「便利な街」と聞くと、多くの人は、
- 大型商業施設がある
- 店が多い
- 電車が頻繁に来る
- 24時間営業の店がある
- 何でもすぐ手に入る
といった都市を思い浮かべるかもしれません。
しかし人口減少社会では、「便利さ」の意味そのものが変わり始めています。
人口が増え続ける時代には、都市は拡大するほど効率的でした。しかし人口減少時代には、広がり過ぎた都市構造そのものが維持困難になっていきます。
これから必要なのは、「巨大さ」ではなく、「生活密度」という視点なのかもしれません。
高度成長期は「拡大する街」が正しかった
高度経済成長期、日本の都市は急速に膨張しました。
人口増加と所得上昇を背景に、
- 郊外住宅地
- 幹線道路
- 大型ショッピングセンター
- 自動車前提社会
が広がっていきました。
この時代は、「広く作るほど便利になる」時代でした。
道路を増やし、郊外を開発し、大型店舗を誘致すれば、都市は成長したのです。
しかし人口減少で前提が崩れた
ところが現在、日本は人口減少局面に入りました。
特に地方では、
- 若年人口減少
- 高齢化
- 空き家増加
- 公共交通衰退
- インフラ老朽化
が同時進行しています。
ここで問題になるのが、「広がり過ぎた都市」です。
インフラ維持コストが限界に近づく
都市が広がるほど、
- 道路
- 水道
- 下水道
- 電線
- バス路線
- 除雪
- 消防
- ごみ収集
などの維持コストが増えます。
人口が増えている間は税収で支えられました。
しかし人口減少が進むと、一人あたり負担は急激に重くなります。
つまり人口減少時代では、「低密度都市」が非効率化していくのです。
「便利さ」の本質は何か
ここで改めて考えるべきなのが、「便利な街」とは何かです。
例えば郊外型社会では、
- 車があれば便利
でした。
しかし、
- 高齢化
- 免許返納
- ガソリン高
- 公共交通縮小
が進むと、この前提が崩れます。
すると重要になるのは、
「遠くに巨大施設があること」
ではなく、
「近くに生活機能があること」
です。
生活密度という考え方
人口減少時代の便利さとは、「生活密度」の高さとも言えます。
生活密度とは、日常生活に必要な機能が、歩ける範囲にどれだけ集積しているかという概念です。
例えば、
- スーパー
- 病院
- 薬局
- 公共交通
- 行政窓口
- 図書館
- 福祉施設
- 公園
- コミュニティ空間
などです。
これらが徒歩圏にある街は、高齢化が進んでも暮らしやすさを維持できます。
「車がないと生きられない街」のリスク
地方では現在、「自動車依存都市」が広がっています。
しかしこれは裏返せば、
「車を失うと生活できない」
ということでもあります。
特に高齢者では、
- 免許返納
- 認知機能低下
- 運転不安
によって移動力が急低下します。
すると、
- 買い物難民
- 通院困難
- 社会的孤立
が発生します。
つまり人口減少時代の都市問題は、「移動問題」でもあるのです。
コンパクトシティはなぜ必要なのか
そこで近年注目されているのが「コンパクトシティ」です。
これは単なる都市縮小ではありません。
生活機能を集約し、
- 公共交通
- 医療
- 商業
- 行政
を一定範囲に集中させる考え方です。
目的は、「人口減少でも持続可能な都市」を作ることです。
ただし「集約」には痛みもある
しかしコンパクトシティには難しさもあります。
集約とは裏返せば、
- 維持を諦める地域
が出るということです。
例えば、
- バス路線廃止
- 学校統廃合
- 病院集約
- インフラ縮小
などです。
つまり人口減少社会では、「全部を維持する」ことが難しくなります。
これは非常に重い問題です。
便利さは「選択肢の多さ」ではなくなる
高度成長期の便利さは、
- 店が多い
- 商品が多い
- サービスが多い
という「選択肢の多さ」でした。
しかし人口減少時代では、
- 最低限の生活が維持できる
- 歩いて暮らせる
- 孤立しにくい
- 移動負担が少ない
という「生活維持能力」の方が重要になります。
つまり便利さの定義そのものが変わるのです。
「生活密度」が高い街ほど強い
今後の都市では、
- 人口規模
- 商業規模
- 地価
だけではなく、
「生活密度」
が重要な都市競争力になる可能性があります。
例えば、
- 小さくても暮らしやすい街
- 歩いて完結する街
- 高齢者が移動しやすい街
- 人と接触機会がある街
は、人口減少時代に強みを持ちます。
逆に、
- 広がり過ぎた都市
- 車依存が強すぎる都市
- インフラ維持負担が大きい都市
は、持続可能性が低下していく可能性があります。
都市は「拡大競争」から「維持競争」へ
これからの都市政策は、
「どれだけ成長するか」
ではなく、
「どれだけ持続できるか」
へ変わっていきます。
これは都市の成熟化とも言えます。
人口減少社会では、「巨大都市化」が必ずしも正解ではありません。
むしろ、
- 小さくても維持できる
- 高齢化に耐えられる
- 移動しやすい
- 孤立しにくい
という都市設計が重要になります。
結論
人口減少時代の「便利な街」とは、単に大型施設が多い街ではありません。
本当に重要になるのは、
- 歩いて暮らせること
- 生活機能が近いこと
- 高齢化に対応できること
- 孤立しにくいこと
- 持続可能なインフラを持つこと
です。
これからの都市は、「拡大する都市」から、「生活密度を高める都市」へ転換していく必要があります。
人口減少時代の便利さとは、「何でもある街」ではなく、「無理なく暮らし続けられる街」なのかもしれません。
参考
・国土交通省「コンパクトシティ政策関連資料」
・総務省「人口減少社会に関する統計」
・国立社会保障・人口問題研究所 将来人口推計
・日本経済新聞 各種地方都市・インフラ関連記事
・国土交通省「立地適正化計画制度」