補助金を受けた設備を売却したらどうなるのか 譲渡益編

税理士
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補助金を活用して設備投資を行う企業は少なくありません。補助金を受けた際には圧縮記帳を適用し、その年度の税負担を軽減するケースも多く見られます。

ところが、その設備を数年後に売却する場面になると、「思った以上に利益が出た」と驚く経営者もいます。

その理由は圧縮記帳にあります。

前回の記事では、圧縮記帳は節税ではなく課税繰延べであることを説明しました。今回は、その課税繰延べが設備売却時にどのような形で現れるのかを見ていきます。

設備売却時の利益はどう計算するのか

固定資産を売却した場合の利益は次のように計算します。

譲渡益 = 売却価格 − 帳簿価額

例えば、

  • 売却価格 500万円
  • 帳簿価額 300万円

であれば、

譲渡益は200万円となります。

税務上はこの譲渡益が益金となり、法人税の課税対象になります。

ここまでは通常の固定資産売却と変わりません。

圧縮記帳をした設備は帳簿価額が低い

問題は圧縮記帳を適用した設備です。

例えば、

  • 設備取得額 1,000万円
  • 補助金   700万円

だったとします。

圧縮記帳を行うと、

設備の帳簿価額は300万円になります。

もちろん、その後の減価償却も300万円を基礎として行われます。

つまり、通常より帳簿価額が低い状態で推移することになります。

売却時に利益が大きくなる理由

数年後、その設備を500万円で売却したとします。

圧縮記帳をしていなかった場合を考えると、

  • 取得価額 1,000万円
  • 減価償却後簿価 600万円

だったかもしれません。

この場合の譲渡損益は、

500万円 − 600万円 = ▲100万円

となります。

一方で圧縮記帳をしていた場合、

  • 圧縮後簿価 300万円
  • 減価償却後簿価 150万円

になっている可能性があります。

この場合、

500万円 − 150万円 = 350万円

の譲渡益が発生します。

同じ設備を同じ価格で売却しているにもかかわらず、大きな利益が発生するのです。

なぜこのようなことが起きるのか

理由は単純です。

圧縮記帳によって過去に課税を繰り延べていたからです。

補助金を受け取った年度には、

  • 補助金への課税を軽減した
  • 税金の支払いを先送りした

というメリットがありました。

しかし税法はその利益を永久に免除しているわけではありません。

設備を売却すると、

過去に繰り延べられていた課税部分が譲渡益という形で表面化することになります。

これが課税繰延べの正体

圧縮記帳はしばしば節税制度と誤解されます。

しかし設備売却時の計算を見ると、本質がよく分かります。

補助金を受けた年度に課税されなかった部分が、

  • 減価償却費の減少
  • 売却時の譲渡益増加

という形で回収されているのです。

つまり税金が消えたのではなく、課税時期が後ろへ移動しただけです。

これが課税繰延べの正体です。

設備を長期間使用した場合はどうなるのか

設備を耐用年数まで使用し続けた場合も考え方は同じです。

圧縮記帳によって帳簿価額が小さくなっているため、減価償却費も少なくなります。

その結果、

毎年の損金が少なくなり、課税所得が増加します。

売却しなくても、長期的には繰り延べられた課税が少しずつ実現していくことになります。

税務調査で確認されるポイント

税務調査では、

  • 圧縮記帳対象資産か
  • 圧縮額の計算は正しいか
  • 売却時の帳簿価額は適正か
  • 減価償却計算に誤りはないか

などが確認されます。

特に設備を長期間保有した後に売却する場合、担当者が交代していることも多く、圧縮記帳の経緯が分からなくなっているケースがあります。

補助金関係書類や固定資産台帳は長期保存が重要です。

経営者が理解しておくべきこと

補助金を活用すること自体は有効な経営判断です。

しかし、

  • 補助金を受けたから得をした
  • 圧縮記帳で税金がなくなった

と考えるのは正確ではありません。

設備を売却する時や耐用年数を通じて利用する過程で、繰り延べられた課税は徐々に実現していきます。

経営者は税額だけでなく、課税時期まで含めて理解しておく必要があります。

結論

補助金を受けた設備を売却すると、圧縮記帳によって低くなった帳簿価額の影響で、通常より大きな譲渡益が発生することがあります。

これは圧縮記帳が節税制度ではなく課税繰延べ制度であることを示しています。補助金受領時に軽減された税負担は、将来の減価償却費の減少や設備売却時の譲渡益増加という形で回収されるのです。

補助金と圧縮記帳を正しく理解するためには、その年度の税額だけを見るのではなく、設備の取得から売却までを通じた長期的な視点で考えることが重要です。

参考

  • 東京税理士界 2026年6月1日号 Vol.201 会員相談室「圧縮記帳の経理方法」
  • 東京税理士界 2026年6月1日号 Vol.201 会員相談室「国庫補助金等の益金算入時期と圧縮記帳」
  • 法人税法
  • 法人税法施行令
  • 法人税基本通達
  • 公益財団法人 大蔵財務協会『法人税法』最新版
  • 税務研究会『法人税基本通達逐条解説』最新版
  • 中小企業庁『補助金活用ガイドブック』最新版
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