タワマン評価見直しと貸家建付地評価 ― 不動産評価改革の流れ

税理士
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相続税における不動産評価は、長年にわたり財産評価基本通達を基礎として運用されてきました。この仕組みは課税実務の統一性を確保するうえで大きな役割を果たしてきましたが、近年は市場価格との乖離が問題として指摘される場面も増えています。

その代表例として注目されたのが、いわゆるタワーマンションの評価問題です。高層マンションでは、相続税評価額が市場価格に比べて大きく低くなるケースが多く、相続税対策として利用される事例が社会的にも議論を呼びました。

この問題を契機として、マンション評価の見直しが行われました。本稿では、この見直しの背景を整理しながら、不動産評価制度全体の流れを考えてみます。


マンション評価と市場価格の乖離

マンションの相続税評価では、建物は固定資産税評価額を基礎として評価されます。土地については敷地全体の価額を各住戸の持分割合に応じて按分する方法が用いられています。

この評価方法は長く続いてきましたが、高層マンションでは市場価格との差が大きくなる場合がありました。

特に都市部のタワーマンションでは、次のような特徴が見られます。

・上層階ほど市場価格が高い
・眺望やブランド価値が価格に反映される
・実際の取引価格が土地持分の割合とは必ずしも一致しない

しかし、相続税評価では階層や眺望といった要素は基本的に考慮されません。そのため、市場価格と評価額の間に大きな差が生じるケースがありました。

この乖離が、相続税の節税目的でマンションを購入する動きを招いたと指摘されています。


評価見直しの背景

マンション評価の見直しは、こうした市場価格との乖離を縮小することを目的として行われました。

従来の評価方法では、同じマンション内であっても、相続税評価額と実際の取引価格の差が大きくなる場合がありました。特に高層階の住戸では、その差が顕著になることがありました。

そこで新しい評価方法では、マンションの市場価格との関係を考慮した補正の仕組みが導入されました。

この見直しは、相続税評価の中でも比較的大きな制度変更の一つといえます。


評価制度の基本的な考え方

ただし、相続税評価は必ずしも市場価格そのものを再現する制度ではありません。

不動産の市場価格は、立地、建物の状態、眺望、周辺環境など多くの要素によって決まります。これらをすべて個別に評価することは、課税実務としては非常に困難です。

そのため、相続税評価では一定の計算方法を用いることで、統一的な基準を確保しています。

貸家建付地評価も、このような考え方の中で設けられた制度です。借家権による利用制約を考慮し、土地の評価額を減額する仕組みとして導入されています。


制度と市場の関係

今回のマンション評価見直しは、相続税評価が市場価格との関係をどのように考えるべきかという問題を改めて示しました。

これまでの評価制度は、統一性や簡便性を重視して設計されてきました。しかし、不動産市場の高度化に伴い、市場価格との乖離が大きくなる場合には制度の見直しが求められることもあります。

貸家建付地評価についても、市場価格との関係をめぐる議論が今後生じる可能性があります。

賃貸不動産の価値は収益力によって評価されることが多く、入居率や賃料水準が価格に大きく影響します。この点では、相続税評価の仕組みとは異なる考え方が用いられています。


不動産評価の今後

不動産市場は近年、大きく変化しています。都市部ではマンション価格が上昇し、投資用不動産市場も拡大しています。

こうした状況の中で、相続税評価の在り方についても議論が続いています。

ただし、税制として重要なのは、すべての納税者に対して公平な基準を適用することです。そのため、評価制度は市場価格と完全に一致するものではなく、一定の簡便性を維持する必要があります。

今後も、不動産市場の動向を踏まえながら、制度と実務のバランスをどのように保つかが重要な課題となるでしょう。


結論

タワーマンションの評価見直しは、不動産評価制度と市場価格との関係を改めて問い直す契機となりました。

相続税評価は統一的な課税基準として設計されていますが、市場価格との乖離が大きくなる場合には制度の調整が行われることもあります。

貸家建付地評価も含め、不動産評価の仕組みは日本の税制の中で長い歴史を持つ制度です。その背景を理解することで、相続税評価の考え方をより立体的に見ることができます。


参考

税のしるべ
品川芳宣「続・傍流の正論~税相を斬る 第82回 最判にも疑義③『空室』の価値」
2026年3月9日号

国税庁
財産評価基本通達

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