赤字の製品は本当にやめるべきか――固定費回収という経営判断

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企業経営では、製品ごとの損益を確認したときに「この製品は赤字だから生産をやめるべきではないか」と考える場面が少なくありません。
損益計算書で営業利益がマイナスであれば赤字、プラスであれば黒字というのが一般的な理解です。

しかし実務では、赤字であるという理由だけで生産を停止する判断が常に正しいとは限りません。
むしろ、赤字であっても生産を続けたほうが企業全体の損失を小さくできるケースもあります。

その判断の鍵となるのが「固定費の回収」という考え方です。
この記事では、赤字製品の判断において重要となる「限界利益」と「固定費」の視点について整理します。


赤字にも種類がある

一般に、赤字か黒字かは損益計算書を見れば判断できます。
営業利益がプラスであれば黒字、マイナスであれば赤字です。

しかし、経営判断の観点では赤字にも性質の違いがあります。
大きく分けると次の二つです。

・生産をやめるべき赤字
・生産をやめるべきではない赤字

この違いを理解するためには、費用を「変動費」と「固定費」に分けて考える必要があります。


変動費と固定費の違い

企業の費用は大きく次の二つに分類できます。

変動費
生産量に応じて増減する費用
例:原材料費など

固定費
生産量に関係なく発生する費用
例:人件費、減価償却費、建物費など

例えば次のような製品を考えてみます。

・販売価格 2,000円
・原材料費 1,000円
・月間生産量 2,000個
・人件費 100万円
・減価償却費 150万円

この場合の損益は次のようになります。

売上    400万円
原材料費  200万円
人件費   100万円
減価償却費 150万円

結果として 50万円の赤字になります。

損益計算書だけを見ると、この製品は赤字製品ということになります。


限界利益という考え方

ここで重要になるのが「限界利益」という考え方です。

限界利益

売上 − 変動費

で計算されます。

この例では

2,000円 − 1,000円
1,000円

つまり、この製品を1個生産すると 1,000円の限界利益が生まれます。

月間の生産量2,000個で計算すると

1,000円 × 2,000個
200万円

つまり、この製品は 200万円分の固定費回収に貢献していることになります。


赤字でも生産を続ける理由

ここで固定費の視点を考えてみます。

固定費は、生産してもしなくても発生する費用です。
この例では固定費は合計 250万円です。

もし製品Aの生産を完全にやめた場合、どうなるでしょうか。

固定費250万円はそのまま残るため、
250万円の損失になります。

一方、生産を続ける場合は

固定費    250万円
限界利益   200万円

結果として

最終損失は50万円

にとどまります。

つまり、

赤字ではあるが、生産しないよりは損失が小さい

という状態です。


固定費を回収できるかが判断基準

このように考えると、赤字製品の判断基準は次のようになります。

限界利益がプラスであれば、生産は固定費の回収に貢献している

そのため、設備を売却できない場合や人員をすぐに削減できない場合には、生産を続けたほうが合理的な場合があります。

逆に、限界利益がマイナスであれば、製品を生産するほど損失が増えていきます。
この場合は、生産停止を検討する必要があります。


経営判断としてのもう一つの視点

さらに重要なのは、固定費の構造そのものです。

例えば

・生産量を増やす
・同じ設備で別の製品を作る

といった方法が取れれば、固定費をより多くの製品で分担することができます。

その結果、

製品1個当たりの固定費が下がり、黒字化する可能性

も生まれます。

つまり、赤字という結果だけを見て撤退を判断するのではなく、
固定費の回収構造をどう改善するかという視点が重要になります。


結論

赤字製品は、必ずしもすぐに生産をやめるべきとは限りません。

重要なのは次の二つの視点です。

・変動費と固定費を分けて考える
・限界利益が固定費の回収に貢献しているかを見る

企業の経営判断では、損益計算書の結果だけでは見えない構造があります。
固定費と限界利益の関係を理解することで、より合理的な意思決定が可能になります。

赤字という結果だけで判断するのではなく、その背景にあるコスト構造を見極めることこそが、経営管理における重要な視点といえるでしょう。


参考

企業実務 2026年3月号
猫と学ぶ「経理力」の磨き方 第3話 赤字の製品やのに、つくったほうがいいってほんま?

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