インボイス制度の導入によって、免税事業者との取引は大きな転換点を迎えました。
制度開始直後は急激な影響を避けるため、免税事業者からの仕入れについても一定割合の仕入税額控除が認められる経過措置が設けられています。しかし、この経過措置も永続的なものではありません。
令和8年度税制改正では、この経過措置の内容が見直され、控除割合や適用期間が変更されました。
今回は、免税事業者との取引に関する経過措置の見直しと、今後の実務への影響について解説します。
なぜ経過措置が設けられたのか
本来、仕入税額控除を受けるためには、適格請求書(インボイス)の保存が必要です。
しかし、免税事業者はインボイスを発行できません。
そのため、制度開始と同時に控除を全面的に認めなくすると、多くの中小企業や個人事業者に大きな影響が及ぶことが懸念されました。
そこで導入されたのが経過措置です。
一定期間に限り、免税事業者からの仕入れについても一定割合の仕入税額控除を認めることで、制度変更による混乱を和らげる目的があります。
令和8年度改正で何が変わるのか
今回の改正では、経過措置そのものは維持されますが、その適用期間が見直されました。
資料によれば、控除割合を段階的に縮小する方向は維持しつつ、小規模な国内事業者への配慮から最終的な適用期限を2年間延長することとなりました。
具体的には、
- 控除割合70%
- 控除割合50%
- 控除割合30%
という段階を経ながら、最終的には制度本来の姿へ移行することになります。これにより、事業者は経理体制を整備する時間をより確保できるようになりました。
制度の公平性も重視された改正
今回の改正では、単なる延長だけではありません。
資料では、この経過措置が本来想定されていなかった取引にも利用され、制度の趣旨を超えた活用が見られることが課題として挙げられています。
そのため、適切な支援は継続しつつ、不適切な利用を防ぐための見直しも同時に進められました。
税制は「負担軽減」と「公平性」の両立が求められます。
今回の改正は、そのバランスを意識した内容になっているといえるでしょう。
取引先との関係にも影響する
インボイス制度は、自社だけの問題ではありません。
仕入先が免税事業者か、課税事業者かによって、将来の消費税負担が変わる可能性があります。
そのため、
- 取引先がインボイス登録事業者か確認する
- 将来の制度変更を共有する
- 必要に応じて契約内容を見直す
といった対応が重要になります。
特に長年の取引先が免税事業者である場合は、一方的な対応ではなく、お互いに制度を理解した上で話し合う姿勢が求められます。
税理士が果たすべき役割
今回の改正では、顧問先への説明もこれまで以上に重要になります。
「経過措置が延長されたから安心」という説明だけでは不十分です。
むしろ、
- いつまで利用できるのか
- 将来はどのような負担になるのか
- 取引先への影響はあるのか
- 経理体制をいつまでに整備すべきか
といった中長期的な視点から助言することが求められます。
制度の変更点だけではなく、その先にある経営への影響まで伝えることが、これからの税理士の重要な役割になるでしょう。
今後の経営で意識したいこと
経過措置は時間的な猶予を与える制度です。
だからこそ、その期間を有効に活用することが重要です。
帳簿管理の精度を高めることはもちろん、会計ソフトの導入や経理業務の見直しなど、将来を見据えた投資も検討する価値があります。
制度が本格運用へ移行した後に慌てるのではなく、経過措置の期間中に準備を進めることが、結果として事業の安定につながります。
結論
令和8年度税制改正では、免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除の経過措置について、小規模事業者への配慮から適用期間が延長されました。
一方で、控除割合は段階的に縮小され、最終的には本来のインボイス制度へ移行する方向性は変わっていません。
経過措置は「猶予期間」であり、「恒久措置」ではありません。この期間を活用して経理体制を整え、制度変更に備えることが、これからの事業経営において大切なポイントになるでしょう。
参考
令和8年度税制改正の実務ポイント 第4 消費税・自動車税・防衛税・地方税・納税環境整備(税理士・公認会計士 長谷川敏也 講義資料)