かつて国際税務といえば、大企業や外資系企業を専門とする一部の税理士だけが扱う分野でした。
しかし、その状況は大きく変わっています。
新NISAの普及によって海外株式への投資は一般化し、海外ETFや海外債券を保有する人も増えました。さらに、海外不動産や海外銀行口座を持つ個人も珍しくありません。
つまり、国際税務は一部の専門家だけの知識ではなく、多くの税理士が向き合うべきテーマになりつつあります。
今回は、これからの税理士に求められる「国際資産アドバイザー」という新しい役割について考えてみます。
顧問先の資産は世界へ広がっている
以前の顧問先の資産は、
預金
国内株式
国内不動産
生命保険
が中心でした。
しかし現在では、
米国株
海外ETF
暗号資産
海外不動産
海外銀行口座
海外証券会社
など、資産の保有先は世界中へ広がっています。
経営者だけではありません。
会社員や年金生活者でも海外資産を保有する時代になっています。
税理士も、顧問先の資産全体を俯瞰して助言できる力が求められています。
申告書作成だけでは十分ではない
もちろん、確定申告は税理士の重要な業務です。
しかし、国際資産が増えるほど、
国外財産調書
外国税額控除
租税条約
CRS
為替差損益
国外送金等調書
など、申告書を作成する前に検討すべき事項が増えていきます。
「申告書を作る税理士」から、「資産管理を支援する税理士」へと役割が広がっているのです。
税理士は安心を提供する専門家
海外資産を保有する人の多くは、
申告方法が分からない
資料が英語で読めない
税務調査が不安
という悩みを抱えています。
税理士が説明することで、
何を申告すればよいのか
どの書類を保存すればよいのか
どの制度を利用できるのか
が明確になります。
知識を提供するだけではありません。
「安心して海外投資を続けられる環境」を提供することも、税理士の大切な役割になります。
国際税務は資産形成とも密接に関係する
これからの税理士は、税金だけを知っていればよい時代ではありません。
海外投資では、
資産配分
為替リスク
相続
贈与
事業承継
家族信託
など、多くの分野が関係してきます。
税理士がこれらを理解していれば、顧問先は複数の専門家へ相談する負担を減らすことができます。
税務を入口として、資産全体を支える存在になることが期待されています。
AI時代だからこそ価値が高まる
税法の条文や制度の説明は、AIでも調べられる時代になりました。
しかし、
顧問先の資産状況
家族構成
事業内容
将来の目標
まで踏まえた助言は、人間の税理士だからこそできる仕事です。
AIが情報を整理し、税理士が判断と提案を行う。
そのような役割分担が、これからの理想的な姿になるでしょう。
AIは税理士の競争相手ではなく、専門性を高めるためのパートナーになり得ます。
国際税務は新たな成長分野
日本では少子高齢化が進み、国内市場だけでは税理士業界の成長にも限界があります。
一方で、
海外投資
海外移住
外国人雇用
国際相続
海外事業展開
などは今後も拡大が予想されます。
国際税務を学ぶことは、新たな専門分野を築くことにもつながります。
これからの税理士にとって、大きな成長機会になるでしょう。
人生100年時代の相談相手へ
人生100年時代には、一人の人が海外資産を持つ期間も長くなります。
現役時代の資産形成だけでなく、
退職後の資産管理
相続
認知症対策
海外資産の承継
まで視野に入れた長期的な支援が必要になります。
税理士は単年度の申告を支援する専門家ではなく、人生全体を見据えて伴走する専門家へと進化していくことが期待されています。
結論
国際税務は、もはや一部の大企業だけの専門分野ではありません。海外投資や海外資産が一般化した現在では、多くの顧問先が国際税務に関わる時代になっています。
これからの税理士には、申告書を作成するだけでなく、国際資産全体を見渡しながら助言する「国際資産アドバイザー」としての役割が期待されます。AIの活用も進む中で、人にしかできない総合的な判断力と伴走力を磨くことが、税理士の新たな価値につながっていくでしょう。
参考
近畿税理士会「税法実務講座(所得税) 個人の国際税務~理論と実践~⑥ 円換算・為替差損益・外国人の住民税・個人の国際課税の調査」(講師:税理士 阿部行輝先生)