確定申告の電子化は年々進化し、2026年にはいよいよ「原則電子申告」の時代を迎えます。
マイナンバーカード、マイナポータル連携、クラウド会計の普及により、
個人事業主や副業者でもオンライン完結が標準になります。
本稿では、電子申告完全移行に向けた制度の概要と、紙申告派が今から備えておくべき実務対応を解説します。
電子申告義務化の背景
電子申告(e-Tax)は2004年に始まり、20年以上かけて制度が整備されてきました。
これまで法人や一定規模以上の個人事業主に義務化されてきましたが、
令和7年度税制改正(2024年12月公表)では、次のような方針が明確に示されました。
「2026年(令和8年)以降、原則として個人の所得税申告についても電子的提出を基本とする」
つまり、これまで紙で提出していた個人事業主や副業者も、原則としてe-Taxを利用する方向になります。
電子申告義務化の範囲
電子申告義務の対象は、段階的に拡大される見通しです。
| 区分 | 現行(2024年) | 2026年以降(予定) | 
|---|---|---|
| 法人 | 資本金1億円超は義務 | 全法人が原則e-Tax | 
| 個人事業主 | 青色申告は推奨・任意 | 原則電子申告(例外あり) | 
| 副業・雑所得 | 任意(紙申告可) | 一部を除き電子化対象 | 
| 税理士代理申告 | 電子申告義務あり | 継続義務 | 
ただし、システム障害・災害・高齢者など、一定の事情がある場合には紙申告も認められます。
電子申告の主な方式
e-Taxの利用方式は、納税者の環境に合わせて選択できます。
| 方式 | 利用方法 | 特徴 | 
|---|---|---|
| マイナンバーカード方式 | PCまたはスマホ+カードリーダー | セキュリティが高く、最も一般的 | 
| ID・パスワード方式 | 税務署で事前発行されたIDを使用 | 手軽だが、段階的に縮小予定 | 
| 税理士代理方式 | 税理士が代理送信 | 書類提出不要、電子署名省略可 | 
マイナンバーカード方式はスマートフォン対応が進み、カードリーダーが不要な環境も整っています。
電子申告に必要な準備
電子申告を行うには、次の5つのステップを押さえておくとスムーズです。
- マイナンバーカードの取得
自治体で申請(所要1〜2か月)。暗証番号(4桁)を設定。 - パソコン・スマホの環境整備
WindowsまたはMac、スマホの場合はマイナポータルアプリを利用。 - 会計ソフトの導入
弥生、freee、Money Forwardなどのクラウド会計が推奨。e-Tax連携機能を確認。 - マイナポータルとの連携設定
控除証明書・寄附金情報などを自動取得。 - e-Tax送信テスト
初回利用時は動作確認と暗証番号入力テストを行う。 
これらを事前に済ませておけば、申告期間(2月16日~3月15日)に慌てることはありません。
電子申告のメリット
- 添付書類の省略
生命保険料控除・医療費控除などの証明書を電子データで送信可能。 - 還付スピードの短縮
紙申告よりも2〜3週間早く還付されるケースが多い。 - 控除拡大
青色申告特別控除65万円の条件に「e-Tax提出」が含まれる。 - 履歴管理の容易さ
過去の申告データがマイナポータルや会計ソフトで確認可能。 - ペーパーレス化
領収書・証明書の電子保存と連動し、事務負担を軽減。 
紙申告派が注意すべきこと
紙申告は今後も完全廃止ではありませんが、次のような不利点が増していきます。
- 青色申告特別控除が55万円止まり(電子申告は65万円)
 - 控除証明書の添付が必要(電子は自動送信)
 - 還付金の入金が遅い
 - 確認・修正に時間がかかる
 - 税務署窓口の混雑・受付制限
 
今後、紙提出の受付時間帯制限や電子申告優先窓口の導入が進む見込みです。
中小事業者・副業者の対応ポイント
- クラウド会計の導入(弥生・freee・MF)で自動e-Tax連携を確保
 - マイナポータル連携による控除自動反映を設定
 - 会計帳簿を電子保存対応に切り替え(電子帳簿保存法準拠)
 - スマホからの簡易申告機能を習得(国税庁アプリ「スマホ申告」)
 
とくに副業者・フリーランスは、電子申告化によって「確定申告=オンライン完結」が前提になります。
紙中心のやり方を続けると、控除・手続き両面で不利益を被る可能性があります。
結論
2026年の電子申告完全移行は、単なる制度変更ではなく、
「税務とデジタル行政の一体化」を象徴する大きな転換点です。
早めにマイナンバーカードとマイナポータル連携を整え、
会計ソフト・電子帳簿保存を含めたデジタル経理環境への移行を進めることが、
次世代の確定申告に対応する最善の準備になります。
「紙で慣れているから」ではなく、「データで正確に管理する」へ――。
税務の未来は、すでにオンラインにあります。
出典
・国税庁「e-Taxの概要」
・デジタル庁「マイナポータルと電子申告の連携」
・中小企業庁「クラウド会計導入支援ガイド」
・令和7年度税制改正大綱(2024年12月)
・総務省「行政手続きオンライン化の推進」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
  
  
  
  