海外のネットショップで数千円の商品を購入した経験がある方は多いのではないでしょうか。
近年、越境ECの普及によって、海外から少額の商品を購入することが日常的になりました。しかし、その一方で従来の税制には大きな課題が生じています。
その一つが「少額輸入免税制度」です。
令和8年度税制改正では、この制度の見直しが盛り込まれました。
今回は、少額輸入免税制度の仕組みと、なぜ見直しが必要になったのかについて解説します。
少額輸入免税制度とは何か
海外から商品を輸入する場合、通常は消費税が課税されます。
しかし、一定金額以下の商品については、課税手続きにかかる行政コストとのバランスを考え、消費税を免除する制度が設けられていました。
これが「少額輸入免税制度」です。
制度が創設された当時は、海外通販そのものがそれほど一般的ではなく、輸入件数も限られていました。
そのため、行政コストを抑える合理的な制度として機能していました。
制度を取り巻く環境は大きく変わった
ところが現在では状況が大きく変化しています。
海外のECサイトや通販アプリの普及により、小口商品の輸入は爆発的に増加しました。
以前は一部の人だけが利用していた海外通販が、今では誰でも気軽に利用できるサービスになっています。
制度が作られた時代と現在では、取引件数も市場規模も大きく異なっているのです。
国内事業者との不公平が生じている
今回の見直しの最大の理由は、公平な競争環境を確保することです。
国内の店舗で購入すれば消費税が課税されます。
一方で、海外から少額の商品を輸入すると、制度によっては消費税負担が軽くなる場合があります。
同じ商品を販売していても税負担に差が生じれば、国内事業者にとって不利な競争となります。
税制は市場の競争条件をできるだけ公平にすることも重要な役割です。
そのため、現在の経済環境に合わせて制度を見直す必要が生じました。
海外でも制度改革が進んでいる
この問題は日本だけではありません。
欧州連合(EU)をはじめ、多くの国では少額輸入免税制度を見直し、海外事業者にも適正な課税を行う仕組みへ移行しています。
インターネット取引には国境がありません。
一国だけ制度が甘ければ、その国が課税逃れの拠点となる可能性もあります。
日本も国際的な制度改革の流れに合わせて対応を進めているのです。
消費者への影響はあるのか
制度が見直されれば、一部の商品では価格が変わる可能性があります。
これまで税負担が軽かった商品でも、今後は消費税が反映されるケースが増えることが考えられます。
一方で、国内事業者との価格差が縮まり、公平な競争環境が整うことにもつながります。
消費者にとっては価格だけでなく、品質や保証、配送、アフターサービスなども含めて商品を選ぶ時代になっていくでしょう。
事業者が備えておくべきこと
海外との取引を行う事業者は、今後の制度変更を十分に把握しておく必要があります。
特に、
- 海外から商品を仕入れる事業者
- 越境ECを利用して販売する事業者
- 海外マーケットプレイスを活用する事業者
は、税務だけでなく販売価格や利益率への影響も確認しておくことが重要です。
制度改正は税金だけの問題ではなく、経営戦略そのものに影響を及ぼす可能性があります。
結論
少額輸入免税制度は、海外通販が一般的ではなかった時代に作られた制度です。
しかし、越境ECが急速に普及した現在では、国内事業者との競争条件や税負担の公平性を見直す必要が生じています。
令和8年度税制改正は、こうした経済環境の変化に対応するための重要な一歩といえるでしょう。
今後は、国内外を問わず公平な課税を実現する方向へ制度がさらに整備されていくことが予想されます。
参考
令和8年度税制改正の実務ポイント 第4 消費税・自動車税・防衛税・地方税・納税環境整備(税理士・公認会計士 長谷川敏也 講義資料)