クラウド会計の自動仕訳とAI連携の実際― 経理効率化を支えるテクノロジー ―(クラウド会計②)

会計
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クラウド会計の最大の魅力は「自動仕訳」にあります。
従来の手入力中心の経理業務では、銀行明細やレシートを一つずつ仕訳していましたが、
いまやAIが内容を自動判定し、勘定科目を提案する時代です。
この仕組みをうまく活用すれば、経理作業の大幅な効率化が可能です。
本稿では、弥生・freee・マネーフォワードのAI連携機能を中心に、実務上の活用ポイントと注意点を解説します。

1.自動仕訳の基本メカニズム

クラウド会計ソフトでは、銀行口座やクレジットカードと連携すると、取引明細データが自動的に取得されます。
AIは明細の文言を解析し、過去の登録履歴や一般的な勘定科目の傾向を学習して仕訳を自動生成します。
たとえば「Amazon」「ENEOS」「セブン銀行」といったキーワードをもとに、勘定科目や摘要を自動で割り当てるのです。
学習データが蓄積するほど精度が高まり、同様の取引は将来的にほぼ完全自動化できます。

2.主要サービスのAI機能比較

弥生会計オンラインは「スマート取引取込」機能を搭載し、AI OCRで領収書を読み取って自動仕訳します。
税理士・会計事務所との連携機能も堅牢で、チェック・修正がしやすい点が強みです。

freeeは、AI学習に基づく自動推定精度が高く、レシートをスマホで撮影すれば即時に仕訳候補を提示します。
また「取引ルールの自動学習」により、同じ店舗・金額の取引が続くと自動で処理ルールを作成してくれます。

マネーフォワードクラウド会計は、銀行・カード・電子マネーとの連携が幅広く、AIによる「摘要学習」機能が充実しています。
ユーザーが修正した履歴を学習し、次回から自動で適切な勘定科目を提案するようになります。

3.AI連携で広がる業務効率化

AI連携の効果は単なる仕訳自動化にとどまりません。
請求書の自動読み取り、レシートのOCR処理、電子帳簿保存法対応の証憑管理などが一体化することで、
「記帳・証憑・申告」のすべてがクラウドで完結します。
特にfreeeやマネーフォワードは電子帳簿保存法に対応したスキャン保存機能を備え、
領収書の原本を保存せずに済む環境を提供しています。
これにより、個人事業主でもペーパーレス経理が現実的になりました。

4.自動化の限界と注意点

AI仕訳は万能ではありません。
摘要に曖昧な表現が含まれる場合や、複合的な取引(たとえば事業とプライベートの混在支出など)では誤判定が起こります。
また、AIが提案した仕訳をすべて自動承認してしまうと、誤分類が蓄積し帳簿全体の精度を損なうおそれがあります。
実務的には「AIに任せきりにせず、月次で人が確認する」運用が最も効果的です。
加えて、金融機関とのAPI仕様変更やメンテナンスにより、データ連携が一時的に停止するケースもあるため、
重要な時期(決算期や申告前)は手動取込も視野に入れるべきです。

5.導入事例

飲食店を経営する個人事業主Bさんは、レジ売上をマネーフォワードクラウドに自動連携し、
経費はクレジットカード明細から自動仕訳する運用に切り替えました。
導入前は月20時間かかっていた経理作業が、現在は週1回のチェックで済むようになったといいます。
一方、AI仕訳の誤判定を防ぐため、税理士に月1回オンラインで帳簿を確認してもらう体制を整えています。
AIと人の分業が、安定した運用の鍵といえるでしょう。


結論

クラウド会計のAI機能は、単なる作業効率化のツールではなく、
「経営データをリアルタイムに活かすためのパートナー」として進化しています。
ただし、AIに任せる範囲と人が確認すべき範囲を明確に区分することが重要です。
自動化の恩恵を最大限に引き出すためには、AIを使いこなす「デジタル経理リテラシー」が欠かせません。
次回は、電子帳簿保存法対応や領収書管理のクラウド運用について取り上げます。


出典

・弥生株式会社「スマート取引取込」解説ページ
・freee株式会社「AI自動仕訳と取引ルール学習」
・マネーフォワード株式会社「自動仕訳・摘要学習機能」
・国税庁「電子帳簿保存法Q&A」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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