帳簿の提示と提出は何が違うのか 帳簿管理編

税理士
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税務調査では、税務職員から「帳簿を見せてください」と言われることがあります。

このとき、「提示してください」と言われる場合もあれば、「提出してください」と言われる場合もあります。

普段は同じような意味に聞こえるこの二つの言葉ですが、国税通則法では明確に区別されています。

この違いを理解していないと、税務調査で戸惑ったり、必要以上の資料を渡してしまったりすることがあります。

今回は、「提示」と「提出」の違いについて、税理士実務の視点から解説します。

提示とは帳簿を見せること

提示とは、帳簿や書類を税務職員が確認できる状態で見せることをいいます。

例えば、

総勘定元帳

現金出納帳

請求書

契約書

領収書

などを税務職員の前で開き、内容を確認できる状態にすることです。

近年では電子帳簿保存法の普及により、会計ソフトやクラウド上の電子データを画面に表示し、内容を確認してもらうことも提示に当たります。

帳簿の占有は会社側にあり、税務職員はその場で内容を確認するだけです。

つまり、提示とは「閲覧してもらう」というイメージです。

提出とは帳簿を税務署へ預けること

一方、提出とは帳簿や資料を税務職員へ渡し、一定期間その管理下に置くことを意味します。

例えば、

大量の請求書

契約書類

会計帳簿

電子媒体

などを税務署へ持ち帰って確認するために預けるケースがあります。

この場合、帳簿の占有は一時的に税務署へ移ります。

提出された資料は、調査が終わるまで留め置かれることもあります。

つまり、提出とは「預ける」という行為です。

提出された帳簿は留め置かれることがある

国税通則法では、税務署は調査に必要がある場合、提出された物件を留め置くことができると定めています。

ただし、これは税務署が自由に持ち帰ってよいという意味ではありません。

帳簿の提出は任意であり、提出者の了承が前提となります。

また、税務署は預かった資料について善良な管理者として適切に保管する義務を負います。

さらに、調査終了などにより必要がなくなった場合には、速やかに返還しなければなりません。

帳簿を預かることにも法律上のルールが設けられているのです。

電子帳簿でも考え方は同じ

近年は紙の帳簿よりも電子データによる管理が一般的になっています。

電子データの場合も、

画面表示して確認する

データを提出する

では意味が異なります。

画面上で内容を確認するだけであれば提示です。

一方、USBメモリやDVD、クラウドデータのコピーなどを税務署へ渡す場合は提出となります。

電子化が進んでも、提示と提出という基本的な考え方は変わりません。

税理士が注意すべきポイント

税務調査では、「提示」と「提出」が曖昧なまま進むことがあります。

そのため税理士は、

提示なのか

提出なのか

提出後はいつ返還されるのか

コピーで足りるのか

原本が必要なのか

などを税務職員へ確認することが重要になります。

必要以上に原本を提出する必要はありません。

また、会社側でも提出した資料を一覧表などで管理しておくと、返還漏れを防ぐことができます。

実務では、このような細かな管理が後々のトラブル防止につながります。

経営者も資料管理を徹底したい

税務調査は、日頃の帳簿管理がそのまま表れる場面でもあります。

帳簿や契約書、請求書などを整理して保管していれば、提示にも提出にも落ち着いて対応できます。

反対に、必要な資料が見つからない状態では、調査時間が長くなり、税務署へ不要な疑念を与えてしまうこともあります。

帳簿管理は税理士だけの仕事ではありません。

会社全体で日頃から整理整頓を徹底することが、円滑な税務調査につながります。

結論

税務調査における「提示」と「提出」は似ているようで、法律上は異なる意味を持っています。提示は帳簿や資料をその場で確認できる状態にすることであり、提出は資料を税務署へ預け、一時的に管理を委ねることです。

提出された資料は国税通則法に基づいて適切に管理され、必要がなくなれば返還されます。税理士はこの違いを理解したうえで対応し、経営者も日頃から帳簿管理を徹底することが、安心して税務調査に臨むための大切な備えとなるでしょう。

参考

近畿税理士会「税法実務講座 税理士目線の国税通則法 No.3」講義資料

国税通則法第74条の2(質問検査権)

国税通則法第74条の7(提出物件の留置き)

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