新NISA開始以降、日本では「投資ブーム」が続いています。
特に人気を集めているのが、
- S&P500連動型
- オール・カントリー型
- NASDAQ100型
など、米国株を中心とした投資信託です。
背景には、
「長期なら米国株」
「積立なら安心」
「オルカンなら分散」
「新NISAなら非課税」
という認識があります。
実際、ここ数年は多くの個人投資家が成功体験を積みました。
しかし、そのリターンの中身を冷静に見ると、実は“株価上昇”だけではありません。
大きな役割を果たしていたのが「円安」です。
つまり、多くの新NISA投資家は、
「米国株に投資していた」
だけでなく、
「ドル買い・円売り」
にも結果的に賭けていたのです。
そして現在、市場では徐々に
「もし円高になったらどうなるのか」
というテーマが意識され始めています。
本記事では、新NISA時代に見落とされがちな「為替リスク」について整理します。
新NISAブームは「円安ブーム」でもあった
2022年以降、日本では急速な円安が進みました。
1ドル=150円台後半まで円安が進行し、日本人の海外投資リターンを大きく押し上げました。
例えば、
- 米国株が10%上昇
- 同時に円が10%下落
した場合、日本円ベースでは20%近いリターンになります。
つまり、多くの投資家は
「米国株が強かった」
以上に、
「円が弱かった」
恩恵を受けていたのです。
実際、新NISA口座では、
- オルカン
- S&P500
- NASDAQ100
など、ドル建て資産への資金流入が集中しました。
これは裏を返せば、日本の個人金融資産が急速に「ドル依存化」していることも意味します。
多くの投資家は「為替リスク」を実感していない
株価変動は目に見えます。
しかし為替変動は、意外と実感されにくい特徴があります。
例えば、投資信託の基準価額が下がった場合、多くの人は
「米国株が下がった」
と考えます。
しかし実際には、
- 株価要因
- 為替要因
の両方が混ざっています。
特に近年は円安効果が大きすぎたため、
「米国株投資=必ず増える」
ような感覚を持った投資家も少なくありません。
しかし為替は、本来極めて変動が大きい資産です。
しかも為替は、株式以上に「政策」に左右されます。
円高はなぜ起こるのか
現在、多くの個人投資家は
「円安が普通」
と感じ始めています。
しかし歴史的には、むしろ日本は長期間“円高国家”でした。
では、どのような時に円高が起きるのでしょうか。
代表的なのは次のような局面です。
- 米国景気後退
- FRB利下げ
- 世界的リスクオフ
- 日本の金利上昇
- エネルギー価格下落
- 米国株急落
特に重要なのは、「米国株安」と「円高」が同時に起こりやすい点です。
これは過去にも繰り返されてきました。
金融危機時には、世界中の投資家がリスク資産を売却し、円買いが進みやすくなります。
つまり日本人投資家にとっては、
「株安+円高」
という二重の逆風が発生しやすいのです。
「オルカンだから安心」は本当なのか
現在、新NISAで人気のオルカンは「全世界分散」と呼ばれています。
しかし実際には、米国株比率が6割超を占めています。
しかも、その中身は大型テック株への集中が進んでいます。
つまり、
「オルカン=世界分散」
というより、
「実質的な米国・ドル集中投資」
の側面が強いのです。
加えて、多くの投資家は為替ヘッジなし商品を選択しています。
これは円安時には有利ですが、円高局面では大きな下押し要因になります。
例えば、
- 米国株が横ばい
- 円が20%上昇
した場合、日本円ベースでは大幅なマイナスになります。
つまり、「株が下がらなくても損失が出る」ことがあり得るのです。
積立投資は「万能」ではない
新NISAでは、
「長期積立なら安心」
という説明が非常に多く見られます。
確かに長期積立には合理性があります。
しかし、それは
- 経済成長
- インフレ
- 通貨安定
- 金融市場の拡大
が続くことを前提にしています。
もし今後、
- 高インフレ
- 金利上昇
- 米国成長鈍化
- ドル安
- 地政学リスク
が長期化すれば、これまでのような「右肩上がり」が続く保証はありません。
特に若い投資家ほど、
「下落相場を経験していない」
ケースが多くなっています。
つまり現在の新NISA世代は、
「円安+米株高」
という極めて恵まれた相場環境しか知らない可能性があります。
「非課税」と「低リスク」は違う
新NISAは非常に優れた制度です。
ただし、非課税であることと、安全であることは別問題です。
制度自体が優れていても、
- 何に投資するか
- どの通貨に依存するか
- どこに集中しているか
によってリスクは大きく変わります。
特に今後は、
「どの資産を持つか」
だけでなく、
「どの通貨で資産を持つか」
が重要になります。
これは日本人投資家にとって、これまで以上に重要な論点になるでしょう。
「ドル依存時代」の資産運用をどう考えるか
現在の日本では、
- 賃金は円
- 年金も円
- 生活費も円
です。
一方、資産運用だけが急速にドル化しています。
これは、
「日本人の将来資産が為替に大きく左右される」
ことを意味します。
もちろん、ドル資産を持つこと自体は合理的です。
しかし重要なのは、
「どこまでドルに依存するか」
です。
円高局面では、多くの投資家が初めて
「為替リスクは本当に怖い」
と実感する可能性があります。
新NISA時代の本当の課題は、
「投資を始めること」
だけではありません。
むしろ、
「為替変動を含めて資産配分を考えられるか」
が、今後の大きなテーマになるのかもしれません。
参考
・日本経済新聞 各種為替・資産運用関連記事
・金融庁 新NISA制度資料
・FRB公表資料
・日本銀行 金融政策関連資料
・MSCI ACWI指数構成資料