PEファンド活用モデルとの比較 ― 事業承継・直接M&Aとの戦略的違い

税理士
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事業承継税制を活用して親族承継を行うか、オーナー段階で直接M&Aを行うかという二択に加え、近年存在感を増しているのがPEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)を活用するモデルです。

特に、承継後M&Aを前提とした設計や、経営者が一定期間関与を続ける前提のスキームにおいて、PEファンドは第三の選択肢となります。

本稿では、親族承継、直接M&A、PEファンド活用の三つを比較し、その税務・資本政策・経営面の違いを整理します。


PEファンド活用モデルの基本構造

PEファンドは、企業価値向上を前提に株式を取得し、数年後の再売却(エグジット)でリターンを確保する投資主体です。

一般的な特徴は次のとおりです。

・オーナーが一定割合を売却し、一部株式を継続保有するケースが多い
・経営陣の残留やロールオーバー出資が前提となることがある
・3〜7年程度で再売却を想定する

つまり、完全な出口ではなく、「段階的出口」に近い構造です。


税務構造の比較

1. 直接M&Aとの比較

直接M&Aでは、オーナーが全株式を譲渡し、譲渡所得課税が確定します。

PEモデルでは、

・一部売却分について譲渡所得課税
・残存持分は将来再売却時に課税

となります。

税負担を時間分散できる一方、将来の価格変動リスクを残します。


2. 事業承継税制との関係

事業承継税制を適用した株式をPEファンドへ売却する場合、原則として猶予は打ち切られます。

したがって、

・承継後PE売却は猶予税額確定を前提とする
・猶予を維持しながら部分売却できるかは慎重な検討が必要

という構造になります。

制度活用とPE導入は、必ずしも両立しません。


資本政策の観点

親族承継モデル

・支配権を家族内で維持
・株価上昇リスクは内部留保と連動
・長期継続前提

直接M&Aモデル

・支配権を完全移転
・価格確定
・将来リスク解消

PEモデル

・一定割合の支配移転
・経営関与継続
・将来再売却で追加リターン可能

PEモデルは、承継と売却の中間的ポジションにあります。


極めて高い水準の所得に対する負担適正化措置との接点

同措置の強化により、オーナーが高額配当を長期に受け取り続ける戦略は相対的に負担が増します。

PEモデルでは、

・配当よりも売却益中心のリターン構造
・一部現金化により資産を確定

という特徴があります。

つまり、長期的配当型モデルから、資本利得型モデルへの転換という意味で、PE活用は制度強化と整合的な側面があります。


経営リスクと自由度

親族承継

・長期安定志向
・家族内意思決定
・制度要件による制約あり

直接M&A

・リスク即時解消
・経営責任移転
・税務構造は明快

PE活用

・経営高度化支援
・外部ガバナンス導入
・一定の経営制約

PEファンドは、経営改善や成長戦略を前提に介入します。意思決定の自由度は親族承継より低くなります。


時間軸とリスク配分

最も重要な違いは時間軸です。

・親族承継:長期継続前提
・直接M&A:即時確定
・PEモデル:中期(数年)確定

将来の税制変更リスクや市場変動リスクをどう配分するかという観点で選択が分かれます。


どのモデルが合理的か

合理性は企業の状況に依存します。

・後継者が明確で、長期独立経営を志向する場合は親族承継
・リスク解消と資産確定を優先する場合は直接M&A
・企業価値向上余地があり、段階的出口を目指す場合はPE活用

極めて高い水準の所得に対する負担適正化措置の強化は、配当中心モデルの優位性を相対的に低下させる可能性があり、その意味で資本利得型モデルの比重が高まる可能性があります。


結論

PEファンド活用モデルは、親族承継と直接M&Aの中間に位置する戦略です。税負担の時間分散、企業価値向上の余地、経営関与継続という特徴を持ちます。

ただし、事業承継税制との整合性、猶予税額確定リスク、経営自由度の制約を慎重に検討する必要があります。

制度環境が変化する中で、出口戦略は単なる税務問題ではなく、時間軸とリスク配分の選択です。経営目的を明確にしたうえで、制度を戦略に組み込む設計が求められます。


参考

税のしるべ「極めて高い水準の所得に対する負担適正化措置の適用がある場合の申告書等の記載例を公表」2026年2月23日
自由民主党「令和8年度税制改正大綱」2025年12月公表
国税庁「非上場株式等に係る納税猶予制度の概要」最新版

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