非上場株式の評価方法見直しは、すべての企業に同じ影響を与えるわけではありません。むしろ重要なのは、「どの会社の株価が上がり、どの会社が下がるのか」という点です。
評価方法が変わるということは、「評価される軸が変わる」ということを意味します。本稿では、想定される制度変更を前提に、評価が上がる会社と下がる会社の特徴をケーススタディ形式で整理します。
評価変動を左右する基本構造
まず前提として、評価見直しの方向性を整理します。
・類似業種比準方式の縮小または廃止
・純資産価額ベースの重視
・収益要素より資産要素の影響拡大
この変化は、「利益よりも資産が評価される世界」へのシフトを意味します。
つまり、
・資産を多く持つ会社は評価が上がりやすい
・収益中心の会社は評価が相対的に下がる可能性
という構造になります。
ケース① 評価が大きく上がる典型パターン(資産蓄積型企業)
最も影響を受けやすいのが、資産を多く保有する企業です。
特徴は以下の通りです。
・不動産や有価証券を多く保有
・内部留保が厚い
・含み益が大きい
・配当・利益は相対的に低い
現行制度では、類似業種比準方式により収益力が低ければ株価が抑えられる傾向があります。しかし、純資産ベースに近づくと、これまで表面化していなかった資産価値が一気に評価に反映されます。
結果として、
・株価の大幅上昇
・相続税負担の急増
が生じる可能性が高い典型例です。
ケース② 評価が上がる可能性が高い企業(安定資産保有型)
資産蓄積型ほどではないものの、評価上昇が見込まれる企業です。
特徴は以下の通りです。
・事業用資産を多く保有
・安定収益はあるが高収益ではない
・現預金比率が高い
・借入が少ない
これらの企業は、純資産ベースでの評価に移行すると、収益力以上に資産の厚みが評価される傾向があります。
特に注意すべきは、「現預金の多さ」です。
現預金はそのまま評価に反映されるため、株価上昇の直接要因となります。
ケース③ 評価が下がる可能性がある企業(収益力依存型)
一方で、評価が下がる可能性がある企業も存在します。
特徴は以下の通りです。
・利益水準が高い
・成長性が高い
・資産は相対的に少ない
・投資を継続している
現行の類似業種比準方式では、利益や配当が株価に強く反映されます。しかし、資産ベースにシフトした場合、
・高収益でも資産が少なければ評価が伸びない
という状況が生じます。
いわゆる「稼ぐ力」はあるが「蓄積」が少ない企業にとっては、評価が相対的に低下する可能性があります。
ケース④ 評価が安定する企業(バランス型)
評価変動が比較的小さいと考えられるのが、バランス型の企業です。
特徴は以下の通りです。
・利益・資産ともに一定水準
・過度な内部留保がない
・事業と資産のバランスが取れている
・借入と自己資本のバランスが適切
これらの企業は、評価方式が変わっても大きな乖離が生じにくく、評価額の変動は比較的限定的と考えられます。
ケース⑤ 評価が読みにくい企業(特殊要因型)
最も注意が必要なのは、評価の方向性が読みづらい企業です。
特徴は以下の通りです。
・不動産の含み益が大きいが収益も高い
・グループ会社との取引が多い
・資産と収益の乖離が大きい
・一時的な利益変動がある
これらの企業は、評価方法の設計次第で結果が大きく変わる可能性があります。
つまり、
・制度設計の影響を最も受けやすい
という意味で、リスクの高いポジションにあります。
評価変動を見極める実務上のポイント
個別企業の影響を判断するためには、以下の視点が重要です。
・純資産価額との差を把握する
・含み益の規模を確認する
・現預金・不動産の割合を見る
・利益と資産のバランスを分析する
この分析により、
・自社がどのケースに該当するか
・評価上昇リスクの大きさ
を把握することが可能になります。
結論
非上場株式の評価見直しは、「どの会社にも同じ影響が出る改正」ではありません。
むしろ重要なのは、
・資産を持つ会社は上がる
・収益中心の会社は相対的に下がる可能性がある
という構造的な変化です。
実務上は、
・自社のポジションを正確に把握する
・複数シナリオで評価変動を検証する
・影響が大きい場合は早期対応を検討する
ことが不可欠です。
評価方法が変わるということは、「企業の見られ方が変わる」ということです。この変化を正しく理解し、自社の状況に応じた戦略を取ることが、今後の意思決定の鍵となります。
参考
・税のしるべ 2026年4月20日
インタビュー 私が見た 税を巡る 点と線 北本高男氏に非上場株式の相続税評価見直しの行方を聞く