インボイス制度の導入以降、免税事業者等からの仕入れに関する経過措置は、実務上の重要な論点となっています。とりわけ、控除可能割合の段階的な引下げは、日常の経理処理に直接影響を与えるため、正確な理解が求められます。
本稿では、控除可能割合が80%から70%へ移行する仕組みと、その適用判断の考え方について整理します。
経過措置の段階的引下げの概要
インボイス制度においては、免税事業者等からの仕入れについても、一定割合で仕入税額控除を認める経過措置が設けられています。
この控除可能割合は、制度開始当初は80%とされていましたが、以下のように段階的に引き下げられる予定です。
- 令和8年9月30日まで:80%
- 令和8年10月1日から令和10年9月30日まで:70%
この変更は単なる割合の引下げにとどまらず、実務上の判断基準にも影響を与える点が重要です。
課税期間ではなく「取引単位」で判定する点に注意
見落としやすいポイントとして、この経過措置は課税期間単位ではなく、個々の取引ごとに適用されるという特徴があります。
つまり、同一の課税期間内であっても、
- 令和8年9月30日までの取引:80%
- 令和8年10月1日以後の取引:70%
と、同一期間内で異なる割合が混在することになります。
この点を誤ると、仕入税額控除の計算に誤りが生じるため、実務上は特に注意が必要です。
適用割合の判断基準は「課税仕入れを行った日」
では、どの取引にどの割合を適用するかは、どのように判断するのでしょうか。
結論から言えば、その判断基準は「課税仕入れを行った日」です。
この考え方は、消費税法における資産の譲渡等の時期の取扱いに準じるものとされており、所得税や法人税における収益・費用の計上時期と基本的に同じ枠組みで整理されます。
棚卸資産の場合の判断(引渡し基準)
商品などの棚卸資産については、原則として「引渡しの日」が課税仕入れを行った日となります。
したがって、
- 令和8年10月1日以後に引渡しがあった場合
→ 70%を適用
となります。
契約日や発注日ではなく、あくまで引渡し日で判定する点が実務上のポイントです。
役務提供の場合の判断(完了基準)
一方、サービス(役務提供)の場合は、原則として「役務の提供が完了した日」が基準となります。
例えば、
- 令和8年9月21日から役務提供開始
- 令和8年10月20日に提供完了
というケースでは、
→ 課税仕入れ日は令和8年10月20日
→ 70%を適用
となります。
サービスの提供期間がまたがる場合でも、完了日で判定する点が重要です。
実務上のリスクと対応の方向性
この制度変更において実務上問題となるのは、「日付の管理」と「取引の区分」です。
特に以下の点に注意が必要です。
- 月末締め処理に依存している場合の誤判定
- 役務提供の完了日を正確に把握していないケース
- システムが取引日ベースで管理されていない場合
対応としては、
- 引渡日・完了日の明確な記録
- 経理システムの判定ロジックの見直し
- 社内ルールの再整理
といった準備が不可欠になります。
結論
インボイス制度における経過措置の見直しは、単なる控除割合の変更にとどまらず、「いつの取引か」という時間軸の管理をより厳密に求めるものとなっています。
課税期間単位ではなく取引単位で判定する仕組みである以上、日付の認識がそのまま税額に直結します。
制度の理解だけでなく、実務の運用体制まで含めて見直すことが、今後の対応において重要となるといえます。
参考
税のしるべ 2026年4月6日号
免税事業者等からの仕入れに係る経過措置①「控除可能割合が80%から70%に移行、適用割合は課税仕入れを行った日で判断」