生成AIの活用が広がる中で、「良い問いを立てること」の重要性が強く意識されるようになっています。しかし、良い問いとは何かと問われると、明確に説明できるケースは多くありません。
結論から言えば、良い問いとは「抽象度と具体度を適切にコントロールできている問い」です。
本稿では、問いの質を左右する抽象度と具体度の関係を整理します。
なぜ問いの質に差が出るのか
同じテーマであっても、問いの立て方によって得られる答えは大きく変わります。
例えば、
- 売上を上げるにはどうすればよいか
- この商品を30代男性向けにどう改善すべきか
この2つは一見似ていますが、前者は抽象度が高く、後者は具体度が高い問いです。
抽象度が高すぎると、一般論に終始しやすくなります。一方で、具体度が高すぎると、視野が狭くなり本質を見失う可能性があります。
つまり、問いの質は「どのレベルで考えるか」によって決まります。
抽象度が高い問いの役割
抽象度の高い問いは、問題の構造を捉えるために必要です。
例えば、
- なぜ売上が伸びないのか
- この事業の競争優位は何か
といった問いは、個別の施策ではなく、全体の構造や前提を見直すためのものです。
このレベルの問いを持たないまま具体策に入ると、場当たり的な対応に終わりやすくなります。
経営判断においては、まず抽象度の高い問いで「何が問題なのか」を定義することが不可欠です。
具体度が高い問いの役割
一方で、具体度の高い問いは、実行可能な解決策を導くために必要です。
例えば、
- 月間売上を10%増やすための施策を3つ提示せよ
- 既存顧客のリピート率を改善する具体策を挙げよ
といった問いは、実務に直結するアウトプットを得るためのものです。
抽象論だけでは行動にはつながりません。最終的には、具体的な行動に落とし込む必要があります。
良い問いは「往復運動」をしている
良い問いの最大の特徴は、抽象と具体を行き来している点にあります。
思考の流れとしては、次のような形になります。
- 抽象度の高い問いで構造を捉える
- 具体度の高い問いで施策に落とす
- 再び抽象化して全体との整合性を確認する
この往復運動を繰り返すことで、単なる思いつきではない、筋の通った意思決定が可能になります。
プロンプト設計における応用
この考え方は、そのままプロンプト設計に応用できます。
例えば、いきなり具体策を求めるのではなく、
- まず構造分析をさせる(抽象)
- 次に施策を出させる(具体)
- 最後に優先順位を整理させる(再抽象)
という段階的なプロンプトを設計することで、アウトプットの質が大きく向上します。
重要なのは、一回の問いで完結させようとしないことです。問いを分解し、段階的に深めていくことが必要です。
抽象度と具体度のバランスを崩す典型例
実務では、以下のようなバランスの崩れがよく見られます。
抽象に偏りすぎるケース
- 理想論ばかりで実行できない
- 誰にでも当てはまる一般論になる
具体に偏りすぎるケース
- 部分最適に陥る
- 前提条件を疑わなくなる
どちらも、問いの設計としては不十分です。
重要なのは、「今どのレベルで考えるべきか」を意識することです。
問いの質は思考の柔軟性で決まる
抽象と具体を行き来するためには、思考の柔軟性が求められます。
- 一段上の視点から捉える力
- 一段下に分解する力
この両方を持つことで、問いの精度が高まります。
生成AIは、この思考プロセスを補助するツールとして非常に有効です。しかし、どのレベルで問いを立てるかは人間側の役割です。
結論
良い問いとは、単に正しい質問ではなく、「適切な抽象度で設計された問い」です。
抽象と具体を行き来することで、
- 問題の本質を捉え
- 実行可能な解決策に落とし込み
- 全体との整合性を保つ
ことが可能になります。
これからの時代においては、答えを探す力以上に、「どのレベルで問いを立てるか」を判断する力が重要になります。
プロンプト設計を通じて、この思考の往復運動を意識することが、判断力そのものを高めることにつながります。
参考
税界タイムス 第109号
経営助言に活かす生成AI講座③「監査担当者のプロンプト技術を上げる」
AIアカデミー経営 代表取締役 嶋田利広 氏執筆記事