外国人旅行者向け消費税免税制度は、訪日観光の拡大とともに急速に利用が広がってきました。
訪日外国人旅行者はコロナ禍前の2019年に3,000万人を超え、インバウンド消費は日本経済の重要な柱の一つとなっています。
こうした中、外国人旅行者向け免税制度は、小売業や観光業にとって重要な政策手段として機能してきました。
しかしその一方で、制度の不正利用が問題となり、制度の信頼性を揺るがす事例も報告されるようになりました。
令和8年11月からリファンド方式へ移行する背景には、こうした不正利用への対応という側面があります。
本稿では、外国人旅行者向け免税制度においてなぜ不正利用が問題となったのか、その構造的な背景を整理します。
従来の免税制度の仕組み
従来の外国人旅行者向け免税制度では、免税店が外国人旅行者に対して消費税を免除して商品を販売する仕組みでした。
制度の基本構造は次の通りです。
- 外国人旅行者が免税店で商品を購入する
- 免税店は税抜価格で販売する
- 商品は日本国外へ持ち出すことが前提となる
この制度は、外国人旅行者が日本で購入した商品を国外で消費する「輸出」とみなすことで、消費税を免除する仕組みです。
しかし、この制度は販売時点で免税が成立するため、商品が実際に国外へ持ち出されたかどうかを完全に確認することが難しいという問題がありました。
転売による不正利用
制度の不正利用として最も問題となったのが、免税商品を国内で転売するケースです。
例えば次のようなケースが報告されています。
- 外国人名義で大量に免税商品を購入する
- 商品を国内で転売する
- 消費税を負担せずに利益を得る
このような取引は、本来の制度趣旨である「国外消費」を前提とした免税制度と大きく異なります。
特に家電やブランド品など高額商品では、消費税分の価格差が大きくなるため、不正利用のインセンティブが生じやすいと指摘されてきました。
組織的な不正の問題
さらに問題となったのが、個人レベルを超えた組織的な不正です。
報道などでは、次のような事例が指摘されています。
- 転売目的の購入を組織的に行うグループ
- 外国人名義を利用した購入
- 免税購入商品を国内市場で販売
このようなケースでは、免税制度が事実上「国内転売のための税優遇」として利用されてしまうという問題がありました。
結果として、本来の制度趣旨から大きく逸脱した取引が生じることになります。
免税店側の管理の限界
免税制度の運用では、免税店にも一定の確認義務が課されています。
例えば
- 旅券の確認
- 購入記録の作成
- 商品の包装
などです。
しかし、実際に商品が国外に持ち出されたかどうかを店舗側が確認することはできません。
このため、制度の運用は基本的に旅行者の申告に依存する形となっていました。
インバウンド需要の急増により免税取引が拡大する中で、この仕組みには制度的な限界があると指摘されるようになりました。
リファンド方式導入の狙い
こうした課題を受けて導入されるのがリファンド方式です。
リファンド方式では、免税の成立を出国時の確認と結びつける仕組みになります。
具体的には
- 商品は税込価格で販売
- 出国時に税関で持出確認
- 確認後に消費税を返金
という流れになります。
この方式では、商品が国外に持ち出されたことを確認してから返金するため、転売などの不正利用を抑制する効果が期待されています。
また、欧州など多くの国ではこの方式が採用されており、日本の制度を国際的な標準に近づけるという意味もあります。
結論
外国人旅行者向け消費税免税制度は、インバウンド消費を促進する重要な制度です。
しかし、従来の制度は販売時点で免税が成立する仕組みであったため、転売などの不正利用が問題となりました。
特に、次のような構造的課題が指摘されてきました。
- 商品の国外持出を販売時点では確認できない
- 国内転売による不正利用の可能性
- 免税店の管理の限界
リファンド方式への移行は、こうした制度的な課題を解消するための改革といえます。
今後は、制度の適正な運用と訪日旅行者の利便性の両立が重要なテーマとなっていきます。
参考
税のしるべ
2026年3月9日
国税庁がリファンド方式の返金手続で情報等、返金対応の事業者一覧など案内
