設備投資減税の実務――税額控除と即時償却はどちらが有利か

税理士
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政府は産業競争力強化法の改正により、大規模な設備投資を行う企業に対して税制上の優遇措置を設ける方針を示しました。
具体的には、投資額の7%を法人税から差し引く税額控除か、設備投資額を初年度に費用計上する即時償却のいずれかを選択できる制度が導入される予定です。

設備投資減税では、この二つの制度が選択制として設けられることが多く、どちらを選ぶべきかが実務上の論点となります。本稿では、税額控除と即時償却の仕組みと、それぞれが有利になるケースについて整理します。


税額控除の仕組み

税額控除は、計算された法人税額そのものを減額する制度です。

通常、法人税は課税所得に税率を掛けて計算されますが、税額控除ではその計算結果から一定額を直接差し引くことができます。

例えば、100億円の設備投資を行い、税額控除率が7%である場合には、7億円を法人税額から控除することができます。
この制度の特徴は、税額を直接減らす効果がある点にあります。

企業に十分な利益があり、法人税額が大きい場合には、税額控除のメリットは大きくなります。


即時償却の仕組み

即時償却は、設備投資額を初年度に全額費用計上できる制度です。

通常、設備投資は耐用年数に応じて減価償却を行います。
例えば、耐用年数10年の設備であれば、10年間にわたって費用を計上することになります。

しかし即時償却を適用すると、設備投資額を初年度に全額損金算入することができます。
これにより、当期の課税所得を大きく圧縮することが可能になります。

この制度は、将来ではなく現在の税負担を軽減する効果がある点が特徴です。


税額控除が有利になるケース

税額控除が有利になるのは、利益が十分に出ている企業です。

税額控除は法人税額から直接差し引く制度であるため、課税所得が大きく、法人税額が十分にある企業ほど制度のメリットを受けやすくなります。

また、税額控除は減価償却とは別に適用されるため、通常の減価償却による損金算入と税額控除の両方の効果を受けることができる場合もあります。

そのため、安定した利益を計上している企業では、税額控除の方が有利になるケースが多くなります。


即時償却が有利になるケース

即時償却が有利になるのは、利益の変動が大きい企業や、将来の利益が不透明な企業です。

即時償却は初年度の課税所得を大きく減らすことができるため、設備投資を行った年度の税負担を抑える効果があります。

また、税額控除には控除限度額が設けられることがありますが、即時償却では課税所得がある限り損金算入が可能です。

さらに、資金繰りの観点からも、初年度の税負担を軽減できる即時償却を選択する企業もあります。


実務での判断ポイント

実務上は、税額控除と即時償却のどちらが有利かを単純に判断することはできません。

企業の利益水準、将来の業績見通し、投資規模、税額控除の限度額などを総合的に検討する必要があります。

特に近年は、大規模投資が半導体やデータセンターなどの分野で増えており、投資額が巨額になるケースも少なくありません。こうした場合には、税制措置の違いが投資採算に影響することもあります。

そのため、設備投資の計画段階から税制の適用可能性を検討することが重要になります。


結論

設備投資減税では、税額控除と即時償却という二つの制度が用意されることが多く、企業は自社の状況に応じて選択することになります。

税額控除は利益が安定している企業に適しており、即時償却は初年度の税負担を抑えたい企業に適している場合があります。

設備投資は企業の将来の競争力を左右する重要な意思決定です。税制優遇をどのように活用するかは、企業経営にとって重要な検討事項となります。


参考

日本経済新聞
2026年3月7日朝刊
設備投資で減税、法案を閣議決定 7%税額控除など

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