サッカーのワールドカップは世界中の人々を熱狂させるスポーツイベントです。しかし、その対戦国を通じて税金について学ぶ機会になると聞けば、少し意外に感じるかもしれません。
2026年6月、日本サッカー協会(JFA)と国税庁は、ワールドカップ北中米大会に合わせて「税金クイズ」を共同制作しました。クイズでは、各国の消費税率やユニークな税制度を題材にしながら、税への関心を高めることを目的としています。
税金は難しいもの、堅苦しいものと思われがちですが、本来は私たちの暮らしや社会の仕組みを映し出す鏡でもあります。今回は、ワールドカップをきっかけに世界の税制を眺めながら、税金の役割について考えてみたいと思います。
税金クイズから見える世界の違い
今回紹介されたクイズの一つは、日本、オランダ、チュニジア、スウェーデンの中で最も消費税率が高い国はどこかという問題でした。
正解はスウェーデンです。
日本の消費税率は10%ですが、スウェーデンの付加価値税(VAT)は標準税率25%です。北欧諸国では高い税負担の代わりに、教育や医療、福祉などの社会保障が充実していることで知られています。
一方で、日本は欧州諸国と比較すると税負担は比較的低いものの、高齢化による社会保障費の増加という大きな課題を抱えています。
同じ先進国であっても、税率や税の集め方は大きく異なります。税制はその国の歴史や文化、社会保障制度の違いを反映しているのです。
犬税が存在する国もある
クイズでは「オランダに実際に存在する税金は何か」という問題も出題されました。
正解は犬税です。
犬税は犬の飼育者に課される地方税で、オランダでは一部自治体で現在も残っています。もともとは野犬対策や狂犬病対策などを目的として導入された歴史があります。
世界には日本にはない税金が数多く存在します。
例えば、
・観光税
・砂糖税
・炭素税
・プラスチック税
・空港出国税
などがあります。
税金は単なる財源確保だけではなく、人々の行動を誘導する政策手段としても利用されています。
環境問題や健康問題への対応として、新しい税制が導入されるケースも少なくありません。
税金は社会の価値観を表している
税制を見れば、その国が何を大切にしているかが見えてきます。
北欧諸国では、高い税負担によって手厚い福祉を実現しています。
アメリカでは比較的低い税負担を維持する一方、自己責任の考え方が強く反映されています。
また近年では、脱炭素社会の実現に向けて環境関連税制を強化する国が増えています。
税金は単なるお金の話ではありません。
どのような社会を目指すのかという国家の意思表示でもあります。
だからこそ税金を学ぶことは、社会の仕組みを学ぶことにつながるのです。
租税教育の重要性
日本では税金について学ぶ機会が必ずしも多くありません。
学校教育の中で税について触れる機会はありますが、多くの人は社会人になって初めて所得税や住民税、社会保険料の仕組みに向き合います。
しかし、人生100年時代においては税との付き合いはますます長くなります。
働く期間の長期化により所得税との関わりは続きます。
資産形成ではNISAやiDeCoが重要になります。
退職後は年金課税や医療費控除が関係します。
さらに相続や贈与の問題も避けて通れません。
税を知ることは、自分自身の人生設計を考えることでもあります。
その意味では、今回のようなスポーツを活用した租税教育は非常に意義がある取り組みといえるでしょう。
結論
サッカーのワールドカップは世界各国の文化や価値観を知る機会でもあります。そして税制もまた、その国の社会や歴史を映し出す重要な要素です。
税金は難しい制度ではありますが、世界の国々と比較してみると、その国が何を重視し、どのような社会を目指しているのかが見えてきます。
人生100年時代を生きる私たちにとって、税金は単なる負担ではありません。社会を支え、自らの人生設計を考えるための重要な知識です。
ワールドカップを観戦しながら対戦国の税制にも少し目を向けてみると、サッカーとはまた違った世界の見え方があるのかもしれません。
参考
日本経済新聞 2026年6月5日夕刊「消費税一番高いのは… 税金で知るW杯対戦国 クイズ5問」
国税庁・日本サッカー協会「税金クイズ」広報資料(2026年6月)