを確認することが重要です。

早めに気付けば、請求方法や回収条件の見直しという選択肢もあります。

在庫が積み上がり続けている

三つ目は棚卸資産です。

在庫は将来売れる資産ですが、売れなければ現金になりません。

試算表を見ると、利益は出ているのに在庫だけが増え続けている企業があります。

製造業や卸売業だけではありません。小売業や建設業でも同じです。

過剰在庫は保管コストだけでなく、値下げや廃棄による損失にもつながります。

税理士は利益だけを見るのではなく、「利益が本当に現金を生み出しているのか」という視点で試算表を確認することが求められます。

借入金は減らず利息だけ増えている

四つ目は借入金の状況です。

金利上昇局面では借入金の負担が徐々に重くなります。

毎月の返済額は変わらなくても、利息負担が増えれば利益は圧迫されます。

さらに、借入金残高が減っていないにもかかわらず、新たな借入れが増えている場合は注意が必要です。

運転資金を借入れで補い続ける経営は、資金繰り悪化の前兆であることも少なくありません。

試算表だけではなく、借入金返済予定表も併せて確認することで、将来の資金繰りを予測できます。

現金預金が毎月減り続けている

最後は現金預金です。

企業が倒産する直接の原因は利益ではなく、現金不足です。

赤字でも資金があれば会社は存続できます。

反対に黒字でも現金が尽きれば倒産します。

毎月の試算表では、利益以上に現金残高の推移を確認する必要があります。

現金が減り続けているなら、その原因を明らかにしなければなりません。

設備投資なのか、借入返済なのか、それとも本業の資金繰り悪化なのか。

原因によって対策は大きく変わります。

税理士は現金の動きを経営者へ分かりやすく説明することが重要です。

税理士の仕事は数字を説明することではない

試算表は単なる数字の一覧ではありません。

そこには会社の経営状態が映し出されています。

税理士が数字を読み解き、「このままでは半年後に資金繰りが厳しくなるかもしれません」「利益率が低下していますので価格改定を検討しましょう」と具体的に助言できれば、経営者の意思決定は大きく変わります。

これからは申告書を作るだけではなく、毎月の試算表から未来を予測する力が税理士には求められるでしょう。

企業が困ってから相談を受けるのではなく、困る前に危険信号を伝えることが、これからの顧問税理士の大きな役割になると考えます。

結論

試算表は過去の実績をまとめた資料ではありません。

未来の経営リスクを映し出す重要な経営資料です。

売上だけではなく、利益率、売掛金、在庫、借入金、現金預金という五つの危険信号を毎月確認することで、多くの経営危機は早期に発見できます。

これからの税理士は、試算表を「説明する人」ではなく、「未来を予測し、経営者に行動を促す人」へと進化していくことが期待されます。その積み重ねが、顧問先企業の持続的な成長と、倒産リスクの低減につながるのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞(2026年6月26日朝刊)

企業債務、多数決で減免 「2年後に倒産恐れ」目安 経産省、12月開始へ

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