電子帳簿保存法(以下、電帳法)の改正により、領収書や請求書を紙で保存する必要がなくなり、
スキャンやデータのまま保存できる時代になりました。
2024年からは「電子取引データの電子保存」が原則義務化され、クラウド会計システムの活用が一層重要になっています。
本稿では、弥生・freee・マネーフォワードなど主要クラウド会計サービスを活用した電子帳簿保存法対応の実務と、
ペーパーレス経理を円滑に進めるポイントを整理します。
1.電子帳簿保存法の基本理解
電子帳簿保存法は、国税関係書類を「電子的に保存してもよい」と定める法律です。
主な対象は、
(1) 電子帳簿・書類(会計帳簿や決算書など)
(2) スキャナ保存(紙の領収書や請求書を画像で保存)
(3) 電子取引データ(メールやクラウド上で受け取る請求書・領収書等)
の3区分です。
特に(3)電子取引データについては、2024年1月以降は紙に印刷しての保存が認められず、
電子データのまま保存することが義務化されました。
このため、クラウド会計ソフトが備える「証憑管理機能」を活用することが不可欠です。
2.クラウド会計ソフトによる対応状況
弥生会計オンラインは、「スマート証憑管理」を提供し、レシートをスマホ撮影すると自動的に取引と紐づけて保存します。
電子帳簿保存法に必要な「タイムスタンプ付与」や「検索要件(取引日・金額・取引先)」も自動で満たせます。
freeeは、アップロードした請求書やレシートにAIが日付・金額・取引先を読み取り、
自動で仕訳と連携する仕組みです。クラウド上での保存期間設定(7年/10年)にも対応しています。
マネーフォワードクラウド会計では、「証憑管理」と「電子帳簿保存法対応設定」を連動でき、
電子取引データの改ざん防止措置(ログ管理・操作履歴保存)も標準装備されています。
いずれのソフトも、電子取引データの保存義務に対応しており、
「請求書をPDFで受け取ったら、ソフトに直接アップロードする」運用が理想的です。
3.ペーパーレス経理の進め方
ペーパーレス化を成功させるには、まず社内ルールを整備することが大切です。
たとえば、
- レシートは撮影して即日クラウド保存
- 電子請求書はメール添付のままソフトにアップロード
- 紙書類は一定期間後に破棄(スキャン保存済みを確認後)
といったルールを明文化します。
また、クラウド保存時には「ファイル名の統一(例:2025-04-15_株式会社ABC_請求書)」を行うことで、
後の検索効率が大幅に向上します。
電帳法の「検索要件(取引年月日・金額・取引先)」は、クラウド会計ソフトが自動でタグ付けしてくれるため、
利用者側の手間は最小限です。紙で管理していた時代と比べ、紛失や劣化のリスクも激減します。
4.導入時の注意点
ペーパーレス化を進める際に注意すべきは、データの保存場所と責任の所在です。
クラウド上にデータを保存する場合でも、保存義務は事業者本人にあります。
「クラウドに預けたから安心」と思い込まず、定期的にバックアップをダウンロードしておくことが望ましいです。
また、電子帳簿保存法の要件を満たすためには、社内運用ルールの整備記録(運用マニュアル・保存責任者の指定)も有効です。
5.事例紹介
個人事業主Cさん(デザイン業)は、freeeを利用してすべての請求書・領収書を電子化しました。
以前は段ボール数箱分の書類を保管していましたが、現在はすべてクラウドに保存し、
税理士もオンラインで帳簿・証憑を同時に確認できるようになりました。
確定申告時の提出資料準備にかかる時間は、前年の3分の1に短縮されたといいます。
結論
電子帳簿保存法への対応は、単なる法令順守にとどまらず、
「ペーパーレス経理への転換」を加速させる大きなチャンスです。
クラウド会計システムを活用すれば、電子取引データの保存から仕訳・証憑連携までを一元管理でき、
経理業務の効率化と透明性の両立が可能になります。
個人事業主にとっても、今後の会計・税務の標準形は「クラウド+ペーパーレス」です。
早期導入が、将来の事務負担軽減と税務調査対応力の強化につながります。
出典
・国税庁「電子帳簿保存法一問一答(令和6年改正版)」
・弥生株式会社「スマート証憑管理」
・freee株式会社「電子帳簿保存法対応のご案内」
・マネーフォワード株式会社「証憑管理・電子保存機能」
・中小企業庁「デジタル化推進ハンドブック」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
