α世代と老後世代の価値観の違いは、生活スタイルや人間関係だけでなく、「お金」の捉え方にも色濃く表れます。
特に年金、NISA、相続といった制度は、両世代で前提の置き方が大きく異なり、家族内でも認識のズレが生じやすい分野です。
本稿では、α世代と老後世代がそれぞれどのような前提でお金を見ているのかを整理し、今後求められる考え方の再設計について考えます。
老後世代にとっての「お金」と制度
老後世代が人生設計を行ってきた時代は、「制度への信頼」が前提にありました。
- 公的年金は老後生活の柱
- 退職金は一時金として受け取り、貯蓄で管理
- 貯金をしていれば将来は安定する
- 相続は財産を残す行為そのものに意味がある
年金は「もらえるもの」、相続は「残すもの」という認識が自然に形成されてきました。
制度は大きく変わらず、個人はその枠組みの中で最適解を探すという発想です。
α世代にとっての「お金」の前提
一方、α世代は制度が頻繁に見直される社会を前提に育っています。
- 年金制度は将来どうなるかわからない
- 国の制度だけに頼るのはリスク
- お金は貯めるだけでなく動かすもの
- 価値は固定されず変化する
α世代にとって、年金は「不確実な将来の選択肢の一つ」に過ぎません。
そのため、早い段階から資産形成や投資という考え方に触れることに抵抗が少ない傾向があります。
年金をどう捉えるかのズレ
老後世代は、年金を「生活費のベース」として考えます。
一方、α世代は、年金を「あるかもしれない収入」として認識する傾向があります。
このズレは、次のような会話のすれ違いを生みやすくします。
- 老後世代:「年金があるから大丈夫」
- α世代:「本当に将来も同じ水準でもらえるのか」
どちらが正しいという話ではなく、制度に対する信頼の置き方が違うことが背景にあります。
NISAに対する世代間の見え方
NISAは、世代間の価値観の違いが最も表れやすい制度の一つです。
老後世代にとってNISAは、
「余裕資金で行うもの」「価格変動が怖いもの」という位置づけになりがちです。
一方、α世代にとってNISAは、
「制度が用意された以上、使わない理由がないもの」
「長期で使う前提のインフラ」に近い感覚です。
この違いは、投資に対するリスク許容度の差というより、
「制度が今後も使えるかどうか」という信頼の方向性の違いともいえます。
相続に対する意識の変化
老後世代にとって相続は、
「自分が築いた財産を子や孫に引き継ぐ行為」
という意味合いが強いものでした。
しかしα世代にとって相続は、
「管理や手続きの負担を伴う出来事」
として認識されることが増えています。
不動産、金融資産、デジタル資産など、相続財産は複雑化しています。
単に財産を残すことよりも、
- 何がどこにあるのか
- どう使ってほしいのか
- 管理の手間はどれくらいか
といった情報の整理が、価値を持つ時代になっています。
「残す」から「つなぐ」へ
α世代と老後世代の間で重要なのは、
相続を「お金を残す行為」から「意思をつなぐ行為」へと捉え直すことです。
- 老後世代は、自分の価値観を言語化する
- α世代は、受け取る側としての現実を伝える
この対話がないまま制度や手続きだけを進めると、
善意が負担に変わる可能性もあります。
世代間で共有すべき視点
年金・NISA・相続はいずれも、「どの世代にも正解が一つではない制度」です。
だからこそ重要なのは、
- 制度は変わる前提で考える
- 役割を固定しない
- 情報を共有し続ける
という姿勢です。
α世代が制度を使いこなし、
老後世代が経験を言葉として残す。
その両立ができてこそ、世代間の不安は軽減されていきます。
おわりに
α世代と老後世代の間にあるのは、「お金に対する価値観の対立」ではありません。
制度が安定していた時代と、制度が変わり続ける時代の違いです。
年金も、NISAも、相続も、
一方の世代だけで完結するものではなく、世代をまたいで設計されるものです。
その前提に立った対話こそが、これからの日本社会にとって最も重要なお金のテーマなのかもしれません。
参考
・日本経済新聞「〈α-20億人の未来〉α世代、超スマート社会をけん引」
・世代間資産移転・金融行動に関する各種報道・研究
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
